アルミはなぜリサイクルされるのか?枯渇の心配が少ない材料なのに再生品が多い理由
日本国内では、多くのアルミニウム(アルミ)がリサイクルされているのを、ご存じでしょうか。
缶でいえば、9割以上がリサイクルされたアルミとなっています。アルミのほとんどがリサイクル品というのは、環境保全以外にも理由があります。アルミの原料となるボーキサイトは枯渇する心配がほとんどないものの、原料から地金をつくるよりリサイクルするほうが、より有益であるためです。一方で、アルミのリサイクルでは解決しなければならない課題も存在します。
この記事で、アルミのリサイクルが盛んな理由や具体的なリサイクル方法を見ていきましょう。
なくなる心配がほぼないアルミニウムを
なぜリサイクルするのか
アルミの原料は、ボーキサイトという鉱石です。後述するように、ボーキサイトは枯渇してしまう不安がほぼない状況です。
しかし、日本国内のアルミ缶に限っていえば97.5パーセントがリサイクル品で、アルミ製品全体で見ても約40パーセントがリサイクル品となっています。
なぜ、原料が枯渇する不安がないにもかかわらず、リサイクルが盛んなのでしょうか。理由を見ていきましょう。
埋蔵量250億トンともいわれるボーキサイト
まず、ボーキサイトの埋蔵量は具体的にどれくらいであるかを確認しましょう。ボーキサイトの埋蔵量は、世界で250億トンと推計されています。
一方、これまで人類が使ったボーキサイトの量は1億トン程度です。
埋蔵量と使用量を比べると、少なくとも今、存在している人間が生きている間は、ボーキサイトが枯渇してしまう可能性は著しく低いといえるでしょう。また、来世紀、来々世紀と非常に長いスパンで見ても、やはり枯渇の可能性はそれほど高くないように感じます。
このような状況であるにもかかわらず、なぜリサイクル率が高いのでしょうか。理由は、環境保全だけではないようです。
国内でアルミ地金が使われなくなった理由
以前は、日本でもボーキサイトからのアルミ精錬、すなわちバージン材にあたる「アルミ新地金」の精錬が行われていました。最盛期の1977年には、約120万トンのアルミ精錬が行われ、当時の国内需要の過半を占めています。
しかし、この1970年代には2度のオイルショックがありました。石油の供給が滞るということは、すなわちエネルギー供給が滞るということです。電気代も上がってしまいます。
アルミ精錬にとって、こうした電気代の高騰は痛手になります。アルミ地金をつくるには、ボーキサイトを化学分解してアルミナをつくり、次いでアルミナを電気分解してアルミにするためです。このとき、多くの電気を消費します。
こうした背景からオイルショック以降、アルミ精錬は日本国内で徐々に行われなくなっていきました。2014年には、静岡県にあった国内で最後まで稼働していた製錬所が閉鎖しています。
よって現在、日本で流通するバージン材、アルミ新地金は輸入品です。そしてほとんどのアルミ製品が、リサイクル品となりました。
アルミのリサイクル品は低エネルギーでつくられる
アルミ新地金をつくるには電気が必要です。では、リサイクル品は電気、あるいは、大量のエネルギーを使うことはないのでしょうか。
アルミ再生地金(リサイクル品)をつくるのに消費するエネルギーは、新地金の3パーセントに過ぎません。これほど低く抑えられる理由は、アルミ新地金でアルミナからアルミをつくる際の電気分解する工程が、再生品にはないためです。そしてもう一つ、アルミの融点は660度と、1000度以上となる他の金属よりも低いため、エネルギーをあまり必要としない理由もあります。融点が低ければ低エネルギーで廃アルミを溶かし、再生させることが可能です。
アルミの回収からリサイクル品の形ができるまでの
6のプロセス
アルミのリサイクルはどのような流れで行われるのでしょうか。基本的には、鉄のリサイクルと同じような流れとなります。
見ていきましょう。
1.回収・選別
アルミは缶としての用途が知られますが、他にもさまざまなところで使われています。ホイールをはじめとした車の部品、建材などです。
これらが廃棄されると、リサイクルのために回収します。他の素材と選別する方法としては、磁石で鉄と非鉄金属に分ける、成分を調査するなどです。アルミの場合、エンドユーザーが選別しているケースもありますが、それでも異物混入があることを念頭に、選別を行います。
2.前工程
アルミのリサイクルでは、溶解前にツキミにします。ツキミとは、廃アルミをつく(餅をつく、鐘をつくと同じ動作)ことで、アルミ分を高め、溶解しやすくしたものです。
3.溶解
