アップサイクルとは?リサイクル・リメイクとの違いやアイデア・取り組み事例を紹介
地球温暖化問題が深刻化する昨今、素材業界など、様々な業界で脱炭素化への取り組みが求められています。近年、脱炭素化を実現するための手法として、「アップサイクル」が注目されていることをご存じでしょうか。
本記事では、アップサイクルの意味・定義や歴史、リサイクル・リメイクとの違いを詳しく解説します。また、アップサイクルに取り組むことで個々の企業が享受できるメリットやアップサイクルの課題、具体的なアイデア・取り組み事例も紹介します。脱炭素化や廃棄物の再利用に関連した業務に携わっている方は、ぜひ参考にしてください。
アップサイクルの意味・定義
アップサイクルとは、本来であれば廃棄されるはずの製品・素材に新たな価値を付与し(元の状態よりも価値を高めて)、利用・販売する行為です。創造的再利用(クリエイティブ・リユース)とも呼ばれます。
なお、「再生紙を製造・販売する」「服などを雑巾に加工する」など、元の状態よりも品質や価値が低下した状態で再利用する行為は「ダウンサイクル」 と呼ばれます。
アップサイクルの歴史
アップサイクル(upcycle)という単語は、建築家へのインタビュー記事(『サルヴォ・マンスリー(SALVO MONTHLY)』紙1994年11月号に掲載)ではじめて用いられたとされています(※)。
その後、世界中でアップサイクルに取り組む個人・企業・団体が増加し、日本では東日本大震災後に広まりました。2019年には特定非営利活動法人日本エコロジーアップサイクル協会が設立され、企業などに講師を派遣したり、ノウハウを学べる動画を公開したりしています。
アメリカでは、2021年6月に「アップサイクル食品認証」(廃棄される原材料を使用し、一定の基準を満たして作られたアップサイクル食品を認証する制度)が開始 されました。※出典:セイ シウ博士論文「近現代日本におけるアップサイクルの理念と実践」
アップサイクルとリサイクル・リメイクの違い
アップサイクルに似た単語に、「リサイクル」や「リメイク」があります。リサイクルとは、使用済みの製品を回収し、分解したり、部品・素材ごとに仕分けたりして、原材料(資源)として再利用する行為です。リメイクとは、廃棄される予定の製品・素材を加工し、別の製品に作り替える行為で、元の状態よりも価値が高まるとは限りません。
アップサイクルでは、元の素材を極力そのまま活かします。この点が、分解して原材料に戻すリサイクルとの違いです。また、アップサイクルは、元の状態よりも必ず価値が高まる点が、リメイクと異なります 。
RX Japanが主催する展示会「リサイクルテック ジャパン」では、アップサイクルに関連したサービス・ソリューション・プロダクトが多数展示されます。素材業界でアップサイクルに取り組んでいる方は、ご来場の上、最新情報を収集してはいかがでしょうか。
アップサイクルのメリット
アップサイクルに取り組むと脱炭素化に貢献でき、SDGsの達成につながります。また、企業のイメージが向上する点もメリットです。それぞれに関して詳しく説明します。
脱炭素化に貢献でき、SDGsの達成につながる
アップサイクルを実施(廃棄されるはずだった製品・素材を再利用)すれば、新たに生産する製品の量が減り、製造工程で排出される二酸化炭素を抑制できることから脱炭素化に貢献できます。
SDGs(持続可能な開発目標)には「持続可能な消費生産形態の確保」や「気候変動対策」が含まれており、アップサイクルの取り組みはSDGsを達成する上で重要 です。
企業のイメージが向上する
企業イメージの向上につながる点も、アップサイクルに取り組むメリットです。「資源の有効利用」、「地球温暖化問題の解決」という人類全体にとってのメリットだけではなく、個々の企業もメリットを享受できるため、積極的に取り組みましょう。
近年、「グリーンコンシューマー(環境に配慮された商品・サービスを選択的に購入する消費者)」が増加中です。環境への負荷が小さいアップサイクル商品を販売すれば、自社ブランドのイメージが向上し、グリーンコンシューマーを自社の顧客として取り込めるかもしれません。
また、「ESG経営」の観点からも、アップサイクルへの取り組みは重要です。ESG経営とは、Environment(環境)・Social(社会)・Governance(企業統治)の3要素に配慮した経営です。
近年、ESG経営を実践しているかどうかを考慮して投資先を選定する「ESG投資」と呼ばれる投資スタイルが広まっています。投資先に選定してもらうために、アップサイクルに取り組んだ上で、そのことをアピール してはいかがでしょうか。
アップサイクルの課題
アップサイクルは、まだ黎明期でもありこれに関与する人員・時間・資金が不足していることが課題として挙げられます。1社だけでアップサイクルに取り組んでも、持続的に利益を出すことは困難です。また、アップサイクルでは、資源となる廃棄物の供給を安定的に受けられなければ、事業として成立しません。
素材・製造・包装・小売など、様々な企業とアライアンスを組み、連携して推進するべきです。また、廃棄物の取引をマッチングするプラットフォーム(詳細は後述)も活用して、効率的にアップサイクルに取り組みましょう 。
アップサイクルのアイデア・取り組み事例
