ケミカルリサイクルとは?メリット・課題やプラスチックリサイクルの手法を解説

近年、CO2(二酸化炭素)削減や環境負荷の低減を目指した取り組みの一環として、プラスチックリサイクルが注目を集めています。

そのなかでも、ケミカルリサイクルは廃プラスチックを化学的に処理して原料として再利用可能なリサイクル方法として重要な役割を果たしています。

【展示会情報】

リサイクル テック ジャパン -リサイクルの革新技術・エコシステム構築展-

<大阪展>会期:2025年5月14日(水)~16日(金)会場:インテックス大阪

<東京展>会期:2025年11月12日(水)~14日(金)会場:幕張メッセ      

ケミカルリサイクルとは?


ケミカルリサイクルは、廃プラスチックに化学的に処理して、油のように炭化水素やガスなどに分解、再度プラスチックや化学原料として再利用するリサイクル方法です。

例えば、使用済みペットボトルを原料に戻してペットボトルとして再利用する「原料・モノマー化技術」をはじめ、ケミカルリサイクルには様々な手法があります。

ケミカルリサイクルは、他のプラスチックリサイクルと同様に天然資源の有効活用につながる他、異物や汚れがあるプラスチックも再利用でき、この点は後述するマテリアルリサイクルと比較して大きなメリットです。

プラスチックリサイクルの3つの種類

プラスチックリサイクルの方法は大きく以下の3種類です。ケミカルリサイクルの他に、マテリアルリサイクル、サーマルリサイクルなどの方法があります。

リサイクルの種類

概要

マテリアルリサイクル

廃プラスチックをプラスチックのまま再利用して、新しいプラスチックをつくるリサイクル方法

ケミカルリサイクル

廃プラスチックを化学的に処理して、化学原料に分解、再利用するリサイクル方法

サーマルリサイクル

廃プラスチックを燃やした時に発生する熱エネルギーを再利用するリサイクル方法

マテリアルリサイクルは、廃プラスチックをプラスチックのまま再利用して、新しいプラスチックをつくる方法です。粉砕、洗浄、乾燥の工程を経て、フレークやペレットとしてプラスチックの原料が生み出されます。

一方、サーマルリサイクルは、廃プラスチックを燃やして熱エネルギーとして再利用するリサイクル方法です。分別の工程がなく低コストな点がメリットです。

ケミカルリサイクルの手法


ケミカルリサイクルの手法としては、具体的には以下が挙げられます。ケミカルリサイクルのそれぞれの手法を詳しく見ていきましょう。

  • 原料・モノマー化技術
  • 高炉原料化技術
  • コークス炉化学原料化技術
  • ガス化技術(化学原料化技術)

原料・モノマー化技術

廃プラスチックを化学的に処理して、元の原料やモノマーまで分解した上で、新たなプラスチックとして再利用する技術です。

使用済みペットボトルを再度PET樹脂にして、ペットボトルとして再利用するために原料・モノマー化技術が使われています。

高炉原料化技術

製鉄所で鉄鉱石から鉄を取り出す際に、廃プラスチックをコークスの代わりに高炉で利用する技術です。

廃プラスチックも炭素と水素からできているため、鉄鉱石から酸素を取り除いて鉄をつくる時の還元剤として、コークスの代わりに廃プラスチックが利用できます。

コークス炉化学原料化技術

空気を遮断して廃プラスチックを蒸し焼きにしてコークスを生成する技術です。石炭を蒸し焼きにした場合と同様に、廃プラスチックを蒸し焼きにすることで、コークス、炭化水素油、コークス炉ガスが生成されます。

生成されたコークスは、製鉄所の高炉の還元剤や燃料として活用されます。廃プラスチックからコークスを生成することで、天然資源である原料炭の使用量を削減できます。

ガス化技術(化学原料化技術)

プラスチックを分解して水素や一酸化炭素の合成ガスを生成し、水素、メタノール、アンモニア、酢酸などの化学原料としてリサイクルする技術です。

低温ガス化炉と高温ガス化炉を組み合わせて廃プラスチックをガス化することで、化学原料のもととなる合成ガスを生成しています。ぜひケミカルリサイクルの4つの手法を押さえておきましょう。

なお、ケミカルリサイクルを含めリサイクル技術を発信するなら「リサイクルテック ジャパン」がおすすめです。リサイクルテック ジャパンは、様々なパートナーとのエコシステム実現に向けたリサイクル技術の展示会です。

ケミカルリサイクルのメリット


ケミカルリサイクルのメリットを見ていきましょう。CO2の削減、資源の有効活用、異物や汚れがあるプラスチックもリサイクル可能なことなどがメリットとして挙げられます。

CO2排出量を削減できる

ケミカルリサイクルには様々な手法がありますが、日本容器包装リサイクル協会「プラスチック製容器包装再商品化手法に関する環境負荷等の検討」によると、総合的にはマテリアルリサイクルよりもCO2削減に優れていると報告されています。

ケミカルリサイクルの処理ではそれなりのエネルギー消費が必要ですが、それを上回るCO2の削減効果も期待できます。

資源を有効活用できる

ケミカルリサイクルにより、廃プラスチックを分解して、水素、メタノール、アンモニア、酢酸などとして再利用が可能です。これらの原料を得るために使用していた天然資源を節約でき、他の用途へ有効活用できます。

異物や汚れがあるプラスチックもリサイクルしやすい

ケミカルリサイクルでは化学的な処理をして廃プラスチックを分解するため、異種類のプラスチックや異物・汚れがあるプラスチックにも対応できます。マテリアルリサイクルでは異種類のプラスチックや異物・汚れがあると再利用が難しい場合がありますが、ケミカルリサイクルであれば再利用が可能です。

