太陽光パネルのリサイクルを実現するための方法と課題
補助金、注目企業も紹介
再生可能エネルギーと聞くと、太陽光発電を思い浮かべる人が少なくないでしょう。
そんな太陽光発電に使うパネルは今後、更新の時期を迎え、使用中のものの多くが廃棄されることが予測されています。日本で太陽光パネルの導入が盛んだった時期から、2030年代半ば以降に使用済みのパネルが大量発生するとわかっているのです。そうなると、何らかの形でリサイクルをしていくことが求められます。しかし、リサイクルを実現するためには、いくつかの課題も。
この記事では、太陽光パネルのリサイクルについて、取り上げます。
なぜ太陽光パネルのリサイクルが強く求められているのか?
近年、太陽光パネルのリサイクルに関する技術やソリューションへのニーズが高まっています。
再生可能エネルギーといえば、多くの人が太陽光発電を思い浮かべるでしょう。そのイメージはおおよそ正しく、各国の総発電量に占める太陽光発電量を見ると、割合が高い国では1割前後に上り、日本も9.2パーセントと比較的高い数字となっています。
そして、太陽光パネルの耐用年数は一般的に、20〜30年といわれます。この寿命が、これから発生する太陽光パネルの大量廃棄、リサイクルと深く関係するのです。
2030年代半ばから発生する多くの使用済み太陽光パネル
日本国内において再生可能エネルギーのニーズが高まるきっかけとなったのは、2011年に発生した東日本大震災とそれに伴う福島第一原発事故です。翌2012年には、固定価格買取制度(FIT)の対象が再生可能エネルギー全般に広がりました。
そして、日本で非常に多くの太陽光パネルが導入されたのも、2012年以降となっています。資源エネルギー庁の資料によると、2012年6月までの太陽光発電の累計設備導入量は約560万キロワットでした。しかし、新たなFITが始まった2012年7月〜2013年度は、約884万キロワットです(以上は、住宅・非住宅を合わせた数値)。つまり、わずか2年足らずでそれまでの導入量を大きく上回りました。
以後、住宅分野の太陽光発電の導入は若干、数字に落ち着きがあったものの、非住宅分野は高い数値で推移。2010年代で最も数字が小さかった2017年度でも474.5万キロワットとなっています。
なお、今後も太陽光発電の導入は一定規模で続いていく可能性があります。その兆候となりそうなのが、2025年4月から東京都で始まった新築住宅への太陽光発電設置義務化です。これから東京で新たに建てられる住宅は、原則的に太陽光発電設備が求められます。他の自治体も追随する、国レベルで同様の政策が行われれば、太陽光パネルの導入が著しく少なくなることは考えづらくなります。
さて、問題となるのが太陽光パネルの20〜30年という耐用年数です。2010年代の20年後は2030年代となります。30年後と考えると、2040年代です。
よって、導入量と耐用年数を考えると、太陽光パネルの更新時期が2030〜2040年代に始まると考えられています。とりわけ2030年代半ば以降は年間50万〜80万トンの使用済み太陽光パネルが発生すると見られています。
日本政府が進める太陽光パネルリサイクルの仕組みの整備
太陽光パネルの大量廃棄が起きると分かっている以上、対策が求められます。一方で、環境保全のための再生可能エネルギー、そして太陽光発電であるにもかかわらず、太陽光パネルの廃棄により資源の浪費が起こってしまえば、本末転倒です。
そこで、太陽光パネルのリサイクルが検討されています。日本政府が太陽光パネルリサイクルにどのような形で取り組もうとしているのか、見ていきましょう。
2025年中に法案提出の予定
まず、2025年に太陽光パネルのリサイクルを義務化する法案が、通常国会に提出される予定です。経済産業省と環境省が法整備の中心となっています。
正式に内容が決まるのはこれからではありますが、太陽光パネルをきちんとリサイクルせず放置などをした場合は、罰則を科すことも検討されています。
ここからは、法整備により太陽光パネルリサイクルはどう進められようとしているのかを中心に、取り上げていきます。
すべての部材をリサイクルしていく方針
法整備を進める経済産業省と環境省が作成した「太陽光発電設備のリサイクル制度のあり方について(案) 参考資料」によると、太陽光パネルを構成するすべての部材をリサイクルすることが検討されているようです。
もっとも、この記事で後ほど詳述していくように、リサイクルには高いハードルもあります。
費用負担の方法
太陽光パネルリサイクルにおいて、かかる費用を誰がどのように負担するのか、気になる人もいるでしょう。
検討されている法律では、太陽光パネルの製造者や輸入者が費用を負担し、その資金は第三者機関が管理することになりそうです。お金の流れをたどれば、最終的に負担するのは消費者や設置した企業となるでしょう。
太陽光パネルリサイクルの課題「リサイクルできない」は
本当か?
