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なぜ注目される?異種材料接合の成功事例と産業応用の実態
はじめに
ものづくりの現場では、異種材料接合技術が新たな可能性を切り開いています。従来は困難だった異なる素材同士の接合を、強固かつ安定的に実現するために、さまざまな工法や材料開発が世界中で進められています。自動車、エレクトロニクス、航空宇宙など幅広い産業分野で異種材料接合は活用されており、軽量化や高性能化、さらには環境負荷低減にも貢献しています。
本記事では、なぜ今「くっつかないもの」をくっつけることが重要なのか、その背景や注目点を整理します。さらに、異種材料接合の具体的な成功事例や産業応用、将来的な展開についても紹介します。
【展示会情報】
<名古屋展>会期:2027年2月17日(水)~19日(金)会場:ポートメッセなごや
<大阪展> 会期:2026年5月13日(水)~15日(金)会場:インテックス大阪
<東京展> 会期:2026年9月30日(水)~10月2日(金)会場:幕張メッセ
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異種材料接合が注目される理由
自動車などの輸送機器では、より軽い部材を組み合わせて燃費を向上させるため、多様な素材を組み合わせる設計が一般的となりました。しかし、素材ごとに異なる熱膨張率や導電性の差を克服するには、従来の溶接技術だけでは対応しきれない場合も多くあります。
こうした複雑な条件を乗り越えるため、異種材料接合に関する研究・開発が活発化しています。
例えば、鉄鋼とアルミニウムの組み合わせでは、物理的・熱的特性の不一致から、単純な溶接では十分な接合強度が得られないケースが報告されています(参照*1)。
また、セラミックスは脆さが目立ち、熱膨張率の違いが構造破壊につながりやすいという課題もあります。
東京大学の研究グループは、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)セラミックスに通電処理を施すことで、硬度を維持したまま弾性率を最大約30%低下させ、材料を柔軟にする現象を発見しました。これにより、異種材料接合時の熱破壊耐性が向上し、セラミックス部品の長期使用性が期待されています(参照*2)。
このような課題を克服する技術が求められる中、異種材料接合は「いかに異なる材料同士の界面に強固な結合を生むか」を追求する重要分野となっています。
くっつかない材料の課題
異種材料を接合するうえで、まず直面するのが物性差によるミスマッチです。特に熱膨張率が大きく異なる場合、加熱や冷却の過程で局所的な応力が生じ、ひび割れや歪み、材料破壊を引き起こすリスクが高まります。
自動車分野で採用される高強度鋼とアルミニウムの組み合わせは、軽量化には有用ですが、鋼が硬くアルミニウムが柔らかいため、溶接条件の微調整を誤ると接合部が脆化しやすいことが知られています。
ある研究では、高強度鋼の強度に比べアルミニウム側の熱伝導特性が大きいため、急速な熱拡散が生じやすく、均一な接合が難しいと指摘されています(参照*1)。
さらに、セラミックスと金属の接合でも、表面構造や界面反応の複雑さが課題となります。高温領域で双方がどのような化学作用を示すかを正確に把握する必要があり、使用環境ごとに耐久性や疲労寿命の考慮も欠かせません。
特にセラミックスは脆く、微小なクラックが生じやすいという問題がありました。東京大学の研究では、YSZセラミックスに炉内温度600°C、電流密度400 mA/mm²で10分間通電処理を行い、弾性率を最大約30%低下させることで柔軟性を獲得し、異種材料接合の耐久性向上につながる可能性が示されています(参照*2)。
このように、物性差を埋めるための精密な制御が必要であり、加熱や冷却だけでなく電気的影響も組み合わせることで、望ましい接合状態を実現できると期待されています。
異種材料接合がもたらす仕組み
では一体、異種材料接合は、どのようなメカニズムで行われているのでしょうか。
ポイントとなるのは、従来の溶接だけにこだわらず、適切な接着剤や機械的固定といった代替的な接合方法を活用することです。溶接の場合、材料ごとの溶融温度や溶融特性の違いが障壁になりますが、接着剤を併用することで、接合前の表面処理が簡略化されるケースも報告されています(参照*3)。
具体的には、接合面に形成される界面層や拡散領域で、どれだけ材料の性質を調和させられるかが決め手となります。たとえば、抵抗スポット溶接(RSW)にパルス加熱技術を組み合わせることで、金属間の熱伝導を精密に制御し、極端な熱応力が生じるのを防ぐことができます。
また、溶融プール(溶けて流動する部分)が表面にまんべんなく行き渡るよう調整することで、微細な空隙を抑え、強固な接合が可能になると考えられています。(参照*4)(参照*5)(参照*6)。
成功事例に見る異種材料接合のポイント
異種材料接合の実績は多岐にわたりますが、ここでは自動車業界とエレクトロニクス分野の事例に注目し、成功の要因を探ります。多材料を組み合わせる際の基礎となる界面設計や、軽量性と強度を両立させる工夫など、実例から学べる点は多くあります。
重要なのは、単に技術的に接合できるだけでなく、量産化に耐えうる加工プロセスやコスト管理、品質保証まで含めて最適化されているかどうかです。加熱や表面改質の条件設定、工程スピードとの両立といった要素もまた、重要です。
自動車業界の実例
自動車の軽量化を目指し、アルミニウムやマグネシウムなどの材料活用が進んでいます。これらと鋼材を組み合わせる技術の向上は、燃費削減と機動性の向上という二重のメリットをもたらしてきました。
代表的な接合法として、抵抗スポット溶接(RSW)の改良形があり、パルス制御を用いて熱の分散を調整する手法が導入されています(参照*7)。これにより、異なる熱膨張係数を持つ材料が局所的に加熱されすぎることを防ぎ、不均一な溶融から生じる不具合のリスクを下げることができます。
