一般的にIT革命とは1990年代半ばにインターネットが普及したことで世界中の情報を簡単に入手できるようになり、それによって社会経済に大きなインパクトを与えたことを指す。国内最古参の半導体記者である泉谷渉氏は、「メタバースは第4のIT産業革命だ」と熱く語る。泉谷氏がいうIT産業革命とは何か、話を聞いた。(聞き手:落合平八郎)

第4次IT産業革命「メタバース」が到来

長年にわたり半導体業界をみてきた私の持論だが、IT産業革命はこれまで3つのフェーズがあった。第一次はウィリアム・ショックレーによるトランジスタの発明。第二次はインテルの4004マイクロプロセッサの開発。世界初の1チップマイクロプロセッサで、これによってパソコンが生まれた。第三次はいわゆるIoTだ。すべてのモノがインターネットと繋がり、家電などさまざまなモノと繋がることで生活が便利になった。そのIoTに欠かせないないのがスマートフォンだ。そして第4次IT革命は「メタバース」だ。

メタバースは空間を超える

メタバースは、インターネットの世界のなかにおける3次元の仮想空間だ。商業施設を訪問したり様々な人とコミュニケーションする単なるバーチャル空間ではない。この技術を使うことでたとえば数百キロ離れたところの患者さんを医師が診断したり、海外にある工場の装置をメンテナンスしたり、図面を広げて故障個所を診断するといった空間を超えることができる。そして世界全体でそれが進んでいくことによって画期的なことが起きるだろう。新しい産業が生まれるかもしれない。ここで重要になってくるのがディスプレイだ。端末を変えるからだ。新たな産業革命の一角を担っている。

スマートグラスとスマートウィッチの世界

ある業界関係者は、某国の30%の人はここ3年から5年の間にスマートフォンを捨ててスマートグラスに置き換えると予測している。メタバースの出現によってその人たちはスマートフォンを使わなくなるそうだ。さらに重要なのがデータをクラウドに挙げて集中制御することが困難になってくることだ。IoTの世界ではセンサーが感知してそれを処理してクラウドに送信する間のデータ遅延が問題だ。そこで必要になるのがエッジコンピューティングという考え方だ。一番身近にあるエッジサーバと連携してクラウドによる集中制御と分散制御をバランスよく処理することで速度を高めてデータ遅延を起こさないようにする。メタバースの世界を作りあげるには必要だ。ただ、世界に置かれるエッジサーバの数を考えると天文学的な数字になる。途方もないマーケットが出現するかもしれない。スマートグラス、スマートウォッチが引き起こす新たなITにおける産業革命、 これがメタバースだ。まだ始まったばかりだから日本のどの企業にもチャンスがある。興味がある人はぜひ専門書などを読んで情報感度を高めてほしい。

【インタビュー】株式会社 産業タイムズ社 泉谷渉 氏

本展では、泉谷氏が登壇するセミナーを開催しました

2022年12月09日(金)|13:30 ~14:15|FTJ-S2

マイクロLEDと大型有機ELの投資動向に注目せよ!
~DX革命とメタバースの時代がFPDに与えるインパクト~

(株)産業タイムズ社 代表取締役 会長 泉谷 渉

※本講演は終了しました