金属スクラップが発生し再生するまで プロセスと業者、
製品の実例を紹介

金属は、さまざまな材料の中でも特にリサイクルしやすいものとなっています。溶解させることで、リサイクル前と同じような製品がつくれるためです。また、リサイクル後の製品も建物や機械の材料として需要があり、こちらも金属のリサイクルを後押しするものとなっています。さらに、リサイクルに回す使用済みの金属も比較的高い価値があるものです。

こうした廃棄物に当たる金属のことを「金属スクラップ」と呼びます。金属には、鉄やアルミニウムなどさまざまな種類がありますが、そのほぼすべてがリサイクル可能です。

では、金属スクラップの回収や再生はどのように、誰によって行われるのでしょうか。見ていきましょう。

【展示会情報】

リサイクル テック ジャパン -リサイクルの革新技術・エコシステム構築展-

<東京展>会期:2026年9月30日(水)~10月2日(金)会場:幕張メッセ      

<大阪展>会期:2026年5月13日(水)~15日(金)会場:インテックス大阪


金属スクラップとは|「金属」「スクラップ」それぞれの意味

 「金属スクラップ」とは、使用済みの金属、廃棄物となっている金属のことです。金属のほとんどはリサイクルが可能ですが、リサイクルをする際の原料が金属スクラップになります。 

以下に該当するものが、金属と呼ばれます。 

  • 金属光沢がある 
  • 熱や電気を伝えられる 
  • 強度が大きい、折れにくい 
  • 箔や延べた形にできる 
  • 金属元素(Fe=鉄、Au=金など)、もしくはそれらの合金である 

学術的な定義まで正確には分からないとしても、固く頑丈なもの、電気を伝えられるもの、というのは多くの人がイメージするところでしょう。 

一方、英和辞典でscrap(スクラップ)を引くと、「切れ端、断片」や「廃棄物、くず」という意味が書かれていました。 

よって金属スクラップは、金属の廃棄物、との意味になります。 

冒頭でも述べた通り、金属スクラップはそのまま金属としてリサイクルできる原料になるため、廃棄物とはいえ金銭的な価値を有します。そして、金属スクラップの流通市場も形成されています。 


どのような金属がスクラップになるのか?代表例5種類

先ほど、金属の意味を取り上げたとき、さまざまな種類があるのではないかと思った人もいるでしょう。その通りで、金属は鉄や金、銀などさまざまな種類があり、そのほぼすべてがリサイクル可能です。

代表的な金属、金属スクラップにはどのようなものがあるのか、ここで取り上げます。なお、金属はリサイクルしても品質がほぼ劣化しないため、リサイクル後もリサイクル前と同じ製品にできる場合もあれば、異なる製品になる場合もあります。

金属の中でもとりわけ代表的な存在が、鉄といえるでしょう。頑丈でありながら加工性に優れ、また安価であるため、自動車やさまざまな機械、建造物に使われます。

日本では年間3000万トン足らず鉄スクラップが発生しており、ほぼすべてが廃棄されることなく再利用されています。また、原料として見たときの鉄スクラップの、ほぼすべてが国内自給している状態です。資源に乏しいといわれる日本にとって、貴重な存在といえるでしょう。

一方、日本で発生する鉄スクラップは良質であると評価されており、年間数百万トンが輸出されています。輸入される鉄スクラップが年間数万トンであることを考えると、いかに国際的なニーズがあるかがわかります。

鉄の利用先が機械や建造物であるのと同様、鉄スクラップの回収先は廃車や廃棄された機械、取り壊した建造物などです。

ステンレス

ステンレスはさびにくい特徴があるため、建造物や機械の意匠などで特に利用が目立つ材料です。もちろん、スクラップとしての需要も高くなっています。ステンレス協会によると、生産されるステンレスの6割にリサイクル材が使われています。

先ほど紹介した意匠的な利用のほかにも、ステンレスには機械部品や食器などさまざまな用途があるため、回収先も多岐にわたります。回収後、分別や精錬が行われ、再び見た目の美しいステンレスとしてよみがえります。

アルミニウム

アルミニウムといえば、アルミ缶を思い浮かべる人もいるのではないでしょうか。日本アルミニウム協会による統計では、アルミニウムのスクラップの回収先も缶が最も多くなっています。アルミ缶に描かれたリサイクルマークを見たことのある人もいるでしょう。

缶のほか、サッシ・ドア、自動車などからも回収されます。

2023年の回収量は130万トンほどですが、今後、この数字は増えていくと見られており、2050年には180万トン近くになると見られています。

銅は電線や電気を使う機器の部品として使われる材料であるため、現代社会において非常に重要な物質です。そのため、リサイクルして大切に使っていくことが求められます。

日本伸銅協会によると、国内にあるほぼすべての銅がスクラップとしてリサイクルされています。

レアメタル・レアアース

地球から採掘される資源の中でも、とりわけ産出量が少ないのがレアメタルやレアアースです。チタンやニッケル、ネオジムなどがあります。

希少価値が非常に高いため、レアメタル・レアアースは強くリサイクルが求められる材料です。また、産出される場所が限られているケースもあり、輸入に依存しないためにもリサイクルは有効な手段です。

