バッテリーの廃棄とリサイクルの方法は?
EV含むリチウムイオン電池と鉛電池について
持続可能な社会をつくっていくため、充電と放電を繰り返せるバッテリーにこれまで以上の注目が集まっています。電気自動車(EV)のような環境に優しい車はもちろん、従来と比べ大きな容量を持つバッテリーもあるためスマートグリッドに利用するという構想もあります。
こうした背景から、バッテリーに対し多額の投資がされている一面も。一方、バッテリーそのものだけでなく、バッテリーの廃棄やリサイクルはどう行っていくべきか、との課題があります。廃棄は環境整備がされつつもまだ十分とはいえず、リサイクルはバッテリーの素材をできるだけ無駄なく再利用するには、さらなる技術革新が必要という状況です。
こうしたバッテリーの廃棄やリサイクルについて、取り上げます。
バッテリーはルールを守って廃棄しなきゃダメ!
その理由とは?
この記事では、EVや家電などに使われるリチウムイオン電池、エンジン車の鉛電池のリサイクルについて取り上げていきます。これらのバッテリーは、部分的に廃棄の方法がいまだ整備されていない場合もあります。
だからといって、ルールから外れた廃棄をしてはなりません。特に、どこかへ使用済みバッテリーを置き去りにするような不法投棄は、もってのほかです。
反対に、ルールを守った廃棄をすることで、バッテリーに使われる資源を再利用できます。また、その他にもルールを守るべき理由があります。見ていきましょう。
バッテリーには希少価値のある材料が含まれているから
先ほども少し触れたように、EVや家電に使われる充放電可能なバッテリーは、リチウムイオン電池がほとんどです。リチウムイオン電池に使われているリチウムやコバルトといった材料は、レアメタルに該当します。
希少価値が高いだけでなく、国際情勢の状況によって産出国が輸出を止めてしまうこともあります。
そのため、きちんと回収することが望ましいのです。
危険だから
リチウムイオン電池は、発火することがあります。時折、「スマートフォンが発火した」という報道がありますが、その多くはリチウムイオン電池から火が出たものです。
また、鉛電池も硫酸など人体に悪影響を及ぼしかねない材料が使われています。
こうした危険性から、リチウムイオン電池や鉛電池は業者に処理を依頼するなど適正な廃棄をする必要があるのです。廃棄の他、ユーザーが分解をするなども危険なので、やめましょう。
法律に抵触するから
バッテリーに限らず、廃棄物を指定の場所に出さないなどルールを破った廃棄の仕方は、法律で禁じられています。先ほども少し触れたように、廃棄方法が分からないからと、どこかにバッテリーを置き去りにしてはいけません。
EVのリチウムイオン電池は自動車リサイクル法により適切な処理とリサイクルについて定められており、鉛電池も廃棄物処理法などで同様の定めがあります。また、EV以外のリチウムイオン電池も資源有効利用促進法などで廃棄方法や回収、リサイクルについて規定されています。
これらは、バッテリーのメーカーなどがリサイクルの義務を負うものです。
では、一般消費者が廃棄方法について無関係かというと、そうではありません。やはり、法律やそれに基づくメーカーなどの要請に沿って、廃棄をすることが求められます。
また、あらゆるものの廃棄に関する基本的なルールとして、廃棄物の処理及び清掃に関する法律の第16条には、「何人も、みだりに廃棄物を捨ててはならない」と明記されています。何度か触れた廃棄物を置き去りにしてはいけないということも、この条文に抵触します。
なお、車の鉛電池は、他のごみのように自治体が回収するものではありません。必ず、業者に依頼する必要があります。
EVバッテリーの廃棄方法|日本国内での2つの事例
EVそのものが普及期ということもあり、EV用のリチウムイオン電池の廃棄も、方法が模索されている段階です。しかし、少しずつ環境整備が進められています。ここでは、2つの方法を取り上げます。
なお、どちらの方法も廃車から出たバッテリーや劣化したバッテリーを廃棄、回収するものです。その前のプロセスでは、法律に則った廃車の手続きをする、ディーラーなどでバッテリー交換してもらうことが必要となります。
EVのリチウムイオン電池は大きく発火の可能性もあるものなので、専門業者以外の個人や企業が交換や回収を行うことは、困難です。
LiB共同回収システム
