製造工程の乾燥時間短縮はなぜ進む?
マイクロ波乾燥の最新技術と導入効果


はじめに

製造工程のなかでも乾燥は、エネルギーと時間を大きく消費する工程の一つです。乾燥時間短縮が進まなければ、生産ライン全体の効率低下やエネルギーコストの増大につながります。

マイクロ波乾燥は、素材の内部から直接加熱することで従来法より大幅な乾燥時間短縮を実現し、品質維持との両立も期待できる技術です。本記事では、製造工程における乾燥の課題からマイクロ波乾燥の原理、乾燥時間短縮の具体的なデータ、導入時の注意点までを順に取り上げます。



【展示会情報】
【次世代】乾燥プロセス展 ードライテックー

会期:2026年9月30日(水)~10月2日(金)会場:幕張メッセ  


製造工程における乾燥の課題

乾燥が占めるエネルギーと時間

乾燥は、製造工程のなかでもエネルギー負荷が大きい工程です。米国エネルギー省によると、工場内で使われるエネルギーのうち、製品を加熱・乾燥・焼成するための熱エネルギーが米国全体のエネルギー消費の7%超に関わる規模を占めるとされています。とくにパルプ・紙、食品・飲料、石膏、化学品、繊維の各分野は乾燥工程の負荷が大きい領域です(参照*1)。

業種別にみると、パルプ・紙セクターでは全エネルギー消費の22%を乾燥が占め、食品セクターでは10%に達します。オークリッジ国立研究所による2020年時点の推計で、パルプ・紙セクターの熱風乾燥機の年間エネルギーコストは9億1,900万ドル、食品セクターでは4億1,700万ドルに上ります。さらにCO2排出量でも、パルプ・紙セクターの25%、食品セクターの15%が乾燥に起因しています(参照*2)。こうした数値から、乾燥時間の短縮がコスト削減と排出削減の双方につながることがわかります。

従来乾燥法の限界

従来の乾燥炉では、材料の外側から内側へ熱を伝える方式が一般的です。木材産業で使われている従来型オーブン乾燥では、この外側からの伝熱によって材料中心部まで熱を届けることが難しく、時間とエネルギーの両面で大きな損失が生じます(参照*3)。

従来型の乾燥には加熱、乾燥、均衡、調湿という4つの段階があり、すべてを完了するまでに長い時間を要します。この長時間処理が時間損失とエネルギーコスト増大の主な原因です。製造工程の生産性を高めるには、こうした伝熱の限界を克服できる乾燥技術の選定が必要になります。


マイクロ波乾燥の原理と仕組み

誘電加熱による内部発熱

マイクロ波乾燥は、伝熱ではなく誘電加熱によって試料自体を発熱させる方式です。マイクロ波が極性分子、とくに水分子に作用して熱を発生させるため、材料の内部から水分蒸発が進みます(参照*4)。

身近な例では電子レンジが同じ仕組みを利用しています。周波数2.45GHzのマイクロ波によって対象物を分子レベルで激しく振動・回転させ、内部加熱を起こすことで短時間で目的の温度まで到達できます(参照*5)。マイクロ波乾燥では、この内部発熱の性質を製造工程の乾燥に応用しています。

選択加熱と乾燥速度の関係

マイクロ波乾燥の大きな特徴は「選択加熱」と呼ばれる性質です。マイクロ波は極性分子に選択的に作用して熱を発生させるため、水分だけを効率よく加熱できます。この性質により乾燥速度が高く保たれ、乾燥時間を大幅に短縮できるうえ、無駄なエネルギーが少なくなります(参照*4)。

従来の炉乾燥が表面から中心へ熱を伝えるのに対し、マイクロ波では中心から外側へ加熱が進むため、乾燥がより速く完了します。加えて、製品温度の均一な分布、プロセス変数の制御しやすさ、設備の省スペース化といった利点も挙げられています(参照*3)。


乾燥時間短縮の効果とデータ

従来法との時間・エネルギー比較

マイクロ波乾燥による乾燥時間短縮の効果は、複数の実験で具体的に確認されています。ノースカロライナ州立大学による木材の乾燥試験では、従来のオーブン乾燥で含水率4%に達するまで24時間を要したのに対し、マイクロ波乾燥では900Wの出力でアカマツ・トウヒともに15分で同じ含水率まで低減できました。また、エネルギー消費量については、オーブン乾燥が15分のマイクロ波乾燥より93%多く消費したと報告されています(参照*3)。

