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ウォーターハンマーとは?
仕組みや防止するための対策方法を紹介
ウォーターハンマーは、配管内を流れる流体の圧力変動で衝撃が発生する現象で、配管の破損などのトラブルにつながることがあります。
工場の配管など様々なところでウォーターハンマーは発生しています。これが最も身近なウォーターハンマーは家庭の台所などにあるレバー式の水道栓を急に閉めると「コン!」と音がする現象です。
工場のウォーターハンマーは、事故やトラブルの防止だけでなく、エネルギー効率の改善によるコスト削減、環境負荷の低減の観点でも重要です。本記事では、ウォーターハンマーの概要、仕組み、対策方法を紹介します。
ウォーターハンマーとは
ウォーターハンマーはバルブの開閉、ポンプの急停止などで流速が急変した時に圧力の上昇・下降で衝撃が発生する現象のことで、水撃現象、水撃作用などとも呼ばれます。
身近なところでは家庭の水道管で発生する現象であり、給湯器、食器洗い機、洗濯機などから衝撃音が聞こえた場合、ウォーターハンマーが疑われます。
工場の配管でもウォーターハンマーが発生することがあり、配管の破損、配管の圧壊、振動や乱調、水漏れなどの問題を引き起こすことがあります。
工場のウォーターハンマー対策は、事故や故障を避けて安全に運用するためだけでなく、安定した運転で無駄なエネルギー消費を避け、コストの低減やCO2排出量の削減(脱炭素化)にも貢献するため重要です。
ウォーターハンマーの種類と発生する仕組み
ウォーターハンマーには圧力上昇によるものと水柱分離によるものの2種類があります。
圧力上昇によるウォーターハンマーは、バルブを閉める時などに圧力変動で衝撃が生じる現象です。圧力変動により配管が振動し、配管の固有振動と共振を起こすことで衝撃音が発生します。
一方、水柱分離によるウォーターハンマーは、ポンプを急停止させた場合などに急激な圧力低下で気層(または負圧)が生じる現象です。
ポンプが急停止すると、急停止の前に送り出された水が慣性で流れを保って進もうとするのに対し、ポンプ直後の水の流れは少なくなります。これにより水柱分離して気層が発生し、気層に向かって水柱同士が衝突して衝撃が発生します。
ウォーターハンマーによって起こる問題
ウォーターハンマーによって起こる問題としては、主に以下が挙げられます。
- 配管の破損・圧壊
- 圧力制御の乱調・センサーの異常
- 配管接続部からの水漏れ
- 衝撃音・振動による騒音
ウォーターハンマーが発生すると、衝撃による配管の破損、圧力低下によるへこみなどパイプラインにトラブルを引き起こす可能性があります。
また、圧力変化が圧力制御の乱調の原因になったり、振動がセンサー異常につながったりすることもあります。その他、衝撃音・振動は近隣との騒音トラブルの原因になり得ます。
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ウォーターハンマーの対策方法
工場のウォーターハンマー対策は、事故やトラブルの回避だけでなく、エネルギー効率の向上でCO2排出量を削減できれば脱炭素化にも貢献します。ウォーターハンマーの対策方法を見ていきましょう。
配管口径を変更する
配管口径を大きくすることで流速の変化を低減し、圧力変動を緩和できます。口径ごとの最大流量を確認し、実際の流量が最大流量を超えないものをサイズとして選択します。
フライホイールを取り付ける
フライホイールは、ポンプの回転軸に取り付ける慣性車輪とも呼ばれるものです。慣性エネルギーを付加してゆっくりと回転を落とすことで、ポンプの急停止が原因となる水柱分離によるウォーターハンマーへの対策です。
サージタンクを設置する
サージタンクは、配管の途中に設置する、貯水ができるタンクです。水柱分離が発生した際に水を供給して、水圧の低下を緩和します。水柱分離によるウォーターハンマーの衝撃を抑え、圧壊のリスクを低減可能です。
エア抜きバルブを取り付ける
エア抜きバルブを配管の高い位置に取り付けることで、水柱分離のウォーターハンマーを防止する効果があります。水柱分離が生じた時に空気を流入させることで、急激な水圧変化を抑制できます。
リリーフバルブを取り付ける
リリーフバルブは一定の圧力を超えると弁が開いて圧力を開放できるものです。ポンプの吐出側の配管に取り付けることで圧力調整の効果があり、圧力上昇によるウォーターハンマーを防止するために有効です。
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開催地域 |
開催場所 |
日程 |
東京 |
幕張メッセ |
2024年10月29日(火)~31日(木) |
大阪 |
インテックス大阪 |
2025年5月14日(水)~16日(金) |
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まとめ
ウォーターハンマーはバルブの開閉などで流速が急変した時に、圧力の上昇・下降で衝撃が発生する現象です。
配管の破損、圧壊などのリスクもあるため早急に対策が必要であり、対策方法としてはフライホイール、サージタンク、エア抜きバルブ、リリーフバルブなどの利用が挙げられます。
ウォーターハンマーの仕組みや対策方法を知って、大きなトラブルが発生する前に適切な対策を進めていきましょう。
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【監修者情報】
▶監修:近藤 元博(こんどう もとひろ)
肩書:愛知工業大学 総合技術研究所 教授
プロフィール:1987年トヨタ自動車に入社。生産工程から排出する廃棄物や、使用済み車両のリサイクルなど幅広い分野で廃棄物の排出削減、有効利用技術の開発導入と併せて分散型エネルギーシステム、高効率エネルギーシステムの開発、導入を推進「リサイクル技術開発本多賞」「化学工学会技術賞」他資源循環、エネルギーシステムに関する表彰受賞。2020年から現職。産学連携、地域連携を通じて資源問題、エネルギー問題に取組中。経済産業省総合資源エネルギー調査会 資源・燃料分科会 脱炭素燃料政策小委員会 委員他