LiB共同回収システムは、一般社団法人自動車再資源化協力機構(JARP)が行っている、リチウムイオン電池の回収、処理の制度です。LiBとは、リチウム(Li)イオンとバッテリー(B。電池)を指します。またJARPは、国内の自動車メーカーと日本自動車輸入組合で構成する、自動車リサイクルのための組織です。
このシステムでリチウムイオン電池を回収する流れを、見てみましょう。
リチウムイオン電池の排出事業者が廃棄したい電池が発生すると、JARPに回収依頼を出します。排出事業者は、バッテリー交換を行うディーラーや、廃車業者などが該当します。
JARPは運搬会社に排出事業者から処理施設へ電池を運ぶよう、委託。処理施設にもJARPから処理の委託を行い、廃棄するリチウムイオン電池を適正に処理する流れです。
JARPから委託される処理施設は、全国に12カ所あります。
そのうち2カ所の施設の親会社であるDOWAエコシステム株式会社は、回収された電池が再利用するまでの流れを、次のように説明 します。
まず熱処理により不活性化した上で、破砕。その時に出る素材を選別します。最後に、金属資源回収となります。最後の金属資源回収は、コバルト、マンガン、ニッケル、リチウムという比較的、希少性の高い素材を回収する工程です。それまでのプロセスでも、アルミニウム、鉄、銅といった素材を回収します。
DOWAエコシステム株式会社は、2025年11月に開催するリサイクルテック ジャパン(リサイクルの技術革新・エコシステム構築展)に出展します。展示会では新製品・技術の発見や具体的な事例などを知ることができます。
フォーアールエナジー
フォーアールエナジー株式会社は、日産自動車株式会社と住友商事株式会社の合弁企業です。「フォーアール」とは、リチウムイオン電池の最製品化(Refabricate)、再販売(Resell)、リサイクル(Recycle)、再利用(Reuse)の4つのRから始まる事業を行っていることを表します。
具体的には、EVのリチウムイオン電池を蓄電池などとして再利用する取り組みを進めています。
鉛電池の廃棄方法|市中で回収
エンジン車などのバッテリーに使われる鉛電池は、ごみとして自治体に回収してもらうことはできません。鉛電池を回収するのは、カー用品店、ガソリンスタンド、リサイクル業者、ホームセンター、廃車買取業者などが挙げられます。
鉛電池を回収する業者は、有料で回収する場合も無料で回収する場合もあります。また、廃バッテリーを買い取ってもらえる場合もあります。
こちらも繰り返しとなりますが、鉛電池を自分で分解するなどは危険であるので、絶対にやめましょう。電池に含まれる硫酸によって失明するなどの危険があるからです。
一方、バッテリー交換を自分で行う人もいます。しかし、鉛電池は相応の重さがあるものなので、交換や取り出しにはこの点で体を壊してしまう危険があります。おすすめできる方法ではありません。
なお、業者で回収された鉛電池は、鉛を取り出し、精錬し直した上で、再利用します。
モバイルバッテリーなど
その他のリチウムイオン電池の廃棄方法
EV以外のモバイルバッテリーやスマートフォン、携帯ゲーム機などに使われているバッテリーの廃棄方法も、見てみましょう。
これらのバッテリーもEVと同じ、リチウムイオン電池です。もちろん大きさは、EVのバッテリーよりかなり小さくなります。
リチウムイオン電池は発火することがあり、実際にリチウムイオン電池を原因とした火災は起こっています。また、廃棄するリチウムイオン電池が一般的なごみと一緒に捨てられてしまうことで、収集車や廃棄物処理施設で火災が発生するケースも見られるようになりました。
こうした事態を受け、東京都は「リチウムイオン電池 混ぜて捨てちゃダメ!」というプロジェクト、キャンペーンを行っています。プロジェクト名は、リチウムイオン電池を可燃ごみや不燃ごみなどと一緒に捨ててはいけないことを指すものです。
では、どのようにすればよいのでしょうか。東京都のプロジェクトで、廃棄の方法を紹介しています。
一般消費者がリチウムイオン電池を廃棄する場合、小型充電式電池やモバイルバッテリーは一般社団法人JBRCが行う回収へ、携帯電話やスマートフォンはモバイル・リサイクル・ネットワークが行う回収へ、ゲーム機やコンパクトカメラなどの小型家電は一般社団法人小型家電リサイクル協会の回収へ、加熱式たばこは一般社団法人日本たばこ協会の回収へ出す方法があります。
