▼この記事をシェアする
ポリ乳酸を“使える素材”に。都市ガス会社の挑戦
柔軟・耐熱・再資源化で広がる可能性
大阪ガス株式会社 先端技術研究所 主任研究員 杉本 雅行 氏
バイオマス由来で環境にやさしいポリ乳酸(PLA)。しかし実用化には課題が多く、広く普及するには至っていない。脆く、熱に弱く、使える場面が限られていたためだ。そんなPLAの可能性を引き出し、さらに使用後には都市ガスへと再資源化するという構想を掲げているのが大阪ガスである。素材改質と循環型エネルギーシステムの融合。エネルギー企業としての技術と発想が、「ポリ乳酸の次の姿」をかたちにしようとしている。(文:落合平八郎広報事務所)
【来場希望の方】
5月大阪展への入場には 事前に来場登録が必要です!
※カンファレンスの聴講には別途お申込みが必要です。こちらからお申込みください>
※こちらの来場登録で5/14~16にインテックス大阪内で開催するすべての展示会に入場が可能です。
【出展検討の方】
簡単1分で資料請求できます!
出展検討用パンフレット、
出展料金、会場レイアウトなど
不織布にも使える柔らかさへ
大阪ガスがまず取り組んだのは、ポリ乳酸の物性改善である。フィルムや袋、不織布といった柔軟性が求められる用途に向けて、素材の改質を進めてきた。従来のPLAはパリパリした手触りが特徴だったが、新たに開発された柔軟系グレードは、ポリエチレンのようなしなやかさを備える。今回の展示会で初披露されるのが「不織布向けの新グレード」。マスクやおむつといった肌に直接触れる製品への活用を想定し、これまでにない「さわり心地の良さ」を実現した。今後は供給体制を整えながら、実用化に向けた評価が始まる。
耐熱性も強化「PLAでカレーが食べられる」
柔軟性に加え、PLAのもう一つの弱点とされてきたのが耐熱性だ。大阪ガスでは、100℃以上の環境でも形状を保つ高耐熱グレードの開発にも成功。フォークやスプーンといったカトラリー類、食品容器などにも対応できる素材として改良されている。
「普通のPLAのカトラリーでは、カレーライスが食べられない」。そうした現場の声に応えるべく開発されたこの素材は、すでに複数の企業で評価が進行中。今後の用途展開が期待される。
PLAを都市ガスに再利用。異色の“出口戦略”
大阪ガスの最大の特徴は、PLAを“エネルギー資源”として再利用する発想にある。使用済みのPLAを前処理し、下水処理場の消化槽に投入してバイオガス(メタン)化。これを都市ガスの原料として再利用することを目指した取り組みだ。
「コンポストやマテリアルリサイクルではなく、エネルギーとしてリサイクルするという出口を持たせる」。PLAからのバイオガス化については、国土交通省「令和4,5年度 下水道応用研究」に採択され、大阪市の下水処理場にてフィールド試験を実施した。現在は実用化に向けて検討を進めている。
脱炭素を背景に、再び脚光を浴びるPLA
ポリ乳酸そのものの研究開発は、実は10年以上前から続けられてきた。しかし2020年、大阪ガスが脱炭素経営を本格的に掲げたことを契機に、社内でもその価値が見直されるようになった。
「バイオマスであることに加えて、都市ガスとしてリサイクルできる素材。エネルギー企業として取り組む意味があると感じています」と杉本さんは語る。まだ量産やコストの課題はあるものの、すでにいくつかの企業ではサンプル供給が進み、用途開発の検討が始まっている。今後は環境意識の高い市場を中心に、実用化の広がりが期待される。
展示会:サステナブルマテリアル展 [大阪] - SUSMA –
ホームページ:https://www.daigasgroup.com