レアメタルやレアアースが使われた機械などから、回収されます。


金属スクラップのリサイクルの流れと関連する業者

金属スクラップが発生し、回収され、そして再利用されるまでのプロセスは、どの金属でもさほど変わりません。廃棄された金属が再び利用するまでどのような道のりをたどるか、さらにスクラップの流通に携わる業者を見てみましょう。

金属スクラップの発生から再利用まで

まず、金属スクラップが発生してから再利用されるまでを箇条書きにしてみましょう。

  1. 発生
  2. スクラップ業者の買い取り
  3. 回収・選別・加工
  4. 原料としてメーカーへ売却、輸出
  5. 再利用が難しい場合は埋め立て

ここまでも触れたように、金属スクラップの発生場所はさまざまです。廃棄された機械や取り壊される建造物などが代表的であり、また工場で金属の端材が発生する場合もあります。

こうしたスクラップの多くは、専門のスクラップ業者が買い取ります。そして、選別や加工が行われます。

スクラップ業者の手によって取引しやすい形になったスクラップは、材料メーカーが購入します。製鉄所やその他の金属をつくるメーカーのことです。また、一部は輸出される場合もあります。

メーカーの手によって再び材料となった金属は、さらなる加工などを経て再び社会で利用されます。

金属スクラップに関連する業者

金属スクラップの取引におけるメインプレイヤーといえるのが、スクラップ業者です。先ほども取り上げたように、スクラップを回収(買い取り)し、選別、加工を行います。そして、材料メーカーに売ることで利益を得るのが、スクラップ業者のビジネスモデルです。

スクラップ業者となるためには、古物商許可、金属くず商許可、産業廃棄物収集運搬業許可、一般廃棄物収集運搬業許可などが必要です。

その他の関連業者として、スクラップの発生元となる解体業者、小規模の取引を行う市中の買取業者、スクラップの買い手となる材料メーカーがあります。


金属スクラップの価格相場について

金属スクラップには、価格相場が存在します。金属への需要や供給状況、さらには経済全体の動きに影響され、日々、変動するものです。

最新の相場は、経済紙や金属業界紙に掲載されます。参考までに、『日本経済新聞』2025年2月13日に掲載された鉄スクラップ、および同14日に掲載された非鉄スクラップの一部の価格相場を見てみましょう。

  • 鉄スクラップ H2 3万9000〜4万円(トン、東京)
  • 1号銅線 127万〜127万5000円(トン、東京)
  • アルミ新 31万9000〜32万4000円(トン、東京)

補足すると「アルミ新」とは、アルミ純度の高いスクラップです。

このようにスクラップとはいえ、決して低い金額ではありません。

また、スクラップの価格相場は株式や為替などと同様に、急激に変動する場合もあります。それゆえ、相場の動きによって大きな利益を得られるケースがある半面、相場下落により手持ちのスクラップの価値が目減りしてしまうケースもあるものです。

金属スクラップの事業へ参入を検討する人は、こうした点に注意が必要となります。


金属スクラップとリサイクルに関する製品の実例

金属スクラップの世界には、生産性を高める製品やスクラップの流通に携わる企業があります。ここでは、2つの例を見てみましょう。

Legende 非鉄金属廃棄物色彩選別機(Lauffer Vision Technology)

Lauffer Vision Technology Co., Ltd.は、ドイツで150年以上前に創業した、農産物や鉱物の選別機をつくる企業です。2017年からは、中国のHFMグループに入っています。

同社では、リサイクル産業向けに金属やプラスチックの選別機を開発。Legende 非鉄金属廃棄物色彩選別機は、非鉄スクラップの色や形、光沢などからAIが選別する機械です。非鉄スクラップの分別や精製における生産性を向上します。

矢野金属

矢野金属株式会社は、レアメタルのスクラップを国内外から調達。それらを、成分などの分析、加工を行い、再び材料として使えるようにして市場へ送り出しています。

レアメタルは産出量が極めて少ないことが、「レア」と呼ばれるゆえんです。よって、安定した流通のためにはリサイクルが有効な手段となります。


まとめ|金属スクラップは歴史あるリサイクル産業

金属スクラップは、長い歴史を持つ産業です。そのため、長年この業界に従事する事業者が存在し、スクラップの回収から再生に至るまでのプロセスも確立されています。

一方、この記事で紹介したAIによる選別機のように、イノベーションも求められています。リサイクルにも活用できそうな自社の自慢の技術を、リサイクルテック ジャパンでアピールしてみては、いかがでしょうか。

【展示会情報】

リサイクル テック ジャパン -リサイクルの革新技術・エコシステム構築展-

<東京展>会期:2026年9月30日(水)~10月2日(金)会場:幕張メッセ      

<大阪展>会期:2026年5月13日(水)~15日(金)会場:インテックス大阪


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