【インタビュー】凸版印刷(株)西日本事業本部 関西SXビジネスイノベーション事業部 SX推進チーム 課長 竹田 剛史 氏

 凸版印刷が2021年5月に公表した中期経営計画では、目指す姿として「DX(デジタルトランスフォーメーション)」と「SX(サステナビリティトランスフォーメーション)」によって社会課題を解決するリーディングカンパニーとして、持続可能な社会の実現と企業価値の向上をはかると明記されている。この取り組みを推進していく上でSXは重要なテーマであり、その重要なミッションを担う部署のひとつが関西SXビジネスイノベーション事業部だ。関西の顧客を中心に商品のパッケージや包装資材など「価値あるパッケージ」を提案する西日本事業本部 関西SXビジネスイノベーション事業部SX推進チーム・課長 竹田剛史氏に聞いた(聞き手:落合平八郎)


進化する透明バリアフィルム「GL BARRIER」

 独自技術によってアルミ箔に匹敵する高いバリア性能をもつ透明蒸着フィルムです。食品などの鮮度を保持し賞味期限の延長を実現します。料理に関する家事を時短したいというニーズに対して電子レンジで調理可能な商品開発に貢献するなど、その時代のニーズに合った機能を提案してきました。身近な事例では、電子レンジで調理するレトルトカレーなどにもGL BARRIERを採用いただいています。一方、従来からアルミは多くの包装素材に使われており欠かせない存在です。しかし、アルミがEV(電気自動車)など新しい産業分野での需要拡大によって価格が高騰し、また製造時に多くの電力を消費することから環境負荷の高い素材になっており、脱アルミの動きが加速しています。当社ではレトルト対応包材、エレクトロニクス包材、医療・医薬品包材、チルド・冷凍食品包材など用途に応じたGL BARRIERをアルミからの代替として提案しています。

【写真】同社の透明バリアフィルムのトップブランド 「GL BARRIER」(同社ホームページより)これを使用したレトルト食品パウチとモノマテリアル口栓付き食品パウチは2021年度1年間の出荷量からCO₂排出量を算出した結果、アルミ箔を用いたパッケージに比べ、81,000トンのCO₂排出量削減効果を得た(PETフィルム/アルミ箔との比較)。CO₂排出量削減と電子レンジ調理対応が可能となることから「GL BARRIER」の採用が拡大している。


「GL BARRIER」で環境配慮型パッケージに貢献

 2015年に国連でSDGsが採択された後、2019年あたりから環境配慮型のパッケージについてのご相談を多数受けるようになりました。GL BARRIER自体はフィルム素材ですが、お客様に形あるものとしてご提案できるよう、その素材を用いて新たな包装素材まで作り上げた事例があります。それがこのチューブなパウチ®やキューブパックです(写真2)。このチューブなパウチ®であればGL BARRIERを使用することで、パッケージ厚を薄くできるため、例えば食品やトイレタリー歯磨き粉のチューブ商品で最後の1回を絞り出すときの苦労がなくなり、簡単に絞り出せます。パッケージの省資源化と内容物をしっかり使い切るという商品づくりに貢献します。また透明なので中身が見えるというメリットがあります。キューブパックも水場で使えるポンプ付き紙容器としてボディーソープなどに採用され、プラスチックの代替として高いバリア性能が認められています。今後もGL BARRIERの機能を活用し、お客さまが求める環境配慮型パッケージを開発し、持続可能な社会に貢献していきます。

【写真】(同社提供)GL BARRIERによる環境配慮型パッケージの事例。左はチューブなパウチ®。高バリア性でかつ透明なので残量がわかる。容器の胴部が薄いので最後まで使い切ることができる。右はキューブパック。プラボトルの代替容器としての性能を満たした上でプラスチックの使用を低減できる。


「こんなところにまでトッパンが」。お菓子のパッケージが入社の動機に。

 学生時代で就職活動をしていたころ、マスコミ業界で働いてみたいという気持ちがありました。そのときに凸版印刷と出会い、ほとんど事業内容も知らないままに就職説明会に参加しました。雑誌の裏表紙に社名が出ていたのを思い出したので印刷の会社だと思っていましたが、多岐にわたる事業を手掛けていることをその時初めて知りました。特に釘付けになったのが、子供の頃から大好きだったお菓子の商品パッケージでした。当社の包装材の導入事例として紹介されていたのです。「こんなところにまでトッパンが」と衝撃を受け、マスコミ志望をやめて採用試験を受けて合格しました。そして、入社した最初の部署で、そのお菓子の包装資材の営業担当となりました。当社の包装資材が様々な製品に採用され、身近なところで社会に役立っていることを誇りに思いながら、たくさんのお客さまに環境配慮と機能性を掛け合わせた提案をしていきます。

【写真】GL BARRIERを採用した商品群(同社提供)身近な商品にGL BARRIERの優れたバリア性が採用され、品質保持と賞味期限の延長に貢献している。

本展では、凸版印刷(株)高田 氏が登壇するセミナーを開催します
※本講演は終了しました


2023年05月18日(木)|10:00 ~10:45|会場:インテックス大阪|SUSMA-3
持続可能な社会の実現に向けてパッケージにできること
~脱炭素と資源循環を巡る市場動向とトッパンの最新の取り組み~

凸版印刷(株)
生活・産業事業本部 SX推進センター SX事業開発本部 マーケティング部
部長
高田 康太郎