【インタビュー】カーボンニュートラルの実現に貢献 自動車塗装の革新「ドライ加飾技術」デモラインが今秋稼働へ
株式会社大気社 取締役常務執行役員塗装システム事業部長 浜中幸憲氏


自動車塗装プラントでトップクラスの大気社では、環境負荷を低減し高品質な塗装を実現する革新的な取り組みとして、かねてより開発を進めてきたドライ加飾技術がいよいよ実用化段階に入った。今秋には神奈川県座間市にある同社のテクニカルセンターに設置するデモラインが完成する。また、アンボックストプロセス(Unboxed Process)にも対応する。同社の浜中幸憲氏(取締役常務執行役員塗装システム事業部長)に聞いた。(文:落合平八郎広報事務所 写真:小野千明)

いよいよドライ加飾技術が実用段階に

1913年に、アメリカ・フォード社が世界で初めてベルトコンベアの生産ラインを導入して以来、自動車の生産ラインの基本概念は変わっていません。しかしEVの登場により、ギガキャストを含めた新たな発想転換をもたらし、アンボックストプロセス(Unboxed Process)という新しい生産プロセスが生まれてきました。車両を数ブロックに分けて個別に作り、最終段階でこれらを組み合わせて完成させます。当社はこの生産プロセスにも適した塗装プロセスとして、従来のウェット加飾に代わる塗装代替としてドライ加飾を提案しています。これは、フィルムを真空吸引・加熱によって貼り付けることで、自動車の外板パネルをフィルムで加飾する技術です。意匠性をもったフィルムを採用することでウェット塗装にはない色彩や質感が表現できるため、新たな価値の創出に貢献できます。今秋には当社のテクニカルセンターにドライ加飾システムを組み込んだデモラインが完成します。多くのお客様にドライ加飾のすばらしさを体感していただきたいです。

(図)今秋に稼働するデモラインのCG動画の1コマ。展示会ではこのCG動画を初披露する。


ドライ加飾プロセスの開発経緯について

既存の顧客から、「ウェット塗装の改良ではカーボンニュートラルの実現が困難なので代替方法を探してほしい」という強い要望がありました。従来のウェット塗装は、重ね塗りの過程で液体塗装を噴霧して塗装し乾燥を繰り返しますが、この短い区間で車体を急加熱・急冷却し、大風量で水分を装置外へ排出する必要があるため、非常に大きなエネルギーが必要です。ウェット塗装に替わる技術を探索する上で、「自動車の塗装工程で世の中でないものを使おう」という方針の中で試行錯誤を繰り返した結果、ドライ加飾技術にたどり着きました。自動車のダッシュボードなど内装に使われていましたが、外板に採用した実績がありませんでした。実用化する上で多くの課題がありました。そのひとつがフィルムの貼付けです。従来のドライ加飾技術では凹凸のある複雑な立体形状に対しての貼り合わせが困難でしたが、3次元真空圧空成形工法を採用することで対応しました。また、このドライ加飾システムをインラインに対応するため装置を大幅に改良し、自動車生産のタクトにも対応しました。


カーボンニュートラルに貢献する自動車塗装システム

当社が手掛ける塗装工程は、顧客である自動車製造工程において最もエネルギーを使用します。そのため、顧客のカーボンニュートラルの実現に向けて大きなカギを握っているのが、塗装プロセスにおけるウェット塗装からドライ加飾への変革です。従来の塗装に比べて加工工場での直接排出部分で使用エネルギーの50%以上を削減できます。また、排水・排気処理装置も不要になります。今後は、アウトモールド貼合によるドライ加飾プロセスを用いた外装パーツ商材の段階的な市場導入からスタートし、フィルム加飾外装部品の拡大と大型外装部品への適応を実現しながら、2030年の自動車メーカー各社のカーボンニュートラルに対する削減目標へ貢献していきたいと考えています。

当社は脱炭素社会の実現に貢献するため、自動車外装のさらなる付加価値提供技術となるドライ加飾の技術開発を推進していきます。

【プロフィール】
浜中幸憲(はまなかたゆきのり)

 1981年4月入社。2010年4月に執行役員塗装システム事業部第一事業所長、2015年6月に取締役上席執行役員塗装システム事業部副事業部長兼営業技術統括部長を経て、2023年6月に取締役常務執行役員塗装システム事業部長に就任(現在)。

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