身の回りにある日用品や家電製品、自動車などに使われているプラスチック。戦後いち早くこのプラスチックに着目し、その製造装置を創出してきたのがJSW日本製鋼所だ。環境に配慮したモノ作りが求められるなか、同社は「Material Revolution(材料革命)」を掲げる。「プラスチックのイノベーションで環境対応に貢献していきたい」。この強い意気込みを語る成形機事業部 市場開発部長の森田昌則氏に聞いた。(聞き手:落合平八郎)

プラスチックの射出成形について

身の回りにある形になっているプラスチック製品の殆どが射出成形機で作られています。粒状のプラスチックを機械のなかで溶かして型の中にいれて固める、という流れで作ります。例えば、たい焼きは両方の方に皮となる生地を流しあんこを乗せて空中でくっつけて焼きますが、射出成形機の場合は閉じられた空間内にある型へ皮やあんこを入れるイメージです。身の周りにコップなどの日用品や家電製品などにたくさんのプラスチックが使われていますが、自動車の内装品で金属製に見えるものも、実はプラスチックでできている場合が多いのです。当事業部ではこの射出成形機を販売しています。小さなものであれば全長が3m程度ですが大きいものになれば20mほどになり、25mプールにすっぽり入る大きさになります。このような大きな装置は自動車のバンパーや建材などを作っています。

写真:JSWの射出成形機

環境負荷対応が求められるプラスチック

しかし昨今の世界レベルでの環境対応のなかで、プラスチックにおいても材料開発が進み、高機能プラスチックのほかに生分解性プラスチックなどが採用され始めています。当社においても自動車メーカー様はじめ様々な分野のお取引先様と一緒になってその取り組みを推進しています。また装置の省エネ性や生産性の向上、射出成形機を核とする生産システムのDX化、オペレータの作業環境の改善など、射出成形全般にわたってカーボンニュートラルに貢献する全社的な取り組み「JSW Goes Green」を推進しています。当社の射出成形機は汎用機から特殊専用機までラインアップする射出成形機のデパートであり、「マス・カスタム戦略」によって多様化するユーザーニーズに対応しています。

「発泡成形技術」で環境負荷対応をリード

環境負荷対応で取り組んでいる技術のひとつが発泡成形技術です。まず「成形品の軽量化」が可能です。発泡成形したプラスチック成形品の内部は微細な発泡状になっているのが特徴です。成形条件により発泡率を上げることで軽量化率を拡大できます。製品によっては30%程度の軽量化率を実現しています。これにより使用する材料を減らすことが可能です。既に複数の自動車部品に採用され、軽量化による燃費向上に貢献してきました。
もう一つの発泡成形技術の特長に「成形品の寸法精度向上」があります。プラスチック成形特有の製品のソリやヒケといった課題を改善するもので、主にOA機器や家電製品の機構部品に採用されています。
また、発泡成形技術の課題である外観品質の悪化に対しては、これを補う複合技術により意匠性を向上させると同時に、発泡成形技術の特長である「軽量化」「寸法精度向上」により従来のプラスチック成形品にない付加価値を創出できます。
更に、生分解性プラスチックを使用した発泡成形品は、従来と比べて分解速度が速くなることから、よりサステナブルな特性を生かす企画製品も生まれてきています。このように、発泡成形技術は環境負荷低減技術として様々な分野から注目されています。プラスチックも日々進化しており、環境負荷対応含めてイノベーションを起こしていきたいと考えています。

<写真>
左側:従来品
中央:発泡成形品(JSWの発泡成形技術SOFIT® による)
右側:複合成形技術を併用した発泡成形品(JSWの発泡成形技術SOFIT® による)
※成形品の軽量化、寸法精度向上、無塗装化も可能になります

展示ブースでデモ実演を実施

今回の展示ブースには、小型(全長約5m)の射出成形機による成形実演をします。ペレットを作るための装置も設置することでプラスチック成形の川上から川下まで対応する総合プラスチック加工機械メーカーとして訴求します。当社の射出成形機は一部の特殊機を除き、電動サーボモータ駆動です。省エネ、生産性、低騒音、低振動、メンテナンス性、作業環境改善といった面でサステナブルな製品・技術を紹介致します。
こうした実演を披露することで環境対応するプラスチックの射出成型に関心をもっていただきたいと思います。

【インタビュー】株式会社 日本製鋼所 森田昌則 氏

プラスチック ジャパン 専門セミナー ※こちらの講演は終了しました

2022年12月09日(金)|10:00 ~10:45|PLA-5

ESGに貢献するJSWのプラスチック成形加工技術

講師:(株)日本製鋼所 広島製作所 射出機械部
    成形技術グループ グループマネージャー 安江 昭