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CO2(二酸化炭素)削減はなぜ必要?
実施方法や国内外の取り組みを紹介
CO2(二酸化炭素)削減は、地球環境を守るために全ての人が取り組むべき課題です。なぜCO2削減が必要なのか、どのように進めていくのか解説します。
CO2の削減は、特に製造業や素材産業で重要性が高い課題です。なぜ製造業、素材産業でのCO2削減が重要なのか、また、国内外でどのような取り組みを実施しているのかも紹介します。
CO2削減はなぜ必要なのか
地球に生物が暮らせるのは、CO2(二酸化炭素)やメタンなどの温室効果ガスのおかげです。温室効果ガスが地球から宇宙に逃げる熱をつかまえ、地球を快適な温度に保ちます。
しかし、温室効果ガスが増えすぎると、地球の温度が上昇し、温暖化と呼ばれる状態になります。地球温暖化が進むと、人間だけでなく多くの生き物にとって暮らしにくい環境が生まれます。
地球温暖化による環境の変化例
- 陸地の減少、砂漠化
- 生態系の変化
- 大雨・洪水・台風の増加
- 伝染病の増加
- 食糧難
温室効果ガスのなかでも、急激に増えているのがCO2です。CO2は主に化石燃料の燃焼により発生するガスで、化石燃料を燃やして電力をつくる時や自動車や飛行機などを稼働させる時、廃棄物を焼却する時などに大量に放出されます。
CO2排出量の約4割は産業由来
日本のエネルギー起源のCO2排出量※を見ると、産業部門が38%、業務その他部門が19%、運輸部門が19%と続きます。家庭でCO2削減に取り組むことも重要ですが、製造業をはじめとする産業部門が特にCO2削減に積極的に取り組むことが必要でしょう。
部門 |
電気・熱配分後のCO2排出量(割合) |
産業部門 |
3億7,300万トン(38%) |
業務その他部門 |
1億9,000万トン(19%) |
運輸部門 |
1億8,500万トン(19%) |
家庭部門 |
1億5,600万トン(16%) |
エネルギー転換部門 |
8,370万トン(8%) |
※発電および熱発生にともなうエネルギー起源のCO2排出量(2021年度)を、電力および熱の消費量に応じて部門ごとに配分
※出典:環境省「2021年度(令和3年度)温室効果ガス排出量(確報値)について」
産業部門によるCO2排出量の内訳は、以下をご覧ください。産業部門で排出されるCO2のうち、約93%が製造業由来です。また、そのなかでも鉄鋼業や化学工業などの素材産業由来のCO2量が多いことがわかります。
業種 |
産業部門エネルギー起源CO2排出量(割合※) |
鉄鋼業 |
1億4,500万トン(39%) |
化学工業 |
5,750万トン(15%) |
機械製造業 |
3,990万トン(11%) |
窯業・土石製品製造業 |
2,750万トン(7%) |
食品飲料製造業 |
2,000万トン(5%) |
パルプ・紙・紙加工品製造業 |
1,940万トン(5%) |
農林水産業 |
1,720万トン(5%) |
プラスチック・ゴム・革製品製造業 |
940万トン(3%) |
建設業 |
800万トン(2%) |
繊維工業 |
790万トン(2%) |
非製造業 |
2,640万トン(7%) |
※四捨五入により合計が100%にならないことがあります
※出典:環境省「2021年度(令和3年度)温室効果ガス排出量(確報値)について」
CO2排出量が変わらないとどうなるか
CO2の排出量が現状のままでも、地球温暖化は加速度的に進みます。CO2の排出量を削減しない場合、2070年には平均気温が7.5度上昇し、人類のうち1/3がサハラ砂漠と同程度の高温の場所で暮らすことになり、さらに人口の偏りが深刻化すると予測されます。
※出典:総合地球環境学研究所「温室効果ガスの排出がこのまま続けば50年以内に人類の3分の1が「住めないほどの」灼熱にさらされる」
美しく暮らしやすい地球を守るためにも、CO2排出量削減が必要です。CO2の排出量が多い製造業、そのなかでも特に多い素材産業では、脱炭素化への取り組みが不可欠です。
企業や工場の脱炭素化をより効率的に推進したい方には、燃料・製造プロセスから工場全体に至るまで、あらゆる脱炭素技術が一堂に集結する「素材工場の脱炭素化展」がおすすめです。脱炭素化に向けた様々な技術・情報・サービスが多数展示されるため、ぜひ足を運んでみてください。
