【インタビュー】TOWAレーザーフロント株式会社 執行役員 近泰輔氏/営業部部長 鈴木宏司氏

 仕事にも日常生活にも、なくてはならない存在になったスマートフォン。これらの電子回路が安定的に動くため、「チップ抵抗器」と呼ばれる部品があることをご存じだろうか? スマートフォンはもちろんのこと、コンピューター、自動車、あらゆる家電製品と、今や半導体が活用されているプロダクトは多方面にわたる。

 こうしたチップ抵抗器や半導体といった微細、精密な加工で製品をつくるため、必要不可欠な生産設備が「レーザ加工機」だ。「固体レーザ」を世界で初めて事業化し、半世紀にわたり技術を継承してきたTOWAレーザーフロントの近泰輔氏、鈴木宏司氏に、つくり手から見たレーザアプリケーションのさらなる可能性についてお話を伺った。(聞き手:藤麻迪)


レーザ加工機を知らない人も、必ずレーザ加工機が関わるプロダクトを利用している

 私たちは率直にいえばレーザ加工機のメーカーですが、あえてミッションという切り口からいえば「微細加工分野No.1」を目指すメーカーです。といっても、Photonix、ひいては高機能素材Weekにお越しの方の中には、同じ「加工」をしている方だとしても、微細加工分野には馴染みのないケースもあるかもしれませんね。

 微細加工とは、1mm未満の大きさの加工のこと。これだけでは、まだイメージしづらいかもしれませんから、実際に私たちのレーザ加工機がどんな使われ方をしているのか、説明します。

 私たちのプロダクトからつくられる多くの方に馴染み深い最終製品では、スマートフォンなどがあります。スマートフォンには、安定的に通話したりインターネットが使えたりするため半導体や電子デバイスが数多く使われています。私たちがつくるレーザトリマ装置は、スマートフォンなどに搭載されているチップ抵抗器を一素子ずつ測定しながらレーザでカットしていき、狙った抵抗値に加工を行う微細加工装置です。チップ抵抗器は、IOTの進展や使用環境の変化に伴い、高機能化が求められています。私たちは、お客様が求めるニーズに対応するため先端技術を活かし、高付加価値のレーザ加工装置を実現しています。

また、決して多くの方の目につくものではないものの、人間生活を縁の下から支えているものとしてウェハマーカ装置が挙げられるでしょう。半導体の材料となるウェハがありますが、これにトレーサビリティのためロット番号などをレーザでマーキングする装置です。国内外の多くの半導体メーカーにご利用いただいており、ウェハの素材としてはシリコンが中心です。

近年カーボンニュートラルの達成に向けた取り組みが世界中で加速していて、炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)といったパワー半導体のウェハ素材へのレーザマーキングも増えています。

これらは、私たちのプロダクトの代表例であり、なおかつ、さまざまな方にもイメージしてもらいやすいものです。ほかにも、超短パルスレーザ(ピコ秒やナノ秒)を搭載し、加工用途や材料に合わせたレーザ光源及び加工光学系で、熱影響を抑えた高品位な微細加工装置など、レーザで様々な素材を「切る」「削る」「描く」「接合する」レーザ加工機を開発・生産しています。


国家的課題の半導体生産。TOWAレーザーフロントもその一翼を担う?

 おっしゃるとおり、経済安全保障や産業力向上の側面から、日本の半導体分野の再興は政府、経済界からの要望のみならず、安定的な生活を望む多くの方々に影響する課題です。もちろん、私たちも先ほど述べた微細加工分野No.1への追求とともに、この課題解決に寄与していきたいと考えています。

 ここで私たちのこれまでを述べると、1972年、固体レーザの代表的な発振器であるYAGレーザ発振器を製品化したことから始まりました。そこから50年超、先ほど説明したようなレーザトリマ装置やウェハマーカ装置など、時代にあったさまざまな加工に活用いただけるプロダクトを開発し、ものづくりをする各業界のお手伝いをしてまいりました。

 私たちは2018年に半導体生産装置メーカーのTOWAグループの一員になりました。従来から半導体は私たちにとって重要なセグメントでしたが、これまで以上にグループのシナジーを活かし半導体業界の発展に寄与していきたい。具体的には、半導体生産の後工程の部分においても、より注力することを考えています。

【写真】TOWAレーザーフロントの鈴木氏(左)と近氏(右)


コアコンピタンスは、きれいな光を奏でる加工機・ソリューション

 YAGレーザ発振器の開発が私たちの歴史の起点ですが、それは私たちのコアコンピタンスでもあります。レーザ加工機のメーカーは数多(あまた)存在しますが、私たちはレーザ加工エンジンを自前で開発するノウハウと実績がありますのでお客様が求めるものづくりのソリューションを提供することができます。こうした一気通貫の開発ができるからこそ、お客様が望む形に完成させられるのです。

 ここまで何度か述べた「微細加工分野No.1」のほか、もう1つ、私たちが掲げるミッションがあります。

 それは、「きれいな光を用いたきれいな加工」。

 高精度な発振器、そして加工機で「きれいな光」を奏で、お客様側のミッションである「きれいな加工」を実現していきます。Photonixは今回5万人の来場者がいらっしゃると伺っていますが、ぜひ私たちが奏でるきれいな光を知っていただき、微細加工のこれからをお客様と語らえればと思います。また、900社超のほかの出展社とも、同様に何か形に残る仕事ができれば、面白いですね。

【写真】TOWAレーザーフロントのレーザ微細加工装置

TOWAレーザーフロント(株)出展情報は下記からご確認いただけます