工場を持たずにプラスチックを再生する理由とは?
リサイクルテック ジャパンに出展するリサイクラー、パンテック
2025年5月に大阪展が開かれ、11月には幕張メッセでの東京展が開催予定の展示会「リサイクルテック ジャパン」。来場予定の方、出展を検討されている方にどのような展示会になるかイメージしてもらうべく、アドバイザリー・セミナー講師・出展社にインタビューした。
今回は、出展社である株式会社パンテック 経営企画室の矢野拓慎氏に、同社のデータに重きを置きトレーサビリティも可能なプラスチックリサイクルについてうかがう。
【写真】パンテック 経営企画室の矢野拓慎氏
顧客に適したリサイクルのために採った事業モデルとは?
パンテックは1996年、設立。当初よりプラスチックリサイクルを手がけている。
「本社は滋賀県の大津市に、同じ滋賀県栗東市に再生プラスチックの物性の検査が可能な設備があるサーキュラーデザインセンターがあります。この他、営業の拠点を東京、福岡、ベトナムに設けています。一方、リサイクル工場は有しておりません。パンテックは、工場を持たない『ファブレス』で事業展開する会社です。」(矢野氏。以下、断りない限り同)
ファブレスというと、半導体業界でよく見られる事業モデルだ。たとえば、現在のAIの隆盛で脚光を浴びるNVIDIAもファブレスの企業である。NVIDIAはチップの設計を行い、実物をつくるのは台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング・カンパニー(TSMC)などのファウンドリ企業が行う。
そしてパンテックの事業も、リサイクルスキームの全体像やどのような再生プラスチックをつくるかを同社が企画し、半導体業界でいうファウンドリにあたるリサイクル工場が回収品の再資源化、コンパウンドを行う仕組みだ。
なぜ、こうした方法を採るのか。
「理由の一つは、ファブレスでリサイクルをした方が豊富な種類のプラスチックを扱え、さらにトレーサビリティを確保しやすいと私たちが考えているからです。プラスチックは金属などと異なり、種類が豊富です。樹脂の種類や形状などによって適切なリサイクル方法も加工に必要な設備も異なります。もしここで、マテリアルリサイクルかケミカルリサイクルの工場を持ってしまうと、対象とする素材が自社の工場でリサイクルできるものに限定してしまうことになります。そうするとお客様に幅広い種類やグレードの再生プラスチックの供給ができず、高い価値を提供できなくなってしまうケースも考えられます。またプラスチックのリサイクルは、回収、破砕・粉砕、再生プラスチックの製造・コンパウンド、再生品の製造というように工程が長く、プロセス毎に売買が生じる産業構造のため、リサイクルスキーム全体を俯瞰することが困難です。そうなると、コンプライアンスやトレーサビリティーの面で、情報の切れ目ができてしまいます。そこで、リサイクルの各工程は高い技術力を持つ企業、工場へお任せし、ファブレスの企業である私たちはリサイクルスキームの構築とサプライチェーンマネジメントに徹することで、質が高くお客様へ価値を提供できるサーキュラーデザインに注力しているのです。」
リサイクルテック ジャパンは需要家、排出企業との出会いの場に
ファブレスとともにパンテックの特徴的な点が、データを重視していることだ。
「30年にわたる事業活動を通じて収集した日本国内の再生プラスチックに関する独自のデータベースを構築しており、PET、PP、PE、PS、複合材などの樹脂別に、どこにどれだけの潜在量があるのかを把握しています。現在、当社のデータベースには、55万トン分のデータが蓄積されており、そのデータ量は日々、増加し続けています」
こうした詳細なデータは、顧客が再生プラスチックを欲しいときにはそれがどれくらいなら安定供給することができるかが分かり、また顧客やリサイクラーが新たに設備を導入する際にも投資判断の重要な参考数値となる。
そして、先ほどのファブレスでのリサイクル事業によりトレーサビリティーや品質の維持向上を実現。また、パンテックはアイテム数や取扱量が日本最大級であることを訴求しており、こうした環境で顧客の求める再生プラスチックをつくり上げていく。
【写真】パンテックの再生プラスチック原料
「欧州では、自動車に使われる再生プラスチックの利用割合を数値で規定する方向に進んでいるなど、世界的にプラスチックのリサイクルがこれまでよりも求められるようになっています。自動車業界では、高品質な再生プラスチックが求められることになり、すでに各社がニーズに合う再生プラスチックの調達に向けた動きを加速しています。私たちのサーキュラーデザインセンターは、あらゆるプラスチックのサンプルと検査・測定機器を備えています。これらを活用しつつ、独自データベースや全国に広がるネットワークを生かして、お客様が求める再生プラスチックの試作や検証、品質管理に取り組み、各業界への再生プラスチックの供給実績も着実に増えてきています。また、すでにお伝えしたように、リサイクルスキームの全体に関与することで、トレーサビリティー面で情報の切れ目が生じません。特に、再生プラスチックの調達が急務となっている自動車メーカーやTier1に位置する自動車部品メーカーはトレーサビリティーを担保したまま安定供給を受けられるかの不安を持たれていますので、この点でのソリューションになれます。」
【写真】パンテックのサーキュラーデザインセンター
リサイクルテック ジャパンでも、こうしたデータベース、アイテム、調達やコンパウンドといった対応、トレーサビリティについて、紹介していくという。
「再生プラスチックの需要家の方々、そしてプラスチックを排出する企業の方々と出会う機会にしたい」と、矢野氏は展示会へ向けた思いを述べた。
リサイクルテック ジャパンには、リサイクル機械・設備、再生材料、リサイクラー、コンサルタント、DX技術などが出展し、同じようにリサイクルへの志を持った企業や団体が集結する。併催するセミナーでは、「資源循環の最前線」や「Car to Carの取り組み」「プラスチック、電池、太陽光パネルのリサイクル」「ケミカルリサイクルの社会実装」など多数の講演が無料で聴講できる。リサイクルの技術革新を促進するとともに、材料メーカー、物流、小売、リサイクラー、産廃事業者、自治体など様々なパートナーとの絶好の出会いの場となる「リサイクルテック ジャパン」へ、ぜひ来場・出展をご検討いただきたい。
【出展検討の方】
簡単1分で資料請求できます!
出展検討用パンフレット、
出展料金、会場レイアウトなど
