GX推進法はどのような法律?
2026年に施行される改正法の内容も紹介
気候変動を抑制するため、世界的に進められているカーボンニュートラル。
日本政府がカーボンニュートラルの取り組みを示す際には、GXという言葉が使われます。詳細はこの後、取り上げますが、Green Transformationの略で化石燃料の利用から二酸化炭素(CO2)排出量の少ない、出さないエネルギーへの転換を図るものです。そして、GXを進めていくためつくられた法律が、GX推進法です。
この記事ではGX推進法の概要や2026年に施行されるその改正法について、ポイントを取り上げます。国内のあらゆる企業やビジネスパーソンに関係する法律ですので、ぜひご覧ください。
GX推進法のポイント3つ
最初に、GX推進法のポイントを3つ、紹介します。
・GX推進法は、脱炭素と経済成長の両立を図るGXを進めるための法律
・2026年に改正法が施行され、CO2排出量が年間10万トン以上の企業に排出量取引制度(GX-ETS)への参加義務付けが盛り込まれた
・中小企業もCO2排出量の削減で税額控除される点で関係がある
GX推進法とは?そもそもGXとは?
ここから、詳細を見ていきます。
まず概要としてGX推進法がどのようなものであるかを取り上げます。また、法律以前に「GX」という言葉の意味が分からないという方もいるかもしれません。そこで、GXの意味も取り上げます。
GX推進法の概要
GX推進法とは、脱炭素と経済成長を両立すべくつくられた法律です。正式名称は、「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律」です。2023年5月に成立、2024年2月に施行されました。
どのように脱炭素と経済成長の両方を実現していくかというと、排出量取引制度の導入やGX移行債の発行などといった施策があります。これらは、GX推進法に盛り込まれています。
2026年4月には、改正法が施行されます。
GXの意味
続いて、GXの意味を紹介します。
GXは、Green Transformation(グリーントランスフォーメーション)を略した言葉です。CO2排出量を実質ゼロとするカーボンニュートラルを実現するため、クリーンエネルギーを活用する経済に転換していくことを意味します。
GXの詳細は、以下の記事をご覧ください。
GX推進法を基に行われている取り組み
カーボンニュートラルの実現、そのためのクリーンエネルギーの活用と、GXを進めていくためには絶え間ない取り組みの実行と改善が求められます。具体的なGXに関する取り組みを、見ていきましょう。
GX推進戦略
GX推進戦略は、日本政府によるGX型の経済構造へ移行していくための戦略を記した文書です。正式名称を「脱炭素成長型経済構造移行推進戦略」といいます。
2023年に閣議決定された最初のGX推進戦略には、GX推進法の成立などが盛り込まれていました。
また、2025年には改訂版が閣議決定されています。新たな戦略は「GX2040ビジョン」と名付けられ、不確実性が高い現代社会でもGX関連の投資が継続されるための施策が盛り込まれています。たとえば、GX型経済構造への転換を促す取り組みを記した「GX産業構造」や、GX産業をどの地域に配置するかを示す「GX産業立地」といった要素が、GX2040ビジョンに明記されました。
GX経済移行債と成長志向型カーボンプライシング
GX経済移行債と成長志向型カーボンプライシングは、先ほども少し触れました。詳細を見ていきましょう。
GXを実現していくためには、技術革新、すなわちイノベーションが必要となります。現在の技術だけでは、カーボンニュートラルと経済成長の両立は困難だからです。
そこで、GX経済移行債という国債を発行し、投資の原資とします。GX経済移行債の償還は、成長志向型カーボンプライシングを充当します。成長志向型カーボンプライシングは、先ほども取り上げた排出量取引において政府が排出枠の一部をオークションで販売し、また化石燃料賦課金という企業がCO2排出に応じて政府に支払う賦課金が含まれるものです。
GX推進機構
GXは政府の取り組みだけで実現できるものではありません。技術を持つ産業界の力が不可欠ですし、金融業界からの資金調達も必要になります。