また、産業技術総合研究所による研究では、セラミックスの製造工程においてもマイクロ波加熱を利用することで、成形から焼成までの工程時間を従来製法の約1/5以下に、全体の工程時間を半分以下に短縮できたと報告されています。焼成温度の低温化と焼成時間の短縮化により、投入エネルギーの削減効果も大きいと見込まれています(参照*6)。導入検討の際は、自社の対象素材について従来法との時間差とエネルギー差を定量的に比較することが第一歩となります。

品質維持と高効率の両立

乾燥時間短縮だけでなく、乾燥後の品質を維持できるかどうかも製造工程では欠かせない評価軸です。食品分野の研究では、マイクロ波の利用により乾燥処理時間を従来乾燥法の1/3〜1/2程度まで大幅に短縮できる条件が見いだされ、さらに色彩や栄養成分の変化抑制が見込めることが確認されています(参照*4)。

また、産業機械やプロセス技術を提供するGEAの医薬品向けの装置は、75Lの単釜式プロセッサに3kWのマグネトロンを搭載し、実効出力2.4kWで毎分約59gの水を蒸発させる技術があります。缶内圧力を40mbarに設定した場合、水の蒸発潜熱は2,433kJ/kgとなり、毎分144kJのエネルギーが製品に供給されます(参照*7)。このように、品質基準が厳しい分野でも、出力と圧力の組み合わせで高効率と品質維持を両立する設計がなされています。



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【次世代】乾燥プロセス展 ードライテックー

会期:2026年9月30日(水)~10月2日(金)会場:幕張メッセ  


主な方式の比較と選び方

マイクロ波減圧乾燥

マイクロ波減圧乾燥は、マイクロ波照射と減圧環境を組み合わせた方式です。減圧下では水の沸点が低下するため、低温で効率よく水分を蒸発させることができます。同時に酸化による品質変化を抑えられるため、乾燥効率と品質保持を高い水準で両立できます(参照*4)。

エネルギー消費の観点では、マイクロ波+減圧方式の比エネルギー消費量は0.83〜1.94kWh/kgと報告されており、熱風乾燥の2.2〜22.2kWh/kgや赤外線乾燥の3.68〜10.8kWh/kgに比べて大幅に低い水準です(参照*8)。ただし、圧力条件の設定には注意が必要です。ワルシャワ生命科学大学とポーランド国立農業・食品バイオテクノロジー研究所によるニンジンの乾燥試験では、6.5kPaの圧力条件で乾燥ムラや局所的な焦げが発生し、3.5kPa条件と比べて水分活性が有意に高くなった事例が報告されています(参照*9)。

ハイブリッド乾燥との使い分け

マイクロ波乾燥を熱風など他の方式と組み合わせたハイブリッド方式も選択肢の一つです。エネルギー消費量を比較すると、マイクロ波+熱風方式の比エネルギー消費量は1.94〜6.75kWh/kgで、熱風単独の2.2〜22.2kWh/kgより低い範囲に収まっています。一方、マイクロ波+減圧方式は0.83〜1.94kWh/kgとさらに低い水準です(参照*8)。

このように、エネルギー効率を最優先するなら減圧方式、既存設備との組み合わせやすさを考慮するなら熱風とのハイブリッド方式が候補となります。製造工程で扱う素材の熱感受性と目標含水率、既存ラインとの適合性を基準にして方式を選定する必要があります。


導入時の注意点と対策

乾燥ムラ・局所過熱の防止

マイクロ波乾燥を製造工程に導入する際、乾燥ムラと局所過熱は代表的な課題です。高品質な乾燥品を得るには、水分量が多い乾燥初期には高い出力でマイクロ波を照射し、水分が減って温度上昇が起こりやすい乾燥後期には低い出力に切り替えるなど、段階的にエネルギー供給量を変化させることが求められます。従来の乾燥技術ではこのような高精度な品温制御は困難でしたが、段階制御によって高品質と高効率の両立が見込まれています(参照*4)。

電界分布の偏りに対しては、マイクロ波化学株式会社によって、マイクロ波の電界分布を時間的に制御する位相制御技術が実用化されています。この技術により、凍結乾燥時間の大幅な短縮と高品質化が確認されています(参照*10)。導入時には、出力の段階制御と電界分布の均一化の双方を設計段階で検討してください。