これらは、組織そのものが行っている場合もありますが、一般的には関係する店舗や協力関係にある自治体などで行っているケースが多々あります。一方、その組織に加入していないメーカーの製品は回収してもらえないことも。この場合は、自治体に廃棄方法を相談するのが、方法の一つとなります。
以上のリチウムイオン電池のリサイクル方法は、EVのものとさほど変わりません。リチウムなどを取り出し、素材として再利用します。
バッテリーリサイクルの課題
バッテリーのリサイクルで特に課題となっているのが、EVも含むリチウムイオン電池のリサイクルについて。リチウムイオン電池を分解し、素材を再利用する技術は、まだ発展途上です。
ここまで取り上げてきたように、レアアースをはじめとした一部の素材は再利用できていますが、リチウムイオン電池を構成するほとんどの素材を水平リサイクルすることは、研究開発の段階です。
また、リチウムイオン電池は発火の危険があるため、安全を確保できる場所を用意したり分解すると時間がかかったりしてしまう点も課題となっています。さらに、場所や時間の確保が必要になると、その分のコストもかかってしまいます。
こうした課題から、素材の多くをリサイクルできつつ、コストもできるだけ抑えられるリチウムイオン電池の再生技術が求められるでしょう。
一方、EV以外の車で使われる鉛電池は、リサイクル方法が確立しています。電池メーカーなどが一般社団法人鉛電池再資源化協会へ必要経費を拠出。これを元に回収、解体、精錬が行われています。リサイクル率は9割を超えています。
バッテリーのリサイクルへの取り組み
実際の企業の事例から
バッテリーのリサイクルには、乗り越えるべき課題があることを、ここまでを読んでご理解いただけたかと思います。しかし、その解決へ向けリサイクルに取り組むさまざまな企業が存在します。リサイクルテックジャパン、高機能素材Week 出展社の中から具体的な製品を見てみましょう。
DOWAエコシステム 株式会社|リチウムイオンバッテリーのリサイクル技術
DOWAグループでは、秋田県と岡山県にリチウムイオンバッテリー(以下、LIB)のリサイクル施設を保有しています。リサイクル施設は大型のLIBを放電及び解体せずにそのまま焼成炉へ投入して熱処理する事が可能で、熱処理前の放電・解体工程における感電・火災のリスクを排除できることを特徴としています。 熱処理は比較的高い温度を採用しており、外装に用いられるアルミは溶融分離され、回収されます。 資源回収工程では、鉄、銅などを分離した後に破砕・選別を行い、鉄・銅・ブラックマス(レアメタル含有)を回収しています。 また、ブラックマスに含まれるレアメタルを濃縮し、製錬工程を挟むことなく、電池材料を製造するダイレクトリサイクルに関する研究を実施しております。その結果、車載用LIBと同等の性能を有するリサイクル電池材料の製造に成功しました。
2025年11月開催 リサイクルテックジャパンに出展します。詳細はこちら
リチウムイオン電池のケースからリサイクルしたABSペレット|有限会社マー・ファクトリ|
有限会社マー・ファクトリーの電池リサイクルを見てみましょう。
同社では、中国のリチウムイオン電池のケースからリサイクルしたABSペレットを製造しています。通常、PCR由来の原料はABSのみ分別したとしても、様々な物性のABSが混ざるためひと手間加えないと物性が不安定です。 しかし、今回展示のABSはバッテリーのみという単一商品でのリサイクルペレットのため、非常に安定した品質です。また、基本7kj/㎡のアイゾットは14kj/㎡までの範囲で調整して納品可能です。 さらには、安定した供給が可能です。 同じく中国の鉛電池からリサイクルしたPPペレットといった樹脂素材の再生品を製造しています。これは、再生プラスチックの原料となるものです。
まとめ|ルールを守ったバッテリーの廃棄を
バッテリーの中には希少な素材が含まれている場合があります。こうした背景もあり、バッテリーの廃棄は法律での規制が存在。廃棄する際は業者に依頼するなど、ルールに則らなければなりません。
廃棄を行う業者は実際に市中で活動しており、またバッテリーリサイクルの技術をさらに進化させようと取り組む企業もあります。
リサイクルテック ジャパンでも、バッテリーリサイクルのイノベーションのヒントとなる展示が見つけられるはずです。また、実際に技術をお持ちの企業は、ぜひ出展をご検討ください。
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