紡績技術が拓くCFRTPの可能性 東洋紡せんいの挑戦

東洋紡せんい株式会社 技術開発部 津田 幸一氏

 

長年培ってきた紡績技術を応用し、東洋紡せんいは複合材料分野へ新たな一歩を踏み出した。炭素繊維やガラス繊維と熱可塑性樹脂(繊維)を組み合わせた独自のハイブリッドヤーンは、優れた含浸性、柔軟性、賦形性に加え、リサイクル性も兼ね備えている。

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繊維技術を産業用途へ応用


衣料繊維で培われた、細い繊維にラッピングを施す技術を応用し、炭素繊維などの高強度繊維への展開を検討。独自の三層構造技術を活用し、熱可塑性樹脂(繊維)と強化繊維を組み合わせた新たな複合糸の開発に挑んだ。

産業用途へ転用するにあたり、異なる太さや硬さの素材への対応が求められる。衣料用繊維の50倍以上の太さを持つ炭素繊維を採用するも、炭素繊維は「撚り」をかけると折れやすいという特性を持つ。その課題を克服するために、外側を熱可塑性繊維で巻くラッピング構造を採用し、安定した糸形状と賦形性を実現した。

独自構造が生む成形性とリサイクル性


この技術により誕生したのが、炭素繊維と熱可塑性繊維を三層構造で組み合わせた「CfC yarn®」。加熱・プレス時に、熱可塑性樹脂(繊維)が中間層の炭素繊維に効率的に含浸する構造となっており、CFRTP(熱可塑性炭素繊維強化プラスチック)の一体成形に適している。

-2024年5月:ナイロン繊維との複合糸を開発。

-2024年10月:ポリカーボネート繊維を用いた第二弾を発表。

-2025年5月:PPS繊維を用いた第三弾を新たに発表。

特に粘度の高いポリカーボネート樹脂でも優れた含浸性を実現し、成形性を向上。加熱再成形やマテリアルリサイクルが可能となり、サーキュラーエコノミー対応素材として注目されている。

ガラス繊維複合糸を追加し用途拡大  


さらに、ガラス繊維とポリプロピレン繊維を組み合わせた「GfC yarn®」を展開。2024年10月に参考出品され、2025年に本格市場展開を予定している。

炭素繊維より軽量性では劣るものの、コストパフォーマンスに優れ、土木建築分野など大量使用が求められる場面での活用が期待される。

また、立体成形に対応できるホールガーメント横編機による加工や、UDシート、織物、ニットなどの中間基材展開も進行中。航空宇宙、自動車、ドローン、義足など、多様な応用分野への広がりを見せている。

紡績技術で新たな市場へ


東洋紡せんいの強みは、糸を「紡ぐ」技術にある。単なる素材提供ではなく、構造設計から中間基材化、成形加工プロセスまでを包括した設計思想が、次世代CFRTPの可能性を広げる。開発メンバーは、「誰もやっていないからこそ、挑戦する価値がある」と振り返る。  衣料繊維の現場で培われた技術が、今、新たな産業分野でその力を発揮しようとしている。

 

展示会:サステナブルマテリアル展 [大阪] - SUSMA -
東洋紡せんい 公式サイト:https://www.toyobo.co.jp/seihin/seni/