リサイクルの事業化は1社単独ではなく『オープンイノベーション』で
大栄環境・瀧屋直樹氏に聞く、日本のプラスチックリサイクルの現在地
2025年11月に幕張メッセで開催するリサイクルの展示会「リサイクルテック ジャパン」。
今回は、アドバイザリーである大栄環境株式会社に属し、そのグループ企業である資源循環システムズ取締役の瀧屋直樹氏に話をうかがう。リサイクルの中でも話題に上ることが多いプラスチックの再生と、新たな展開をしていく企業に何が求められるかを聞いた。
大きな目標は静脈産業のメジャー化
瀧屋氏は、若い頃から環境に関連する仕事に就きたかったという。そのため、最初のキャリアは東京都に就職し、都だけでなく環境省や経済産業省にも出向しながら資源循環関連の業務に携わっている。
そして、冒頭で触れた通り、現在は大栄環境グループの資源環境システムズ取締役という立場だ。
行政における資源循環関連の仕事も、ルールづくりや適正な事業・業務が行われているかのチェックなど、非常に重要なものだが身を転じたその理由は、
「この世界では頻繁に聞く話ですが、欧米と比べて日本の資源循環産業、とりわけ静脈産業は非常に規模が小さい。中小企業中心の業界というのが日本の特徴です。行政としても、日本の静脈産業を『メジャー化』することを施策に掲げています。こうした業界の構造改革に熱を注ぎたいという思いを自分自身が持っていたので、転職に踏み切ったのです。」(瀧屋氏。以下、断りない限り同)
大栄環境に入社し、そして2020年の設立時から創業メンバー、取締役として資源環境システムズの事業の中心にいる、瀧屋氏。資源環境システムズは、静脈産業のデジタルトランスフォーメーション(DX)とプラスチックリサイクルのトータルコーディネートが事業の柱だ。
瀧屋氏は現在、進んでいるビジネスの事例を教えてくれた。
「一つは、ゼネコンの鹿島の建設現場で出る廃プラスチックを回収し、建設資材であるリサイクルバリケードへ再生。再び、建設現場に戻すものです。回収後のプラスチックの選別や再生後の原料をつくるための前処理を大栄環境グループが担い、再生原料や再生品の製造はプラスチック成形メーカーの八木熊が担っています。もう一つ、自動車業界関連のプラスチックリサイクルの事例もあります。『XtoCar(エックストゥカー)プロジェクト』と名付けたものです。廃車の部材から再び車の材料とするリサイクルを『Car to Car』と呼びますが、X to Carは車以外の廃プラスチックを再生させるもの。家庭由来の容器包装プラスチックなどからの再生を目指しています。こちらも大栄環境グループや八木熊、そしてニフコ、BIPROGYとともに進めています。これらのプロジェクトで、資源環境システムズは動静脈企業や産官学の橋渡しとしてプラスチックリサイクルのトータルコーディネートをしています。」
建設現場のプラスチックリサイクルで、製造中のリサイクルバリケード(左)とそれが現場に置かれた模様
なお、XtoCarプロジェクトは公益財団法人自動車リサイクル高度化財団の公募事業である。瀧屋氏は、公募事業としてのプロジェクト終了後を、すでに見据えている。
「3年後には、公募事業ではなく自分たちの事業として進めていくことになります。大栄環境グループとしてXtoCarの量産体制が築け、安定して自動車産業に再生材を供給することが実現できるように取り組んでいるところです。」
瀧屋氏が目指す環境事業の「メジャー化」を実現するには、企業が確実に収益を上げられることが大前提となる。事業単体で収益を上げるだけでなく、他の事業と連携したり会社全体の協力を得たりという方法もあることが、以上のコメントから理解できる。
リサイクルへの熱意をカタチにするための原動力は?
瀧屋氏は、リサイクル産業のメジャー化に必要な別の要素も教えてくれた。それは、標準化や規制への対応だ。
「欧州では、自動車に使われるプラスチックのうち再生プラスチックが利用される比率の数値義務を定める方向で、議論が進んでいます。また、規制化学物質の管理などもルール化されると考えられます。そうなると、欧州へ出荷する際、どのような検査が必要であるか、製造時もどのようなルールを設けるべきかを検討していかなければならないでしょう。この動きを踏まえ、日本を含むその他の国や地域でも、同様のルールが設けられる可能性は高いといえます。こうした標準化、規制への対応をどうすべきか、様々なステークホルダーと議論しているところです。」
こうした取り組みはプラスチックリサイクルに限らず、金属や紙、バイオ燃料など、さまざまな分野のリサイクル・環境事業に求められそうだ。
今回の話から、日本の循環産業のメジャー化は決して楽な道のりではないと分かった。しかし、私たちが現在暮らす環境そのものを次世代へ残していくためには、メジャー化が手段の一つとなる。しかも、スピーディーに進めていくことが求められるだろう。
前述のように、大栄環境はリサイクルテック ジャパンのアドバイザリーを務める。では、展示会だけでなく日本のリサイクル全体を俯瞰したとき、瀧屋氏は何を提言するのか。特に、企業に求められることは何か。
「まず、熱意とフットワークの軽さが必ず求められます。ただし、1人だけ、1社だけでリサイクルにおけるゼロからイチへの創造をしようとしても、それはなかなか難しい。複数社が、コンソーシアム、コミュニティなどの形で、熱意とフットワークを持って取り組んでいった場合に、ゼロからイチをつくり出せるケースが多いと感じます。各社の置かれた状況や思惑は横に置いた上で、志や方向性を合致させるために繰り返し議論し、協調領域と競争領域を意識することで事業としてのリサイクルがうまくいくことになると考えています。そういった意味で、リサイクルは技術面のみならず仕組みづくりや標準化、法令対応の面でもオープンイノベーションが必要な分野なのです。」
リサイクルテック ジャパンには、リサイクル機械・設備、再生材料、リサイクラー、コンサルタント、DX技術などが出展し、同じようにリサイクルへの志を持った企業や団体が集結する。併催するセミナーでは、「資源循環の最前線」や「Car to Carの取り組み」「プラスチック、電池、太陽光パネルのリサイクル」「ケミカルリサイクルの社会実装」など多数の講演が無料で聴講できる。リサイクルの技術革新を促進するとともに、材料メーカー、物流、小売、リサイクラー、産廃事業者、自治体など様々なパートナーとの絶好の出会いの場となる「リサイクルテック ジャパン」へ、ぜひ来場・出展をご検討いただきたい。
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