近年、素材産業などでアップサイクルへの取り組みが加速しています。以下、アップサイクルのアイデアをお探しの方に向けて、取り組みの具体例を6つ紹介します。
アップサイクルに関する事例①マッチングプラットフォーム
Team & AMA RE(チーム・アンド・アマリ)は、端材を「素材」として事業者同士で取引するためのプラットフォーム「アップサイクリンク(Upcyclink)」を開発しました。
アップサイクルの課題として、廃棄物の供給を安定的に受けにくいことが挙げられますが、「アップサイクリンク(Upcyclink)」を活用すれば、廃棄物を取引しやすくなるでしょう。
なお、Team & AMA REは、大分県3Rアイデアコンテストでグランプリを受賞した大山直美氏が代表を務めており、将来的には消費者も参加できる仕組みを構築する計画があります 。
参考:J-Net21[中小企業ビジネス支援サイト]「第4回:未使用から未来使用へ アップサイクルプロジェクトを推進「Team & AMA RE」」
アップサイクルに関する事例②廃漁網を糸・布・鞄などに加工
一般社団法人ALLIANCE FOR THE BLUEでは、業界横断的に多種多様な企業(合計36社)を結び、北海道の漁師から廃漁網を回収しています。
回収した廃漁網は糸・布・鞄などに加工してアップサイクルプロダクトとして販売し、慈善活動としてではなく、収益を上げながら海洋ゴミの削減 に取り組んでいます。
アップサイクルに関する事例③解体された空き家の古木を活用
⽇本の伝統的な⼯法で建築された古⺠家には、現在では⼊⼿が困難な樹種や⼤きさの構造材(古木)が使われている場合があります。古木とは、戦前に建てられた築80年以上の古民家の解体から発生した木材(柱・梁・桁・板)です。
株式会社⼭翠舎では、解体された空き家の古木を廃棄するのではなく、新たな価値を付加して家具や内装に活用しています。なお、虫食いや水漏れがないことを確認した上で、保管状態が良く、入手経路(古民家が建てられた年代・場所など)が明確な古木を使用 しています。
参考:山翠舎
アップサイクルに関する事例④廃棄された紙・間伐材を糸に加工
ReNewStyle株式会社では、使用後の紙パッケージや森林の手入れから発生する未利用の間伐材を「糸」に加工し、「TSUMUGI」というブランド名で販売しています。紙から作られた糸は、軽量で柔らかく、やさしい手触りが特長です。また、吸湿性にも優れています。
なお、1社のみで実施しているのではなく、一般社団法人アップサイクルなど、様々な団体・企業がプロジェクトに関与 しています。
アップサイクルに関する事例⑤バガスや麻袋を有効活用
豊通マテックス株式会社では、タイの製糖工場で発生した「バガス」(サトウキビを原料とした製糖工程で発生する副産物・残渣)を、物流資材などに加工 しています。
また、世界各国からコーヒー生豆を輸入する際に使用され、国内で年間3,000トン以上が廃棄される「麻袋」のアップサイクルに取り組んでいることも、同社の特長です。具体的には、土木用シートやコースター紙などへ加工 しています。
アップサイクルに関する事例⑥抽出済みのコーヒー粉を活用
オー・ジー 株式会社では、コーヒーグラウンズ(抽出後に残ったコーヒー粉)の植物性油抽出物を主成分とする害虫忌避剤「アニンセンCAF-UP」を開発しました。
アニンセンCAF-UPは、本来、廃棄されるはずの食品残渣に新たな価値が付与されたアップサイクルプロダクトです。人体への安全性が高く、繊維一般(不織布やフィルター)・樹脂練込み品・フィルムコーティング・塗料などに使用できます。ゴキブリ・アリ・蚊・ヨトウムシ・ナメクジといった害虫に加えて、猫など多種多様な生物に対する忌避効果を期待できます 。
アップサイクルに役立つソリューションは「リサイクルテック ジャパン」で
RX Japanが主催する展示会「リサイクルテック ジャパン」では、アップサイクルに役立つソリューション・サービス・プロダクトが多数展示されます。
素材業界でアップサイクルに取り組んでいる方や、これから取り組む予定の方は、ご来場の上、最新の情報を収集してはいかがでしょうか。また、アップサイクルに役立つソリューション・サービス・プロダクトを提供する企業の場合は、新規顧客開拓のために、ぜひ出展をご検討ください。
下表に、開催地域・開催場所・日程をまとめました。
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アップサイクルに取り組んで利益を確保しながら脱炭素化を実現!
アップサイクルとは、元の製品・素材に新たな価値を付加して、利用・販売する行為(創造的再利用)です。慈善活動としてではなく、利益を確保しながら脱炭素化に貢献できます。1社だけでは廃棄物の安定的な入手が困難なため、他社と連携しながらアップサイクルに取り組みましょう 。
RX Japanが主催する展示会「リサイクルテック ジャパン」では、アップサイクルに役立つソリューション・サービス・プロダクトが多数展示されます。
素材業界でアップサイクルに取り組んでいる方や、これから取り組む予定の方は、ご来場の上、最新の情報を収集してはいかがでしょうか。また、アップサイクルに役立つソリューション・サービス・プロダクトを提供する企業の場合は、新規顧客開拓のために、ぜひ出展をご検討ください。