熱風乾燥の省エネでコスト削減を実現する最新手法とは?
熱風乾燥の基本原理と課題
熱風乾燥の仕組みと適用分野
熱風乾燥は、高温の空気を対象物に当てて水分を蒸発させるシンプルな方法です。対流によって熱を伝えるため、穀物・木材・スラッジなど多様な素材に適用できます。木材やスラッジの乾燥では、水分を取り除くために大量のエネルギーが必要であり、熱エネルギーが主なコスト要因になります(参照*1)。
穀物乾燥の分野でも、エネルギー消費は長年の課題とされています。従来の熱風乾燥技術の多くは、乾燥工程を維持するために大量の熱エネルギーを必要とし、乾燥速度が遅いために消費エネルギーがさらに膨らむ傾向があります(参照*2)。
このように、対象物の種類を問わず「水分蒸発に大きな熱量が要る」点が熱風乾燥の基本特性です。適用分野が広いからこそ、省エネによるコスト削減の余地も大きいといえます。
エネルギーコストが占める比重
熱風乾燥において、燃料費や電気代が運用コスト全体の中で大きな割合を占めます。適切に設計された熱回収システムを導入すれば運用コストを大幅に削減し効率を向上させることができます。裏を返せば、回収されない排熱がそのままコスト損失になっていることを意味します(参照*1)。
木材乾燥の工程でも、高温・多湿の排気をそのまま外部へ放出することで大きなエネルギー損失が生じています(参照*3)。こうした損失を数値で把握し、回収可能なエネルギー量を見積もることが、コスト削減の出発点になります。
省エネを実現する主要技術
排熱回収と熱交換器の導入効果
排熱回収とは、乾燥工程で捨てられていた高温の排気から熱を取り出し、新鮮な供給空気の予熱などに再利用する技術です。熱交換器をシステムに組み込むことで、排気の熱を入側の空気に移し、全体の熱効率を高めます。
熱回収技術には、乾燥コストの低減につながる省エネ効果が報告されています。熱回収技術によってシステム効率を約25%改善し、乾燥コストを効果的に低減できることが示されています(参照*2)。また、CAREL Groupの木材乾燥向け熱回収ソリューションである、ベルト式乾燥機に板型熱交換器を組み合わせた設備では30%の省エネを達成しており、最適化されたシステムではさらに高い削減率が得られたとされています(参照*3)。
樹脂乾燥機の領域でも、設定温度に応じた省エネ効果が計測されています。80℃設定時の省エネ効率が18.8%、120℃設定時には32.8%に達し、年間133,760円の電気代削減が計測されています(参照*4)。設定温度が高いほど排熱量が増え、回収効果も大きくなる傾向が読み取れます。
ヒートポンプの活用と高温化技術
ヒートポンプは、低い温度の熱源から熱をくみ上げて高温側に移す装置で、少ない電力で大きな熱量を得られます。たとえば、関西電力の蒸気発生ヒートポンプは、工場内の冷却水やプロセスで発生する温排水などの低温熱源から熱を回収し、最大150℃の高温蒸気を生成できます。これにより省エネやCO2排出量の削減を実現できる可能性があります(参照*5)。
Arla Foodsのデンマーク・AKAFA乳粉工場では、GEAの高温ヒートポンプシステム「AddCool」を噴霧乾燥機に統合し、一次空気加熱に使う天然ガス需要を59%削減しました。同システムはCO₂を冷媒とする遷臨界ヒートポンプで、乾燥機などから回収した未利用熱を熱風生成に活用する仕組みです。HPT TCPのケーススタディでは、乳製品や食品加工分野でエネルギー消費量を最大約50%、カーボンフットプリントを50〜80%削減できる技術とされています(参照*6)。ボイラ燃料をヒートポンプの電力に置き換えることで、燃料費と炭素コストの両面でコスト削減が期待できます。
ハイブリッド乾燥による複合効果
ハイブリッド乾燥とは、熱風乾燥にマイクロ波や赤外線など別のエネルギー源を組み合わせる方式です。それぞれの長所を活かすことで、乾燥時間の短縮と省エネを同時に狙えます。
ハイブリッド乾燥は、乾燥時間の短縮が確認された例があります。50℃の熱風で1時間乾燥したあとマイクロ波を併用した実験では、全乾燥時間が85%短縮されました。70℃設定でも75%の短縮が確認されています(参照*7)。乾燥時間が大幅に縮まれば、その分だけ加熱に使うエネルギーも削減でき、コスト削減に直結します。
マイクロ波や赤外線、凍結乾燥などの新技術はエネルギー効率や品質保持の面で大きな利点がありますが、設備コストや大規模化の難しさといった制約も指摘されています(参照*2)。
断熱強化とインテリジェント制御
断熱強化は、乾燥機本体からの放熱を抑えて省エネにつなげる手法です。乾燥機本体からの放熱を抑える断熱強化も、手軽に取り組める省エネ策の一つです。株式会社ハーモは、金属性ドラムへ断熱コートを巻きつけることで放熱を削減し、年間18,144円の電気代を節約できました(参照*4)。投資額が比較的小さいため、すぐに効果を得やすい手法です。