こうした金融支援や、前述の成長志向型カーボンプライシングの運営などを行うため、2024年、GX推進機構が発足しました。
進捗評価と見直し
2023年に成立したGX推進法では、「この法律の施行後二年以内に、必要な法制上の措置を講ずるものとする」と明記されました。法律施行から2年以内に、改正や別の法律を設けるなどを行うということです。
そして、実際に2025年、改正法が成立し、2026年に施行となるのはここまで触れた通りです。
また、改正法にも先ほどと同じく2年以内の改正などが必要だとする文言があります。
つまり、GX推進法は、継続的な進捗評価と見直しを行っていく法律であるのです。
2026年4月1日に施行されるGX推進法改正法のポイント
前述のように、GX推進法は2026年4月に改正法が施行されます。より詳細な日付をいうと、2026年4月1日です。
この改正法でポイントとなる部分を見ていきましょう。
GX推進法の改正と聞くと、「ウチの会社に関係あるのかな?」と思う方もいるかもしれません。今回のGX推進法改正に関係するのは、多くのCO2を排出している企業とともに、GXに関連するビジネスをしている、あるいは、これからGXを進めようとしている企業です。
ぜひ、ご覧ください。
排出量取引制度(GX-ETS)
排出量取引制度(GX-ETS)は、企業のCO2排出を抑制し、規定量をオーバーする場合は排出量取引によって他の企業から排出権を購入するものです。
CO2排出量が年間10万トン以上の企業は、GX-ETSへの参加が義務付けられます。10万トン以上というのは、特定の年や常にこの数値になっているというわけではなく、直近3年間の排出量の平均値です。
該当する企業には、申請の上でCO2の排出枠が割り当てられます。排出枠をオーバーする場合は、GX-ETSを通じて枠に余裕のある企業から排出権を購入します。
参加義務付けに該当する企業は決まっているものの、どれくらいの量を減らす必要があるかは未定です。これから、国が排出量の総量を決め、その後に企業ごとの排出枠を決めていく形となります。
また、年間10万トン以上のCO2排出がある企業は、国内に300〜400社、存在します。
化石燃料賦課金
化石燃料賦課金は、石油などの化石燃料を採取したり輸入したりする事業者(企業)からCO2排出量に応じた賦課金を徴収するものです。
先ほどのGX-ETSと化石燃料賦課金の2つが、成長志向型カーボンプライシングの柱となります。これらでCO2排出を減らすことのインセンティブを与え、クリーンエネルギーへの転換を促していくものです。
化石燃料賦課金の話に戻ると、燃料の種類や用途によって賦課金の減免が行われます。2028年度から制度がスタートします。
税額控除とその税収減のGX経済移行債による補填
カーボンニュートラルに貢献する、炭素生産性を向上するための投資をした企業には、税額控除が行われます。大企業だけでなく、中小企業も対象です。どれくらいの控除が行われるか、以下の表にまとめました。
企業区分 |
炭素生産性の向上率 |
控除率など |
中小企業など |
17パーセント |
税額控除14パーセント または 特別償却50パーセント |
10パーセント |
税額控除10パーセント または 特別償却50パーセント |
|
中小企業以外 |
20パーセント |
税額控除10パーセント または 特別償却50パーセント |
15パーセント |
税額控除5パーセント または 特別償却50パーセント |
ご覧のように、中小企業は税額控除の率が高く設定されており、炭素生産性の向上に前向きとなれる制度といえるでしょう。
この控除により生じる税収減は、GX経済移行債で補います。
企業がすべきGX・GX推進法への対応は?知る・測る・減らす
カーボンニュートラルは、世界中の行政や産業界、アカデミズムが解決に向けた取り組みをしつつ、まだ決定的な策は見つかっていない解決が非常に難しい課題です。
だからといってカーボンニュートラルを諦めるのではなく、できることからCO2排出を減らしていく必要があります。そのための手段の一つがGXであり、ここまで取り上げた税制控除などから取り組むメリットも感じられたのではないでしょうか。
そこで、企業、とりわけ中小企業の視点からGXやGX推進法に対応するため、できることを紹介します。
取り上げるのは、「知る」「測る」「減らす」というプロセスです。