CO2削減のプロセス
地球を守るためにも、国や自治体、企業、個人でCO2の排出削減に取り組む必要があります。CO2削減実施のプロセスは、以下をご覧ください。
- CO2排出量を把握する
- 省エネルギー対策を実施する
- 再生可能エネルギーの利用とCO2除去を実施する
順を追って解説します。
1.CO2排出量を把握する
まずは現状どの程度のCO2を排出しているか調べます。
なお、改正地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)により、2006年4月1日以降、温室効果ガスを多量に排出する特定排出者は、温室効果ガスの排出量を算定し、国への報告が義務付けられました。報告義務違反や虚偽の報告に対しては罰則があります。
特定排出者とは…
- 全ての事業所のエネルギー使用量合計が原油換算で年間1,500kl以上の事業者
- 省エネ法による特定貨物輸送・旅客輸送・航空輸送の事業者など
- 事業所全体で常時使用する従業員が21人以上、かつ温室効果ガスの排出量がCO2換算で3,000トン以上の事業者
CO2排出量を把握した後で、排出を削減する方法を検討します。例えば、無駄なエネルギーを削減したり、石油や石炭などの化石燃料由来の電力を使用せず、水素・アンモニアなどの脱炭素エネルギーの利用や、再エネ電力の利用検討など、自社で対応できることからはじめましょう。
株式会社 マクニカの「Kisense®」は、電力、ガス、水、CO2排出量など地域の様々なデータをリアルタイムに一元管理できます。運用コスト、電力使用量を大幅に削減し、再生可能エネルギーの自家発電、自家消費比率を高めることで、地域全体のエネルギー効率改善、CO2排出量削減に貢献します。
2.省エネルギー対策を実施する
使用電力量を減らすことでも、CO2の排出量を減らせます。例えば、社内照明をLEDに変更する、高効率ヒートポンプで排熱を回収する、使用電力の少ない設備・機器を使用するなどの省エネルギー対策に取り組みます。
株式会社 アピステの「ノンフロン・省エネ 精密空調機PAUシリーズ」の精密空調機は、局所空間の温湿度を精密にコントロールする空調機です。対象空間を「温度コントロール± 0.1°C」、「湿度コントロール± 0.5% RH」に制御することができます。
3.再生可能エネルギーの利用とCO2除去を実施する
再生可能エネルギーによる電力なら、発電過程で発生するCO2を大幅に削減可能です。太陽光発電、地熱発電、風力発電システムを導入し、自社である程度の電力を供給可能になれば、CO2の排出を抑えられるだけでなく、電気代の削減にもつながります。
また、CO2排出量を増やさないだけでなく、積極的に減らす取り組みも必要です。CO2除去の主な取り組みは、以下をご覧ください。
CO2除去の取り組み例
- 植林
- DACCS(大気中のCO2を直接回収して貯留する技術)の導入
- BECCS(バイオマス燃料使用時に排出されたCO2を回収し、地中に貯留する技術)の導入
CO2削減に向けた世界の取り組み
CO2の削減は全ての国が取り組むべき問題です。特にエネルギー使用量が多く、莫大なCO2を排出している先進国は、CO2削減に積極的に取り組み、社会的責任を果たすことが求められます。主な取り組みや近年の流れにを見ていきましょう。
【イギリス】低炭素燃料への転換
バランスの良い施策で、EUの目標(1990年比で2020年までに20%削減、2030年までに40%削減)を上回る温室効果ガス削減を実現しているイギリス。化石燃料は天然ガスなどの低炭素燃料を選択し、石炭の利用は2025年を目途に廃止を予定しています。
また、原子力などの非化石燃料の積極的な利用により、エネルギー供給の低炭素化が進展しました。特に注目したいのが、製造業などの産業部門の最終エネルギー消費の削減です。2016年には産業全体で33%(2000年比)ものエネルギー消費量が減少しています。
※出典:経済産業省資源エネルギー庁「「パリ協定」のもとで進む、世界の温室効果ガス削減の取り組み③ ~GHG削減が進展する英国」
【フランス】非化石電源が9割超
原子力発電や再生可能エネルギーによる電力が9割を超えているフランス。エネルギー消費効率は、産業部門・運輸部門ともにOECD(経済協力開発機構)の平均よりも高く、さらなるCO2削減には個人・家庭ベースの省エネルギー対策が必要です。