インテリジェント制御は、過剰な加熱を抑えて省エネにつなげる方向として示されています。さらに、ハイブリッド技術やインテリジェント制御を統合した先進的な乾燥システムが、今後もっとも有望な方法になるとされています(参照*2)。温度・湿度・風量をセンサーで監視しながら自動で最適化する制御を導入すれば、過剰な加熱を防ぎ、さらなるコスト削減が見込めます。
コスト削減効果の定量データ
熱回収による年間削減額の試算
熱回収を導入した場合に、実際にどの程度のコスト削減が得られるかを数値で確認します。木材乾燥窯を導入したCAREL Groupの事例では、空気対空気の熱回収システムで排熱の25〜40%を回収でき、回収率30%の試算で年間約900,000kWhの熱エネルギーを節約できることが確認されました。熱エネルギー単価を1kWhあたり0.02〜0.04ユーロとした場合、年間18,000〜36,000ユーロのコスト削減が見込まれます(参照*3)。
印刷工場で乾燥機の最適化と熱酸化装置の排熱回収を組み合わせた事例では、天然ガス使用量が年間110万kWh削減され、熱酸化装置での省エネが年間250万kWh、熱媒油システムからの回収が年間32万kWhに達しました。CO2排出量も年間752トン低減されています(参照*8)。
樹脂乾燥機では、120℃設定の熱交換器付きモデルで年間の電気代が標準機の407,362円から273,602円へ下がり、133,760円の削減が計測されています(参照*4)。設備の規模や温度帯によって削減額は変わるため、自社の条件に当てはめて試算することが欠かせません。
投資回収期間の目安
投資回収期間は、省エネ設備の導入判断で確認したい指標です。産業用の熱回収では、熱エネルギー需要の20〜50%を削減できるケースがあり、多くの場合2〜5年で投資回収ができます。システム規模・燃料コスト・利用できる補助制度によって回収期間は変動します(参照*9)。
樹脂乾燥機の場合、年間133,760円の電気代削減が得られるため、熱交換器の設備差額に対して概算の回収時期を算出できます。削減額が大きい高温設定の工程ほど、回収期間は短くなる傾向です。自社の稼働時間や燃料単価を入れたシミュレーションで具体的な回収年数を把握し、投資判断の根拠にすることが有効です。
導入事例に学ぶ成功パターン
乳製品工場の噴霧乾燥改革
上述した、デンマークのSvenstrupにあるArla FoodsのAKAFA乳粉工場では、GEAの高温ヒートポンプシステム「AddCool」を稼働中の噴霧乾燥機に統合し、初年度だけでCO2排出量が1,500トン減少しました(参照*6)。
印刷工場の乾燥工程最適化
Process Energyが紹介する印刷会社の熱酸化装置排熱回収の事例では、まず乾燥機の空気バランスを最適化し、熱源を間接加熱の熱媒油方式に切り替えました。この見直しにより、熱酸化装置へ送る排気量が60%減少し、酸化装置の運用コストが下がりました。排気量が減って溶剤濃度が上がったことで、酸化装置は補助燃料なしで稼働できるようになり、さらに廃ガスからの熱回収という副次的な効果も得られています(参照*8)。
乾燥機単体ではなく、排気処理装置まで含めた工程全体の最適化がコスト削減を最大化した好例です。自社の排気処理設備にも同様の無駄がないか確認する価値があります。
樹脂乾燥機の排熱再利用
株式会社ハーモの樹脂乾燥機では、サイクロンを通過した排気を熱交換器に通し、回収した熱量を再び乾燥ドラムへ戻すことで放熱を削減しています。さらにフィルターを通して排気することで室内のクリーン度も維持でき、ヒーターの消費電力が低減されます(参照*4)。
この方式は既存の乾燥機に熱交換器を後付けする形で導入できるため、設備更新の規模を抑えやすい点が特徴です。120℃設定での省エネ効率32.8%という数値は、樹脂加工における熱風乾燥のコスト削減余地の大きさを示しています。
手法の比較と選び方
工程特性に応じた判断基準
省エネ手法を選ぶ際には、自社の乾燥工程がどのような温度帯・素材・生産量で運用されているかを整理することが出発点です。ヒートポンプは低温熱源から高温蒸気を生成できるため、冷却水や温排水が大量に発生する工場との相性が良いといえます。一方、熱交換器は排気温度と外気温の差が大きい工程ほど回収効率が上がります。
熱源と受熱側の温度差が小さい場合は回収の経済性が低くなるほか、排熱の発生が断続的だと安定した回収効果を得にくいことも指摘されています(参照*9)。ハイブリッド乾燥はエネルギー効率の面で優れる一方、設備コストと大規模化に課題が残されています(参照*2)。
初期投資と運用コストの比較
産業用熱回収技術の導入には、熱交換器・配管・制御システムの購入に加え、既存設備の改修や工事中の操業停止にともなう費用がかかります。とくに古い設備への後付けでは初期投資が大きくなりやすいとされています(参照*9)。
初期費用の壁を下げる手段として、設備を保有せずにサービスとして省エネ効果を受け取る「エネルギー・アズ・ア・サービス」方式が挙げられています。この方式では、導入企業が多額の自己資金を用意する必要がなくなります(参照*9)。投資回収期間が2〜5年の範囲に収まるかどうかを基準にしながら、補助金や契約形態も含めて総合的に比較することが、最適な手法を選ぶ鍵になります。