太陽光パネルリサイクルには、さまざまな課題があります。さらに、太陽光パネルは「リサイクルできない」という意見も見られます。
現状では、リサイクルが難しいのは確かです。それはなぜなのか、見ていきましょう。
有害物質の処理
太陽光パネルには、有害物質が含まれています。代表的なものは、以下の通りです。
- 鉛
- ヒ素
- カドミウム
- セレン
有害物質の存在について、リサイクルする前の時点での不安もあります。設置された太陽光パネルの破損によって、これらが流出していることが考えられるのです。今後、こうしたリスクを抑えるためにも、リサイクル制度の整備が不可欠となるでしょう。
そしてリサイクルの面でいうと、まず有害物質をどのように処理するかが問題となります。さらに、費用がかかるため不法投棄がされるおそれもあり、その対策も求められます。
リサイクルの費用対効果
太陽光パネルに限らずあらゆる製品や資源のリサイクルは、コストに見合った効果があって成立するものです。もしそうでなければ、お金がかかるならリサイクルしたくない、との風潮が生じてしまいます。
そして、太陽光パネルリサイクルにも同じ課題があります。特に、壁となりそうなのがガラスのリサイクルです。太陽光パネルを重量で見ると、その過半を占めるのがガラスです。ガラスのリサイクルは決して不可能ではありませんが、量産ができ、さほど価値のある素材ではない現実があります。
一方、太陽光パネルにはレアメタルも使われており、こちらは再生できれば引き続き貴重な資源として活用が見込まれます。しかし、太陽光パネルから効率的に回収する方法は、まだ模索されている段階です。
太陽光パネルが撤去されないおそれ
太陽光パネルを設置した業者などが、耐用年数を過ぎても撤去しないリスクがあります。こちらも費用対効果が要因となる場合がありますし、設置者が責任を持たない、倒産や解散などをしてしまった、などの理由も考えられます。
もし撤去がされなければ、景観や風紀の面でも問題となります。
現状では制度がない
太陽光パネルをリサイクルするための制度は、整っていない状態です。よって、すでに触れた法律の施行をはじめとして、制度づくりが必要となります。
一刻も早く法律の内容が固まり、成立することが求められます。
考え得る太陽光パネルリサイクルのプロセス
太陽光パネルのリサイクルには課題がありつつも、制度や方法が築ければビジネスとして成立することも考えられます。太陽光パネルリサイクルをビジネスとして見るには、まずどのように行われるかを押さえておくことが必要です。
そこで、想定される太陽光パネルリサイクルのプロセスを見ていきましょう。日本に多いシリコン系太陽光パネルと、処理の難しさがあるとされる化合物系太陽光パネルに分けて、取り上げます。
シリコン系太陽光パネルをリサイクルする際のプロセス
日本国内に設置されている多くの太陽光パネルが、シリコン系と呼ばれる種類です。パネルにシリコンの結晶を貼り付け、それを基に発電するものです。
リサイクルは、パネルを構成する部材を分解し、それぞれに適したリサイクル方法が用いられます。主な部材は以下の通りです。
- アルミフレーム
- ジャンクションボックス
- ガラス
- シート、セル、EVAなど
アルミフレームは、一般的な金属リサイクルを行います。ジャンクションボックスも銅を取り出し、同じく金属リサイクルを行います。
ガラスは、グラスウールをはじめとした建材へのリサイクルが可能です。しかし、前述のようにガラスが太陽光パネルリサイクルにおける課題の一つとなっています。ガラスをリサイクルする先はあるものの、廃棄の大量発生が見込まれているため、現状のリサイクル方法だけで対応できるかの不安があるのです。
シート、セル、EVAなども金属を取り出しリサイクルをするのは、ジャンクションボックスと同じです。しかし、EVAの封止材と呼ばれる部分にはガラスが圧着されており、これをどう分離するかが技術的課題となっています。
化合物系太陽光パネルをリサイクルする際のプロセス
化合物系太陽光パネルは、日本国内においてわずかしか設置されていないと見られています。
しかし、化合物という名前からも分かるように化学物質が使われているため、これが分からなければリサイクルは難しくなってしまいます。リサイクル、処理に危険が伴う場合もあるため、これらを担う事業者としても含有物質が分からなければ受け入れを断ってしまう可能性が考えられます。
よって、化合物系太陽光パネルに関しては、メーカーに含有物質の情報公開が求められている状況です。プロセスを確立する以前の段階にあるともいえるでしょう。
太陽光パネルリサイクルに関する補助金は?