プラスチックリサイクルの課題


一般社団法人 プラスチック循環利用協会「2022年 プラスチック製品の生産・廃棄・再資源化・処理処分の状況」によると、各リサイクル方法による廃プラスチックの有効利用量はそれぞれ以下のとおりです。

リサイクルの種類

有効利用量

マテリアルリサイクル

180万トン

ケミカルリサイクル

28万トン

サーマルリサイクル

510万トン

有効利用量の合計

717万トン

出典:一般社団法人 プラスチック循環利用協会「2022年 プラスチック製品の生産・廃棄・再資源化・処理処分の状況」

プラスチックリサイクルのうち、サーマルリサイクルが70%以上を占め、ケミカルリサイクルはわずか4%程度に留まります。

サーマルリサイクルは、資源としての再利用ではないため、国際的にはリサイクルとは認められていません。

また、難燃剤が添加されたプラスチックの燃焼の際にダイオキシンなどの有害物質が発生する可能性があります。

マテリアルリサイクルは、異種類のプラスチックや異物・汚れがあるプラスチックを選別・洗浄する前処理技術の確立や、低コスト化により再利用の拡大が可能です。

ケミカルリサイクルは、設備投資のために大規模な施設を利用することになるため、設備投資に多額の費用が必要です。運用コストも高額であり、費用の面は普及に向けた課題のひとつです。

リサイクル技術の最前線を知るなら「リサイクルテック ジャパン」へ!


日本最大級の高機能素材 Week内で「リサイクルテック ジャパン」が新規開催されます。

リサイクルテック ジャパンは、リサイクルの技術革新、材料、メーカー、物流、小売、産廃事業者、自治体など様々なパートナーとのエコシステムの実現に向けた展示会です。

展示会には、大手化学、金属リサイクル材料、CFRPリサイクル材料、プラスチックリサイクル材料、鉄スクラップリサイクルなどの分野のリサイクル材料メーカーや大手材料メーカーが来場します。

リサイクルプロジェクト、リサイクル支援、マテリアルリサイクル設備、ケミカルリサイクル設備などの製品・技術を、有力リサイクラーに向けて直販することが可能です。

下表に、開催地域・開催場所・日程をまとめました。

【展示会情報】

リサイクル テック ジャパン -リサイクルの革新技術・エコシステム構築展-

<大阪展>会期:2025年5月14日(水)~16日(金)会場:インテックス大阪

<東京展>会期:2025年11月12日(水)~14日(金)会場:幕張メッセ      


【来場希望の方】

5月大阪展への入場には 事前に来場登録が必要です!

VIP来場登録は課長職以上の方限定

※カンファレンスの聴講には別途お申込みが必要です。こちらからお申込みください>
※こちらの来場登録で5/14~16にインテックス大阪内で開催するすべての展示会に入場が可能です。

【出展検討の方】

簡単1分で資料請求できます!

出展検討用パンフレット、
出展料金、会場レイアウトなど

リサイクルに取り組んで脱炭素化の実現に貢献


リサイクルをすれば、単にゴミとして処分するよりもCO2などの排出量が抑制され、脱炭素化の実現に貢献できます。

「リサイクルテック ジャパン」では、リサイクルに関する技術・支援サービスが多数出展されるので、ご来場の上、情報を収集してはいかがでしょうか。また、リサイクルに関する技術・支援サービスを開発・提供している企業の場合は、ぜひ出展をご検討ください。

関連情報


でリスト: 日付
鉄のリサイクルはどう行われるのか?何度も再利用可能な理由とともに紹介 鉄は何度もリサイクル可能な材料です。そのため、リサイクル方法が確立しており、盛んにリサイクルが行われています。また、鉄のリサイクルは消費エネルギーやCO2排出量削減にもつながるものです。鉄のリサイクルのプロセスやメリットなど、この記事で紹介します。
鉄スクラップの基礎知識|種類・等級・価格相場などを紹介 鉄をリサイクルする際の原料である鉄スクラップは、いくつかの種類、等級があります。また、取引する市場が形成されており、価格相場も存在します。こうした背景から、年間数千万トンの鉄スクラップ需給があり、日本からの輸出も行われています。この記事では、鉄スクラップについて取り上げます。
金属リサイクルはどのように行われるのか?プロセスと企業・製品を紹介 さまざまな材料で行われるリサイクルですが、金属でもリサイクルは行われています。回収から再生までのリサイクルのプロセス、金属をリサイクルするメリットやデメリット、リサイクルの実例などをこの記事で取り上げます。
金属スクラップが発生し再生するまで|プロセスと業者、製品の実例を紹介 金属スクラップは、さまざまな種類の金属の廃棄物です。廃棄物ではありますが、再び金属製品として使われるよう、リサイクルの原料となるのが金属スクラップです。金属スクラップの種類や価格相場、製品の例について、この記事で紹介します。
自動車リサイクルの事例、取り組み例は?3つの視点から紹介 自動車のリサイクルにはどのような事例があるのでしょうか。主にリサイクル料金を用いたリサイクル、業界団体や個々のメーカーの研究開発によって生まれたリサイクルの事例があります。この記事ではそれらの自動車リサイクルの事例を紹介します。
自動車のリサイクルとは?法律によって定められていること、関係者の役割を紹介 日本は自動車リサイクル法と関係者の努力により、高いリサイクル率を誇る国です。では、どのように自動車のリサイクルは行われているのでしょうか。本記事では、自動車リサイクル法が想定する「関係者」、リサイクルの流れ、自動車リサイクルでのニーズを取り上げます。