代表的な成功事例として、ホンダが2013年型アコードで実用化した摩擦撹拌接合(FSW)技術があります。この技術では、アルミニウムと鋼を連続的に接合することで、世界で初めて量産車のフレーム構造部品に適用されました。従来の鋼製サブフレームと比較して25%の軽量化を達成し、溶接工程での電力消費も約50%削減されています。さらに、サスペンション取付点の剛性が20%向上するなど、軽量化と性能向上の両立を実現しました(参照*8)。
エレクトロニクス分野の事例
エレクトロニクス分野では、基板や半導体チップなど多様な材料の組み合わせが進み、小型化・高性能化に伴い接合技術の高度化が求められています。特にセラミックス基板は強度と耐熱性を活かして電子部品の高密度実装に利用されますが、脆さへの配慮も必要です。
東京大学と東ソー株式会社が開発した高強度ジルコニアセラミックスは、しなやかさを備え、微細組織を制御することで脆さを大幅に克服しています(参照*9)。この材料の登場により、より自由度の高い基板設計や異種材料間の接合幅の拡大が期待されています。
また、微細加工技術や表面改質を組み合わせた新たな接合手段も開発されています。神奈川大学の研究では、集光型微細レーザ加工やカラーレーザマーキング、レーザクラッディング法などを活用し、金属ガラス表面の改質や接合性向上を図っています。これらの技術は、デバイスの高性能化と信頼性確保の両立に寄与しています(参照*10)。
産業応用の実態と今後の可能性
ここでは、量産化が進む事例や今後の応用シーンを整理します。異なる材料を大量生産する場合、品質の安定やコスト管理が課題となりますが、技術開発の進展によってさらなる付加価値創出が期待されています。
異種材料接合による多材料設計は、環境保護の観点からも注目されています。製品の軽量化が進めば、製造から輸送、利用時までのエネルギー消費や排出ガス削減に寄与します。特に輸送機器分野では、使用年数が長く消費エネルギーが大きいため、各国の研究機関や企業が積極的に取り組んでいます。
量産化とコストメリット
異種材料接合を量産規模で導入する際に注目されるのが、生産性向上とコスト削減です。信越化学工業株式会社とOKI(沖電気工業)は、GaN(窒化ガリウム)の機能層を独自技術で剥離し、別の基板へ接合する技術開発に成功しました(参照*11)。このプロセスの確立により、半導体製造の工数削減や歩留まり向上、製造コストの低減が実現しています。
また、異種材料接合を前提とした軽量化は、製品輸送コストの削減や環境負荷の低減にもつながります。機械的接合技術の進歩によって、高強度化と多材料化を同時に実現する動きが広がっています(参照*12)。一方で、接合部に生じやすい応力集中や延性の低下をどう抑えるかが、高精度量産のポイントです。工程管理や迅速な検査体制の構築も重要であり、信頼性を確保しながら製品化速度を上げる取り組みが進んでいます。
将来展望
今後は新素材や複合材料の開発が進み、異種材料接合技術もさらに進化していくと考えられます。英国原子力庁(UKAEA)とCommonwealth Fusion Systems(CFS)が共同主催した「Fusion Manufacturing Challenge」では、トカマク型核融合装置の商用化に向けて、タングステン、ベリリウム、フェライト系マルテンサイト鋼、ステンレス鋼、銅合金といった異種材料の接合技術が募集されました。
特に、熱膨張係数の大きく異なる材料同士を高真空環境下で安全に接合する技術が求められており、極限環境での信頼性確保が課題となっています(参照*13)。
また、温度や電気的特性を精密に制御する研究が進めば、接合不良のリスクを低減し、より複雑な組み合わせでも実用レベルに引き上げることが期待されます。設計段階から材料の性質を包括的に考慮した多材料アセンブリの最適化が今後の課題であり、こうした総合的アプローチが進めば、自動車、航空宇宙、医療機器など多様な領域への適用拡大が見込まれます。
おわりに
異種材料接合は、軽量化による燃費改善や環境負荷の低減だけでなく、製品の信頼性向上や素材の組み合わせ自由度の拡大にも寄与しています。自動車やエレクトロニクスなどの製造現場で実用化が進み、今後も異なる特性を引き出す技術が求められるでしょう。
材料の特性を正確に見極め、複数の工法を組み合わせることで、かつては不可能だった接合が次々と実現されています。現場のニーズに合わせた最適設計が、今後も社会の発展に大きく貢献すると考えられます。さまざまな事例から得られた知見を活用し、新しい価値創造へ向けた取り組みが加速していくことが期待されます。
参照
● (*1) AHSS Guidelines – Joining Dissimilar Materials
● (*2) 柔軟なセラミックスを創り出すことに成功 ―異種材料接合などへの応用可能性―
● (*3) Joining metal to metal without welding: Top 2 alternatives
● (*4) 大阪大学接合科学研究所 – 異種材料接合技術
● (*5) 日本溶接協会 – 異種金属の溶接
● (*6) ScienceDirect – Dissimilar metal joining
● (*7) AHSS Guidelines – Joining Dissimilar Materials Archives
● (*8) Honda Develops New Technology to Weld Together Steel and Aluminum
● (*9) しなやかで強いセラミックスの開発に成功 ―金属に匹敵する高い靭性を実現―
● (*10) 神奈川大学 寺島研究室
● (*11) プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMES – OKI、信越化学のQST基板上でGaNの剥離/接合技術を開発
● (*12) Mechanical joining of high-strength multi-material systems − trends and innovations
● (*13) TechConnect – 2023 Fusion Manufacturing Challenge