2018年に発表された中期エネルギー計画では、電気自動車などの低CO2排出車への税控除や、エネルギー効率を高める住宅リノベーションの支援施策が盛り込まれました。CO2排出量の削減だけでなく、地球温暖化や脱炭素化に対する個人の意識を変革する効果も期待できるでしょう。
※出典:経済産業省資源エネルギー庁「「パリ協定」のもとで進む、世界の温室効果ガス削減の取り組み③ ~GHG削減が進展する英国」
【ドイツ】石炭・原子力からの脱却
ドイツは従来、石炭への依存が大きいことから、石炭は2038年を目途に廃止を目指し、大幅なCO2排出量の削減に取り組んでいます。また、再生可能エネルギーの利用も増えていますが、製造業が国を支えているため、化石燃料による電力が減りにくい点が課題です。
また、産業部門・家庭部門では最終エネルギー消費量はやや減少していますが、運輸部門での消費が増加し、新たな課題となっています。この原因は、1990年の東西ドイツ統一以降、旧東側の産業設備が急速に近代化したことなどが挙げられています。
※出典:経済産業省資源エネルギー庁「「パリ協定」のもとで進む、世界の温室効果ガス削減の取り組み⑦ ~原子力と石炭火力からの脱却を図るドイツ」
CO2削減に向けて日本が取り組んでいること
日本もCO2排出量の削減を目指した取り組みを国単位・自治体単位で取り組んでいます。主な事例を紹介します。
FIT制度による再生可能エネルギーの普及
2012年に始まったFIT制度(固定価格買取制度)により、太陽光発電システムは急激に普及しています。再エネの比率を示した「電源構成比」では、2011年度は10.4%でしたが、2022年度には21.7%に上昇しました。
電気自動車の普及によるCO2削減
国は2035年までには新車販売の100%を電気自動車にすると目標を掲げ、多彩な施策を実施してきました。
電気自動車を購入する際に活用できる補助金制度(CEV補助金)もそのひとつです。また、充電ステーションの整備やアフターサービスの充実なども、電気自動車の購入を後押ししています。
CO2削減に向けて取り組む上で注意すべきこと
CO2排出量の削減は、企業単位、家庭単位、個人単位で取り組むべき課題です。まずはCO2排出量を正確に把握し、具体的な削減目標を定めましょう。
節電や省エネルギー対策につながる設備を導入する際には、国や自治体の補助金制度もチェックしてみてください。補助を受けることで、コストを抑えつつCO2排出量削減が実現可能です。
「素材工場の脱炭素化展」でCO2削減対策のヒントを得よう
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CO2の排出を削減するための具体的な技術を知るためにも、ぜひご来場ください。
下表に、開催地域・開催場所・日程をまとめました。
開催地域 |
開催場所 |
日程 |
東京 |
幕張メッセ |
2024年10月29日(火)~31日(木) |
大阪 |
インテックス大阪 |
2025年5月14日(水)~16日(金) |
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まとめ
地球を守り、次世代につなぐためにも、一人ひとりがCO2削減に取り組む必要があります。
また、特にCO2の排出量が多い素材生産に関わるメーカーは、企業の社会的責任を果たすためにも、CO2削減に積極的に取り組む必要があります。他社の取り組みや技術も参考に、地球温暖化対策を実施していきましょう。
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【監修者情報】
▶監修:近藤 元博(こんどう もとひろ)
肩書:愛知工業大学 総合技術研究所 教授
プロフィール:1987年トヨタ自動車に入社。生産工程から排出する廃棄物や、使用済み車両のリサイクルなど幅広い分野で廃棄物の排出削減、有効利用技術の開発導入と併せて分散型エネルギーシステム、高効率エネルギーシステムの開発、導入を推進「リサイクル技術開発本多賞」「化学工学会技術賞」他資源循環、エネルギーシステムに関する表彰受賞。2020年から現職。産学連携、地域連携を通じて資源問題、エネルギー問題に取組中。経済産業省総合資源エネルギー調査会 資源・燃料分科会 脱炭素燃料政策小委員会 委員他