高機能素材 Week
2025年11月12日(水)~14日(金)
幕張メッセ

MES(製造実行システム)とは?
機能や導入のメリット・注意点を解説

近年、工場の脱炭素化、デジタル化、品質の向上、多様化する製品への対応など幅広い要求からMES((Manufacturing Execution System:製造実行システム)が注目されています。

MESは工程管理やデータ収集をリアルタイムに行い、工程の見える化、製造の指示・支援を行うシステムです。MESの導入により、工程の無駄の削減、生産設備・人員の最適化などの実現が期待されます。さらに日本の強みでもある熟練技術者のノウハウ「匠の技術」をデータ化することも可能になります。

本記事では、MESの機能や種類、導入のメリット、注意点を解説します。

MES(製造実行システム)とは?  


MESは日本語では製造実行システムと呼ばれます。MESは、生産工程の在庫・進捗の管理、生産データの収集をリアルタイムに行い、製造工程の見える化、製造の指示・支援するシステムです。

MESは、生産計画の実行、製品の追跡、品質管理、在庫管理、作業指示の発行など、多岐にわたる機能を提供します。また、生産効率の最大化や資源の有効活用、廃棄物削減の観点でも重要な役割を果たし、工場としての環境負荷の低減や脱炭素化にも貢献します。


MESの種類

MESの種類としては、オンプレミス型とクラウド型の2種類があります。

オンプレミス型は、企業の内部サーバー上にMESのシステムをインストールして運用するもので、企業がハードウェアとソフトウェアの両方を所有して管理します。

オンプレミス型は企業のニーズに応じたカスタマイズがしやすく、データが企業内部に留まるため、セキュリティ性も期待できます。ただし、導入費用が高く、導入後はハードウェア・ソフトウェアの維持管理にも手間と費用がかかります。

一方、クラウド型はクラウドサービスとして提供されるもので、ベンダーが所有するサーバー上にあるシステムを利用します。

クラウド型は導入費用が抑えられる他、ベンダーが運用・保守するため、自社での運用・保守の手間と費用がかかりません。ただし、オンプレミス型のような柔軟なカスタマイズは難しく、セキュリティ性はベンダーに依るところが大きいです。


MESとERPの違い

ERPは、企業全体の従業員や設備、資金などの情報を一元管理し、資源配分の最適化や業務効率の向上を図るシステムです。MESが製造現場で利用されるのに対し、ERPは企業全体のものであり、財務、人事、調達、生産、販売など多岐にわたる業務を包括します。

ERPはMESの上位にあたるシステムであり、製造業ではこれらのシステムを連携させて全体のプロセスの最適化や効率化を行います。

MESが持つ11の機能  


米国のMES推進団体「MESA(Manufacturing Enterprise Solutions Association)」によりMESが持つ11の機能が定義されています。MESが持つ11の機能は、次のとおりです。

生産資源の配分・監視
(Resource Allocation & Status)

設備、資材、作業者などの生産資源を適切に配分し、それを監視して調整・管理する機能

作業のスケジューリング
(Operations/Detailed Scheduling)
生産計画をもとに、生産ラインでの詳細なスケジュールを作成する機能
製造指示
(Dispatching Production Units)
スケジュールをもとに適切な作業フローで作業者に指示を行う機能
作業者管理
(Labor Management)
作業者の状況を監視し、最適な割り当てをして管理する機能
仕様・文書管理
(Document Control)
図面や作業指示書、製造記録などの文書の作成や管理を行う機能
保守・保全管理
(Maintenance Management)
生産設備の保守・保全のスケジュールを作成し、計画的に実施するための機能
データ収集
(Data Collection & Acquisition)
生産設備、作業者、資源などの状況のデータをリアルタイムに収集する機能
品質管理
(Quality Management)
生産データをもとに製品の品質管理・品質異常の確認する機能
実績分析
(Performance Analysis)
蓄積された生産実績データを分析し、生産性を判断する機能
プロセス管理
(Process Management)
生産工程全体の状況を管理し、異常発生時にはアラートを通知する機能
製品追跡・体系管理
(Product Tracking & Genealogy)
仕掛品の状態や製品履歴の状況把握や次工程の管理を行う機能

実際の個別のMESは、必ずしも上記全ての機能を備えているわけではなく、いくつかの機能が利用可能です。自社の目的にあわせて必要な機能を備えたMESを見極めて導入することが大切です。