スケールアップの壁と克服策

マイクロ波を利用した化学プロセスは、1986年の最初の学術論文から30年以上が経過してもラボスケールの段階にとどまるケースが多く、反応炉の大型化が困難であることが産業化の障壁となってきました(参照*5)。

セラミックス製造工程では、産業技術総合研究所がマイクロ波による電磁場環境の特異な反応場をプロセスに有効利用する技術開発が進めており、内部加熱や選択的加熱の特徴を活かした省エネルギー効果が確認されています(参照*6)。スケールアップを検討する際には、対象素材でのパイロット試験を行い、電磁場分布と乾燥均一性を検証したうえで装置仕様を確定する手順が必要です。


産業別の導入事例

食品分野

食品分野では、マイクロ波乾燥による乾燥時間短縮と品質維持の両立が具体的に進んでいます。マイクロ波化学株式会社は、食品・医薬等を対象としたマイクロ波多段式凍結乾燥装置「SiriusWave」の販売を開始しました。この装置には位相制御技術が搭載され、凍結乾燥時間の大幅な短縮と高品質化が可能であることが実証されています(参照*10)。

セラミックス・医薬分野

セラミックス分野では、産業技術総合研究所の先進製造プロセス研究部門が、製造工程の環境負荷低減を目指し、マイクロ波の電磁場環境をセラミックス製造に有効利用する技術開発を進めています。成形から焼成までの工程時間を従来製法の約1/5以下に短縮した実績があり、焼成温度の低温化による省エネルギー効果も期待されています(参照*6)。

建材分野では、米国において石膏乾燥へのマイクロ波エネルギー適用を目指すプロジェクトがSaint-Gobain社によって実施されています。このプロジェクトは3年計画で、石膏の焼成工程におけるエネルギー投入量の削減を目的としたものです(参照*1)。セラミックスや建材、医薬品といった幅広い製造工程で、マイクロ波乾燥の導入検討が進んでいます。


関連する注目の展示製品

製造工程における乾燥時間短縮に関連する製品として、過去の展示会ではマイクログルーブロールとウェイビーを応用した水切りシステムが出展されています。この製品は、水洗槽からフィルムを引き上げる際に付着する水を物理的に除去する仕組みで、乾燥炉の短縮や搬送速度の向上につながる可能性が示されています。乾燥工程の前段階で水分量を減らすことも、乾燥時間短縮を実現するための実務的な手段の一つです。

若水技研 株式会社
水切りシステム(参照*11
マイクログルーブロールとウェイビーを応用した全く新し概念の水切りシステムのご提案です。水洗槽からフィルムの引き上げを行う際、水がついて上がってきます。この水を落とすためには、物理的にフィルムにモノを当ててこそぎ落としたり、エアーナイフで吹き落とすといった手法が一般的です。しかしこれでは環境汚染や高価な溶媒のロス、純水の汚染や膨大な量の処理が必要となったり、フィルム上に残った液が乾燥工程を経てシミになることで不良となるなど、様々な課題がありました。そこで、ガイドロールにマイクログルーブロールを用いると高効率に液切りが可能となり、さらに仕上げとして非接触式衝撃波クリーナー”ウェイビー”を応用した装置にかけることで、指で触っても感じる水分量がほぼゼロの状態まで液体を除去することが可能になります。これにより、溶媒の高い回収率や純水のライフサイクルが伸びることが予想されます。さらに、乾燥炉を短くするであるとか、既設設備であれば搬送速度を上げられる可能性も生まれます。これらにより、費用としてのメリットはもちろん、SDGs等の観点からも大きな付加価値がご提供可能です。


おわりに

マイクロ波乾燥は、誘電加熱による内部発熱と選択加熱の特性を活かし、製造工程の乾燥時間短縮を実現する技術です。従来法に対して1/2〜1/5といった大幅な時間短縮が複数の分野で確認されており、エネルギー消費やCO2排出の削減にも寄与します。

導入にあたっては、乾燥ムラ防止のための出力段階制御やスケールアップ時の電磁場検証が欠かせません。自社の製造工程で扱う素材と品質基準を踏まえ、減圧方式やハイブリッド方式の比較を含めた検討を進めてみてください。

マイクロ波乾燥による製造工程の効率化や乾燥時間短縮、品質改善の最新事例を把握するには、専門展示会での情報収集が有効です。
乾燥工程に関わる技術・装置を一堂に比較できる場として、9月に「乾燥プロセスEXPO」が初開催されます。
展示会概要や出展資料など、詳細は下記よりご確認ください。



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