6G通信を支える見えない力
材料開発が切り拓く未来

国立研究開発法人 産業技術総合研究所 化学プロセス研究部門 機能材料プロセス研究グループ研究グループ長 阿多 誠介氏

 

2030年の実用化が見込まれる次世代移動通信「6G」。その通信性能を最大限に引き出すには、従来以上に高度な電子材料が必要とされる。中でも注目されているのが通信回路のベースとなる「基板材料」だ。低誘電率かつ低損失という特性が求められるこの分野において、産総研の阿多誠介さんが率いる研究グループは、独自の材料開発に取り組んでいる。本記事では、6G時代を見据えた基板材料開発の背景と、阿多さんの挑戦を紹介する。

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日本が世界をリードする「基板材料」


5Gでは、日本の基地局やスマホなどの通信機器完成品のシェアは数%程度に留まっている。一方、材料分野では約50%の世界シェアを誇る。この強みを6Gでも維持・拡大し、下流側のデバイス開発にも影響力を持つことが、阿多さんたちのモチベーションとなっている。「材料という土台から日本の存在感を高めたい。それが私たちの大きなモチベーションです」と阿多さんは語る。材料産業の力を活かして、日本発の技術革新を支えていく戦略だ。

爆発的な通信需要とエネルギー課題への挑戦


通信トラフィックは年率二桁ペースで増加しており、2030年には通信による世界の消費電力が、日本国内の年間電力使用量に匹敵すると試算されている。「信号を通すときに基板はエネルギーを吸収してしまう。だから、基板の損失を下げることは、未来のエネルギー問題を解決する一手でもある」と指摘する。基板による電力損失は無視できない問題となっており、低誘電率・低誘電正接を兼ね備えた基板材料の開発は、6G時代のエネルギー効率改善に直結する重要課題となっている。

限界を超えるための複合化とプロセス革新


これまで5G対応材料として主力だったフッ素樹脂や液晶ポリマーは、性能面で限界に達している。「フッ素も液晶も、もう材料単体では限界なんです。だから、発泡や無機フィラーとの複合で新たな領域を切り拓こうとしています」と阿多さん。無機フィラー複合や発泡構造による新材料開発に取り組み、さらにプロセスインフォマティクス(AIを活用したプロセス最適化)を導入。試行錯誤を最小限に抑えつつ、より早く最適な製造条件を導き出す取り組みも進めている。6Gに求められる基板特性は、まさに未知への挑戦であり、日本がリードできる新たなフロンティアである。

社会実装を見据えた未来への布石


産総研の役割は基礎研究に留まらない。阿多さんは、材料開発を社会実装へとつなぐため、民間企業との連携を強く意識している。「材料開発には時間がかかる。だからこそ、先手を打って技術のベースを作り、デバイスメーカーが本格的に6Gに向けて取り組めるように備えなければならない」と語る。6Gの通信網を支える“見えないインフラ”を築くために、地道な努力を続ける阿多さんたちの挑戦は、日本の未来に向けた確かな布石となる。

【カンファレンス情報】

6G通信革命を支える基盤材料の最前線を、阿多誠介氏が語ります!

【講演日】2025年5月16日(金)15:45~16:30

【講演タイトル】次世代移動通信「6G」に向けた低誘電率・低損失な基板材料の開発

 

未来をつくる技術に、ぜひご注目ください。
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