MESを導入するメリット  


ここからは、MESを導入する具体的なメリットを紹介します。MESを導入することで、コスト削減、生産性の向上をはじめ幅広いメリットが期待されます。


コストを削減できる

製造プロセス全体が見える化されることで無駄な工程やボトルネックが発見できれば、プロセス改善によりコスト削減が可能です。プロセス改善で省エネルギー化できれば、工場としての脱炭素化にもつながります。

また、製造プロセスの状態を把握することで早期に不良品や異常を発見しやすくなり、歩留まりの向上やダウンタイムの最小化も期待されます。


生産性を向上できる

MESでプロセスやリソース配分を最適化し、稼働率の向上や効率的なスケジューリングが実現できれば、生産性の向上につながります。

また、現場レベルでは、手書きやエクセルで管理している部分をMESに置き換えることで、管理業務が効率化でき、リアルタイムにデータを蓄積できます。


技能継承がしやすくなる

製造現場での知識やノウハウをMESのシステム上にデータとして残すことで、熟練技術者のノウハウ「匠の技術」の技能継承や熟練技術者の暗黙知(アナログ)をカバーしているので、新人教育がしやすくなります。

技能継承が円滑に進めば、熟練した作業者の経験・知識に頼りすぎることがなくなり、作業の属人化が解消されます。

MESに蓄積されたデータを誰でも簡単に利用できるようにすれば、短期間に人材育成が可能になり、詳細かつ共有可能な製造オペレーションのデータがあれば、工場間や工程間で、この情報を利用した支援システム(エキスパートシステム)を作ることができます。


部門間の連携を強化できる

製造の情報が、製造現場以外の部署に共有されることで、他部署でも製造現場の状況を数値で正確に把握しやすくなります。

製造現場で不良品が発生した際には、すみやかに品質管理部門や設計部門に情報共有でき、早期の原因解明につながります。また、販売部門と連携できれば、需要に応じた適正な生産計画や在庫管理が可能です。


トレーサビリティが実現できる

 

MESにより、工程の上流から下流に至るまで製造履歴をMES上で一元管理でき、製品のトレーサビリティが実現できます。不良品発生時にも製造履歴をさかのぼり、原因究明につなげることができます。

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MESを導入する際の注意点  


MESを導入する際の注意点も確認しておきましょう。導入目的の明確化、システムの運用体制の準備が特に確認しておきたい注意点です。


導入の目的は明確にする

現状の製造プロセスでどのような課題があり、それを解決するためにどのようにMESを活用するのか、導入前に明確にする必要があります。

生産性を向上させる、トレーサビリティを確保するなど導入目的を明確にし、導入自体を目的化させないことが重要です。


システムを運用できる体制を整える

MESは導入だけで効果を発揮することは難しく、MESを受け入れる体制を整え、適切に運用する必要があります。

事前の社内への周知の徹底、MESの運用知識を持つ人材の育成、システムのベンダーとの連携など、必要な準備を進めておくことでスムーズに運用を開始できます。

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下表に、開催地域・開催場所・日程をまとめました。

開催地域

開催場所

日程

東京

幕張メッセ

2024年10月29日(火)~31日(木)

大阪

インテックス大阪

2025年5月14日(水)~16日(金)

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まとめ


MESは工程管理やデータ収集をリアルタイムに行い、製造工程の見える化、製造の指示・支援するシステムで、スケジュール作成、資源の分配、プロセス管理、トレーサビリティの確保など幅広い機能が定義されています。

MESはコスト削減、生産性の向上など様々な目的に利用され、資源の最適化や工程の無駄の削減が実現できれば、工場としての脱炭素にもつながります。MESの機能やメリットを理解して導入の検討などに役立ててください。

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【監修者情報】

▶監修:近藤 元博(こんどう もとひろ)

肩書:愛知工業大学 総合技術研究所 教授

プロフィール:1987年トヨタ自動車に入社。生産工程から排出する廃棄物や、使用済み車両のリサイクルなど幅広い分野で廃棄物の排出削減、有効利用技術の開発導入と併せて分散型エネルギーシステム、高効率エネルギーシステムの開発、導入を推進「リサイクル技術開発本多賞」「化学工学会技術賞」他資源循環、エネルギーシステムに関する表彰受賞。2020年から現職。産学連携、地域連携を通じて資源問題、エネルギー問題に取組中。経済産業省総合資源エネルギー調査会 資源・燃料分科会 脱炭素燃料政策小委員会 委員他