炉で廃アルミを溶解します。前述の通り、アルミの融点は低いため、溶解で使うエネルギーや二酸化炭素(CO2)排出量も少なく済みます。
4.不純物の除去
前工程でアルミをツキミにするものの、どうしても不純物が混じってしまいます。
そこで、溶湯(溶解したアルミ)を回転炉で回転させ不純物を撹拌する、同じく溶湯を絞り機と呼ばれる中に羽根の付いた機械で撹拌する、といった方法でアルミと不純物とを分離させます。
5.再生地金の形成
アルミの場合、溶湯を鋳型に流し込み鋳造する形で再生地金をつくるケースが多く見られます。この工程の前後で、溶湯や地金の成分を分析し、規格内に納まっているかを確認します。
6.中間ユーザーが再加工
こうしてできたアルミの再生地金は出荷され、中間ユーザーが切削・圧延などの方法で缶や部品といった形にしていきます。
アルミのスクラップと価格について
国内で多くのアルミのリサイクル品が出回っている以上、アルミのスクラップは金銭を介して取引されています。
スクラップとは廃棄されたもののことです。同じ金属の鉄も、建物の解体現場や廃車などから発生する鉄スクラップの価格相場が、鉄鋼の市場を知るための指標となっています。鉄スクラップの価格が、最終的に鋼材の価格へと反映されるからです。
同様に、缶や機械部品として使用済みとなったアルミがアルミスクラップとなります。これらを取引しているのは、アルミスクラップ専門業者やアルミ以外の金属も取り扱うスクラップ業者です。
『日本経済新聞(電子版)』2025年2月10日付けによると、アルミスクラップなどからつくられ自動車部品が主な用途となるアルミ二次合金の価格指標「AD12.1」は、2月の問屋卸値が1トンあたり59万7500円でした。本稿執筆時点で、同紙における報道ではこれが最新の価格です。
AD12.1は、2024年7月まで上昇基調にありましたが、2025年以降の価格相場は一服した状況にあるとのことです。
アルミのリサイクルで課題となる「不純物の除去」
アルミをリサイクルする際、どうしても不純物が混じってしまうことに触れました。
リサイクル時には、アルミの溶湯を撹拌する動作によって、できるだけ不純物からの悪影響が地金に出ないようにしています。しかし、それでも完全に除去できるわけではありません。よってアルミはレベルマテリアルリサイクル(リサイクルの前と後で同品質の製品をつくれること。水平リサイクルとも呼ばれる)が可能であるといわれるものの、実際にはリサイクルを繰り返していくと品質が落ちてしまう短所があるのも事実です。
そのため、より高品質なアルミのリサイクルを目指し、研究開発が続けられています。
一例として、富山大学の研究グループが進める、アルミとシリコンを分離させる技術があります。アルミに耐熱性を加えるため、シリコンとの合金がつくられることがあります。しかし、リサイクルする際、純度の高いアルミが必要な場合では、このままだと困ってしまうでしょう。
そこで、富山大学の研究グループは、アルミとシリコンの融点の差を利用し、分離する技術を開発しています。前述のようにアルミの融点は660度である一方、シリコンは1414度です。溶かしたスズの中で分離させ、比重の軽いシリコンが浮かぶ仕組みです。
先ほど、2024年前半のアルミ二次合金の価格が上昇していたことを取り上げましたが、その要因の一つに電気自動車(EV)や太陽光パネルの存在があります。EVは車体を軽くするため部品にアルミが多用され、太陽光パネルは電気を伝える部分などに使われており、これらの需要増によってアルミの需要も高まったのです。
つまり、持続可能な社会を構築するためにも、アルミそのものや純度の高いアルミ再生品をつくる技術が求められています。
まとめ|さらなる進化が求められるアルミのリサイクル技術
日本国内では、ほぼ必然的にアルミをリサイクルしなければなりません。すでにアルミ新地金をつくる精錬工場は存在せず、仮にあったとしても資源に乏しい日本では大量に電気を使わなければならない新地金の精錬は非効率だからです。
しかし、アルミのリサイクルも完璧というわけではありません。少ないエネルギーでアルミ製品をつくれても、不純物を除去しより純度を高めなければならない課題があります。
こうしたブレイクスルーを実現しようという企業、あるいは技術を探している企業の方々は、リサイクルテック ジャパンに来場や出展してはいかがでしょうか。同じ志を持つ、別の企業の仲間がきっといるはずです。
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