「素材産業は、我々の身の回りにあるさまざまな製品の素材を供給し社会経済を下支えするなど重要であり、日本の競争力の源泉」と力強くお話されるのは吉村一元氏だ。終始笑顔だがその先を見つめる眼光は厳しい。それは素材産業が大量の熱や圧力、電力を必要としエネルギー消費が多く、日本が宣言した「2050 カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」を実現していくためには素材産業の競争力強化と同時にカーボンニュートラルの実現に向けたイノベーションが必要だからだ。日本の素材産業政策のキーマンに話を聞いた。(聞き手:落合平八郎)

官民一体となってビジョンの共有が必要

今年4月に「新・素材産業ビジョン」を打ち出した。これまではひとつひとつの産業を育て上げる支援をしてきたが、これからは全体を俯瞰しながら横断的に政策を打ち出していかなければならない。そこには付加価値の高いものは国内をベースに事業をという主旨を記載している。産業を鎖国するのかといった声も出かねないが今回は異論が出なかった。海外の国々は日本企業を勧誘して素材の国産化を狙っており、日本の企業もこの数十年でいろいろと経験してきた。国内でしっかり研究開発して長く事業を続けてリターンを大きくすることが大切だ。もちろん、汎用の素材では積極的に海外へ進出したほうがいいものもあるだろう。経営者の見極めが重要だ。

2050年カーボンニュートラルの実現に向けた大変革期

足元の状況では中国の伸長やグローバル競争の激化、サプライチェーンにおけるリスクの高まり、資源エネルギー価格の高騰といった大きな変化に直面している。一方で、2050年カーボンニュートラルという温暖化目標を受けて、事業構造の変革や生産プロセスの革新など推進していく必要がある。たとえば素材を加工して自動車や家電に搭載するが、そのために莫大なエネルギーを使う。必然的にCO2を相当排出するが、一方でコストの最小化も同時に実現してきた。まさに総合芸術のようだ。しかし、今度は新しい価値観のなかでCO2の削減をしていかなければならない。このマグニチュードは相当大きい。これまで作り込んできたものをもう一度ゼロから作り直す方に近い。カーボンニュートラルの実現と同時にグローバル市場で勝ち続ける素材産業への変革に向けて、官民が一体となってビジョンを共有し実行していきたい。

高機能素材Week基調講演 ※こちらの講演は終了しました

2022年12月07日(水)|10:00 ~10:45|MWK-1

素材産業におけるイノベーションの役割と期待 ~カーボンニュートラルへの対応~

講師:経済産業省 製造産業局 局長 山下 隆一

次回は2023年10月4日(月)~6日(水)幕張メッセで開催します

本展へのご入場には招待券が必要です!お申込みはこちらから