導入時の注意点と失敗回避策
導入時は、排気に含まれる物質への対策が必要です。高い湿度や粉じん、空中に浮遊する粒子は機器の性能を低下させ、濡れた木材やスラッジ由来の物質は腐食性の環境をつくります。耐久性を確保して費用のかかる停止を回避するには、適切な材料の選択が不可欠です。空中を漂う破片は、目詰まりや効率低下のリスクも高めます(参照*1)。
木材乾燥の分野では、排気に含まれる樹脂やタンニン、木片による酸性環境に耐えるために、全アルミニウムやエポキシコーティングされたアルミニウムなどの耐腐食素材が使われます。多くのシステムでは、効率と耐久性および保守のしやすさを両立させるために、プレート間隔を8mm以上に広げた設計が採用されています(参照*3)。
加えて、配管や蓄熱装置を通る過程での熱損失、排熱の発生が断続的で安定した性能を得にくいケースにも留意が必要です(参照*9)。素材選定・プレート間隔・熱損失対策の3点を設計段階で確認しておくことが、省エネ投資の失敗を防ぐ基本になります。
関連する注目の展示製品
熱風乾燥に関連する技術は、展示会でも複数出展されています。ここでは、過去の展示会で紹介された注目の出展商品を取り上げます。
アンデックス 株式会社
・熱風乾燥炉+高出力赤外線ヒーター『CAB-OVEN HYBRID』
熱風乾燥炉のハイブリッド化に最適 <熱風+赤外線ヒーター> CO2排出削減・乾燥時間の短縮・作業の効率アップ ガス使用量の削減!・乾燥の短時間化!・作業の高効率化!
株式会社 栗田工業
・熱風乾燥炉 SAHARA
コンパクト&コストパフォーマンスに優れた乾燥炉です。最高温度200℃まで炉内温度を上げる事が可能です。自社にてパネルを製作しますので、設置場所に合わせたフリーサイズの設計、施工が可能です。80,000kcal/hバーナーを必要に応じ2台、3台、4台と増設することにより、様々な能力の発揮を実現しております。100mm厚のロックウール断熱材を採用し、内部は敷鉄板を設置することにより熱効率を高めます。
株式会社 正英製作所
・【電化/水素/ガス】熱風発生装置
お客様の乾燥装置に好適な”熱風発生装置”をご提案いたします。【塗装乾燥/食品乾燥/加熱炉/各種工業炉にお使いいただけます。】 熱風発生装置は乾燥炉・加熱炉・各種工業炉の熱源として また塗装設備・食品加工などの乾燥工程など 幅広い用途でご使用いただける装置です。 【特長1】 様々な熱源/加熱方式をラインナップしています。 ○ガス式(都市ガス・プロパンガス・水素ガス燃焼に対応) ○電気式(クリーン熱風でガス燃焼式と同等の出口温度が可能) ○間接式(熱交換器を用いたクリーン熱風) 【特長2】 燃焼量/ヒーター容量も豊富に取り揃えています。 ○ガス式 47kW~2300kW ○電気式 ~470kW 【特長3】(カッコ内型式) 乾燥設備に合わせた柔軟な選定が可能。 ○ガス式でも電気式でも燃焼排ガスを含まない”クリーン熱風”がお選びいただけます。(AH-BX、AH-E) ○高い炉圧にも対応できます。(AH-B) ○最大800℃の高温熱風(AH-B) ○熱風のリターンが可能(AH-B、AH-D、AH-E) ○設置場所に合わせて設計が可能。(AHすべて) ○各種安全装置を標準搭載
おわりに
熱風乾燥による製造工程の効率化や乾燥時間短縮、品質改善の最新事例を把握するには、専門展示会での情報収集が有効です。
乾燥工程に関わる技術・装置を一堂に比較できる場として、9月に「次世代乾燥プロセスEXPO」が初開催されます。
展示会概要や出展資料など、詳細は下記よりご確認ください。
参照
- (*1) Heatex – Industrial Drying
- (*2) PubMed Central (PMC) – Current Status of Grain Drying Technology and Equipment Development: A Review
- (*3) Improving energy efficiency in wood drying through heat recovery
- (*4) 電気代はなぜ上がるのか?成形工場においてやるべき対策
- (*5) 生産プロセス×ヒートポンプ(循環加温ヒートポンプ/熱風ヒートポンプ/蒸気発生ヒートポンプ・電気ボイラ)|【全国対応】関西電力/公式
- (*6) Project 59 – Feed drying, Arla Foods, Denmark
- (*7) Reduction in drying time of taro using pretreatments or posttreatment with hot air drying
- (*8) Process Energy – Printing – Thermal Oxidiser Heat Recovery – Process Energy
- (*9) Skyven Technologies – Industrial Heat Recovery