太陽光パネルのリサイクルを事業として検討している企業にとって、補助金や助成金を活用できないかとの考えが浮かぶのではないでしょうか。
しかし、太陽光パネルリサイクルは法整備のさなかであるため、パネルのリサイクルそのものを対象にした補助金制度は極めて少ないのが現状です。しかし、環境関連の補助金が利用できる場合はあります。
自社の強みが太陽光パネルリサイクルに活用できそうな場合は、以下を参考に公募する行政機関への相談をしてはいかがでしょうか。
太陽光パネルリサイクルを対象とした補助金
太陽光パネルリサイクルそのものを対象とした補助金として、新築住宅の太陽光パネル設置を義務化した東京都が「使用済住宅用太陽光パネルリサイクル促進事業」を行っています。
補助金を支給する対象は、太陽光パネルの「排出事業者」です。排出事業者は、ハウスメーカー、リフォーム業者、解体工事業者などが想定されています。
これらの事業者は、まず都が指定する産業廃棄物中間処理業者にパネルの処理を依頼しなければなりません。さらに、太陽光パネルの所有者に対して、補助金受給の説明をすることが求められています。
補助される金額は、「使用済み太陽光パネルの発電出力(キロワット)×2万5000円」です。
さまざまなリサイクルを対象とした補助金
太陽光パネルリサイクルを対象とした補助金は、先の東京都のもの以外、本稿執筆時点では見当たりませんでした。
しかし、環境省は例年、「二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金」という事業を行っており、太陽光パネルリサイクルが対象となる可能性があります。実際、2022年度には太陽光パネルリサイクルに関する取り組みを行う団体に補助金が支給されました。
これまでは6〜7月頃に公募があったため、活用を検討する場合は、動向に注視しましょう。
太陽光パネルリサイクルで注目を集める上場企業
「ESG投資」という言葉が定着したように、環境問題の解決に強みを持つ企業は、投資家からも熱い視線を浴びます。それだけ、環境保全への社会的要請が強いということです。
太陽光パネルリサイクルも、それは同じ。実際に取り組んでいる上場企業の例を見てみましょう。
まず、化学大手の三井化学株式会社は太陽光パネルのリユースについて実証を行うと、2024年に発表しました。
三井化学が実証する太陽光パネルのリユースの流れ(同社プレスリリースより)
生産装置メーカーの株式会社エヌ・ピー・シーは、太陽光パネルをつくるための装置、検査装置を製造するとともに、パネルのリユース・リサイクル事業も行っています。前述のように、EVAのガラスを分離させることが困難であるという課題の解決方法として、「ホットナイフ分離法」という技術を開発しました。
エヌ・ピー・シーの装置を使い太陽光パネルのリサイクルを進めるのが、株式会社ミダックホールディングスです。より正確にいうと、ミダックホールディングスの100パーセント子会社である株式会社ミダックこなんが、エヌ・ピー・シーのアルミフレームとジャンクションボックスを分離させる装置を用いた太陽光パネルリサイクル事業を行っています。
ミダックこなんが利用するエヌ・ピー・シー製の装置(ミダックホールディングスのプレスリリースより)
成長が期待される太陽光パネルリサイクルに関連する企業
太陽光パネルのリサイクルなどにより、さらなる成長が期待される企業も存在します。
徳島県西部で創業し現在は東京に本社を置くプラント企業の株式会社セイアは、太陽光パネルのリユース事業を展開。使用可能な太陽光パネルをニーズのある地域や分野に利用を提案しています。
まとめ|従来の関連企業以外の参入も求められる
太陽光パネルリサイクルは、制度面が未整備である状態です。そうであるにもかかわらず、使用済みパネルが大量発生することが分かっています。よって、太陽光パネルリサイクルを実現する技術、ソリューションが強く求められているのが現状です。
この記事で見てきたように、実際に太陽光パネルリサイクルに取り組む企業が存在します。しかし、リサイクルにはより多くの知恵が必要です。
よって、これまで太陽光パネルとはあまり関係が深くなかった企業の有する技術が求められることも、考えられます。例えば、樹脂や電気関連の企業が挙げられます。もし自社の技術が太陽光パネルリサイクルに生かせるかもしれないと思ったら、参入を検討してみてはいかがでしょうか。
展示会のリサイクルテック ジャパンは、太陽光パネルリサイクルの最新動向が分かる展示会です。太陽光パネルリサイクル分野に進出していない企業も、出展により業界の人々とつながれるチャンスがあります。
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