最初の知る、はGXに取り組むメリットを把握することです。税額控除の他、自治体が補助金を支給していたり企業イメージが向上したりといった恩恵を受けられる場合があります。
測る、は自社のCO2排出量を測り把握することです。日本商工会議所が「CO2ファクトシート」というExcelファイルを頒布しており、商工会議所の会員企業であれば利用できます。これを用いれば、CO2排出量を測れます。CO2ファクトシートについて紹介する日本商工会議所のウェブページは、こちらです。
最後の減らす、は実際にCO2排出を減らす取り組みをすることです。最初は、とりかかりやすい削減策から始めるのをおすすめします。とりかかりやすい策として、LED照明への切り替えが代表的なものとして挙げられます。
そして、次にコストがかかる削減策を必要に応じて進めるのがよいでしょう。消費電力の低い機器に切り替える、太陽光発電を導入するなどが挙げられます。
GX関連のソリューションを提供する企業の事例
GX関連のソリューション事例を見てみましょう。
株式会社LCAエキスパートセンター|クラウドサービス「MiLCA(ミルカ)」
クラウドサービス「MiLCA(ミルカ)」は、製品やサービスのライフサイクル全体にわたる環境負荷を定量的に算定し、“見える化”できるクラウド型LCAソフトウェアです。特別なソフトを入れなくても、インターネット環境さえあればすぐに使える手軽さが特長で、複数拠点や社内外の関係者とデータを共有しながら効率的に作業を進められます。日本発のLCAデータベース「IDEA(イデア)」や国際的に利用される「ecoinvent(エコインベント)」など信頼性の高いデータベースを標準搭載し、化学、鉄鋼、非鉄金属、建材といった素材メーカーをはじめ、自動車、電機など多様な業種に対応可能です。また、国際規格(ISO 14040/44、ISO 14025)や国内制度(SuMPO EPD等)に準拠した算定・開示をサポートし、EPDやCFPの取得を強力に支援します。さらに、製品・サービスの環境情報をサプライチェーン全体で共有できるため、取引先や投資家などのステークホルダーとの対話やGX推進にも直結します。脱炭素経営を実践する企業にとって、MiLCAは実用的かつ戦略的なパートナーとなるツールです。
2025年11月幕張メッセ開催の高機能素材Weekに出展します。詳細はこちら
株式会社電通総研|GXコンサルティングサービス「グリーンイノベーションコンパス
サステナブルな社会の実現に向け、多くの企業がGX(グリーントランスフォーメーション)の課題に直面しています。最近では、経営企画部門やサステナビリティ部門だけでなく、開発・製造部門のような現場の方々からも多くの悩みの声が聞かれます。 GXの取組みを推進・加速するには、プロセスを整備し、遂行することが肝要です。また、ツール整備や組織力・人材力強化を行い、プロセス遂行力を最大化する必要があります。「グリーンイノベーションコンパス(GIコンパス)」というフレームを用いて、経営から現場まで、一気通貫でGXの取組みをご支援するコンサルティングサービスを提供しています。(2024年 高機能素材Week出展社)
まとめ|あらゆる企業、個人に関係するGXとGX推進法
GX推進法の成立や改正が行われているのは、GX経済への移行、すなわちカーボンニュートラルと経済成長の両立を実現するためです。そして、GX推進法にGX-ETSや化石燃料賦課金などが盛り込まれ、国内企業に対してGX移行のための協力が求められています。
GXは日本だけで使われている言葉ですが、同様の取り組みは世界的に進められています。また、Q&Aで記したように、中小企業は大企業ほどの取り組みは求められないとはいえ、協力すれば税額控除があり、また顧客からのイメージアップも期待できそうです。
こうした事実から、GXへの取り組みはあらゆる企業や個人に求められるものといえるでしょう。また、この記事で取り上げたGXの「知る」というアクションを取るためにも、リサイクルテック ジャパンにぜひお越しください。そして、GXのソリューションとなる製品やサービスをお持ちの企業は、ぜひ出展をお願いいたします。
【出展社募集中】まずは無料で資料請求ください!
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