【インタビュー】オー・ジー(株)プロジェクト推進 レザープロジェクトリーダー 田中 健二 氏

 昨年12月に幕張メッセで開催された「サステナブルマテリアル展」で、展示会場の一番奥という場所でありながら連日大勢の来場者が詰めかけるブースがあった。オー・ジー株式会社だ。同社が加工メーカーの株式会社加平と開発した卵の殻を使ったバイオレザー「エッグシェルレザー」が大手マスコミに取り上げられたことで、環境意識の高まりと相まって予想以上の反響があったという。同社は染料や顔料、樹脂製品や機能材料など素材を中心に扱う化学品専門商社でありながら、バイオレザーのような加工品を新たに提案する姿には、「人と化学の調和」を経営理念とする100年企業のチャレンジ精神の表れと言えよう。レザープロジェクトリーダーの田中 健二氏に聞いた(聞き手:落合平八郎)


なぜ、化学品専門商社がバイオレザーの製品化を?

 私が担当しているレザー事業では、主に合成皮革に使われる石油由来の化学品原材料を販売しています。しかし、近年は環境に配慮したものづくりが進む中で、これまでの経験やノウハウを生かし、原材料を供給する側から社会の動きに新しい提案をできないかと考え、バイオレザーを手掛けることになりました。その中でも、植物由来の原料を使った「エッグシェルレザー」は、当社のパートナー企業である合成皮革を加工する工場と共に開発しました。しかしながら、植物由来の原料はコストが高く、需要が伸びづらいと感じています。そのため、少しずつでも需要を増やしていくために、当社の取引先とのネットワークを活かしながら環境に優しい製品を流通させていきたいと考えています。

【写真】「エッグシェルレザー」(同社提供)※卵を入れているバッグの材料に採用。環境配慮型商品に貢献できないかと加工工場と一緒になって考えて製品化。合成皮革で使われている材料のひとつである炭酸カルシウムに着目。その炭酸カルシウムが主成分である卵の殻が焼却や埋め立て処分されていることを知り、エッグシェルレザーが生まれるキッカケとなった。


展示会での反響はいかがでしたか?

 これまでグループ会社のメーカーと一緒に展示する機会はあったものの、単独で展示するのは初めてでした。しかし、大きな反響を呼び、リード獲得の目標値を大きく上回ることができました。特に、コロナ禍で商談が制限されてきた中で、加工メーカーの方々やその他のお客様から多数のフィードバックを得ることができ、非常に収穫のある展示会となりました。今後、環境に配慮した商品の需要が高まっていることを再認識し、商品開発に取り組んでいきます。展示会で得た情報をもとに、コスト面や機能面の改良を進めていきます。また、これまで出会うことのできなかった新しいお客様と直接的に商談ができたことは、大きな成果となりました。自動車の内装や靴など、広範囲にわたってお問い合わせをいただき、現在はお客様にサンプルを提供し、評価をいただいております。

【写真】昨年12月開催「サステナブルマテリアル展」でのブース(同社提供)
同展示会の会場で出入口から最も遠いところに出展ブースを構えていたにも関わらず、連日大勢の来訪者で賑わっていた。


今後の取り組みについてお聞かせください。

 サンプルを供給したお客様のなかで、エッグシェルレザーでソファーに採用検討してくださっているところがあります。ずいぶんと課題もありましたが、ようやく試作ができあがりました。ある程度は想像していたのですが、先日現物に座ってみると「ようやくここまで来たか」と感無量でした。環境意識の高まりのなかで、加工メーカーの加平さんと一緒になってチャレンジしてきた結果が出てとても嬉しかったです。
また、この卵の殻を使ったエッグシェルレザーは卵の殻以外にもトウモロコシやトウゴマなど植物由来の原料を使ったバイオレザーです。従来のバイオレザーで粉末化した食品や植物などを混ぜ込んだ製品がありますが、当社製品は石油由来の原料を植物由来の原料へ置き換えることに成功した事でバイオマス度を高める事が出来たところが大きな特長です。
また、「ふんわりレザー」と呼ぶ、従来の製造方法とは異なる技術で作られる合成皮革を開発中であり、今回の「[関西]サステナブルマテリアル展」に出品します。製造時の二酸化炭素を削減できるため最終商品のCO2排出量を下げることができ、環境負荷の低減効果に貢献できます。どういう分野でご採用を検討いただけるのか、お客様との商談のなかで参考にしたいと考えています。今後も、持続可能な社会の実現に向けたさまざまなニーズに応え、誠実に取り組んでいきます。

【写真】リサイクル樹脂コンパウンド(同社提供)同社の環境対応はバイオレザーだけにとどまらない。同社の協力先であるTEAMPLAS CHEMICAL 社がタイ国内で流通した使用済みプラスチック製品を回収し、洗浄・粉砕工場で処理した低臭再生プラスチックペレットを同国で初めて開発。寿命が長く、高い消臭力が特長だ。