GX・グリーントランスフォーメーションとは?最新情報を入手する方法も紹介

GX、グリーントランスフォーメーションという言葉を、新聞や経済メディアで目にすることはないでしょうか。

簡潔にまとめれば、私たちが使うエネルギーを脱炭素の方向へと転換し、気候変動の進行を抑止しようとする取り組みです。エネルギーの脱炭素化は、再生可能エネルギーなど二酸化炭素(CO2)を排出しないエネルギーの採用で実現します。

非常に重い課題にも感じますが、企業にとっては社会課題の解決を図りつつ持続的なビジネスを生み出すチャンスにもなるものです。

この記事では、より具体的なGXの意味や背景、企業の人々が押さえておきたいポイントを取り上げます。

【展示会情報】

リサイクル テック ジャパン -リサイクルの革新技術・エコシステム構築展-

<東京展>会期:2025年11月12日(水)~14日(金)会場:幕張メッセ      

<大阪展>会期:2026年5月13日(水)~15日(金)会場:インテックス大阪


GX・グリーントランスフォーメーションの意味は?

GXとは、グリーントランスフォーメーションの略語です。

では、グリーントランスフォーメーションはどのような意味のある言葉なのでしょうか。概念を提唱した経済産業省が開設するウェブサイトには「簡単に言うと、化石燃料をできるだけ使わず、クリーンなエネルギーを活用していくための変革やその実現に向けた活動のこと」と説明しています。

日本政府は、2050年までのカーボンニュートラル(CO2排出の実質ゼロ)目標を、2020年に掲げました。そこで、GXが求められる背景をより詳しく探るべく、この後、GXと深く関連するカーボンニュートラル目標の詳細、GXとリサイクルの関係について取り上げます。

なお、トランスフォーメーションをアルファベット表記するとTransformationです。そのため、GXの「X」はどこにも入っていないのでは、と疑問に思う方もいるかもしれません。これは、英語圏でTransという言葉をXと略すことに由来します。

GXの背景にある2050年までのカーボンニュートラル

経済産業省がGXを提唱した背景には、2050年までのカーボンニュートラル実現という目標があります。

カーボンニュートラルとは、CO2排出量を実質的にゼロとすることです。実際にはCO2だけでなく、メタンガスなども含んだ温室効果ガス(GHG)全体の排出量を実質ゼロにすることを目標としています。

カーボンニュートラルが求められているのは、世界的な問題となっている気候変動と人間の経済活動に相関があると考えられているためです。

日本が2050年までのカーボンニュートラルを宣言した翌2021年のできごとではありますが、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第6次報告書には、CO2やGHGを排出する人間の経済活動が地球温暖化に影響しているのは「疑う余地がない」と記されました。

それまでもIPCCの報告書では、GHG排出と気候変動は関連しているとの見方を示しており、温暖化に歯止めをかけるべく日本や世界の国々がおおむね2050年までのカーボンニュートラルを目標に掲げたという経緯です。

GXとリサイクルは関係ある?

この記事を読んでいる方は、リサイクルと関連する業種で働いていたり、これからリサイクル産業に参入しようとしていたりする場合も少なくないでしょう。

GXとリサイクルは関係があるのでしょうか。

GXは、化石由来のものなどCO2を排出するエネルギーからクリーンエネルギーに転換していくことなので、リサイクルと直接的に関係するものではありません。

しかし、不要となった生物由来の廃棄物をただ捨てるのではなく発電に利用するバイオマス発電は、リサイクルによってGXを推進する方法となるでしょう。

また、リサイクルは資源の再利用であることは、多くの方が知るところです。そうなると、新たに資源を利用する場合よりCO2排出を減らすこともでき、GXの取り組みと似た部分があります。

このように、GXとリサイクルは直接的な関係がないとはいえ、リサイクルがGX実現に果たす役割は存在するといえるでしょう。


日本政府と経済界のGXへの取り組み

GXは日本政府が提唱し、それに呼応した経済界が政府とともに取り組みを進めています。

GXはこれからの社会を守るために必要不可欠な取り組みながら、経済的な側面から人々の生活に悪影響を与えることも考えられるため、それを回避する工夫も必要です。一方で、GXがビジネスとしても有益なものになれば、多くの人の利益に適います。

以上を実現するため、政府と経済界がどのような動きをしているのか、取り上げます。

GX実行会議

GX実行会議は、内閣総理大臣が議長を務め、関連閣僚、経済界、労働団体、学界から選出されたメンバーによる会議体です。2022年に第1回が開かれ、2024年までに12回の会議が開かれています。

また、2022年に開かれた会議の末、今後10年を見据えたGX推進のためのロードマップを策定。さらにこの後、「GX推進法」のところで触れる取り組みについても、議論が行われています。

GX推進法

GX推進法は、法律の中で示される「GX推進戦略」(後述)を中心として、GX経済へ移行していくためにつくられた法律です。正式名称は「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律」であり、2023年に公布・施行しました。

ここでは、GX推進法による4つの取り組みを見てみましょう。

1つ目は、先ほども取り上げたGX推進戦略です。エネルギーの安定供給を図り、脱炭素電源への転換、そのための原資確保の方法を方向付けるものです。

原資確保の方法が、2つ目として挙げるGX移行債となります。債券の形で資金を集め、それをクリーンエネルギーのイノベーションに投資。償還に2028年度より始まる化石燃料賦課金などを充当するものです。

3つ目に挙げるのは、GX推進機構という組織です。企業がGX関連のイノベーションを起こそうにも、民間の金融機関にとってはリスクによって融資に踏み切れない場合があります。そこで、GX推進機構が債務保証や出資をする他、化石燃料賦課金などの徴収、排出量取引制度の運営も業務となります。

最後の4つ目は、成長志向型カーボンプライシングです。カーボンプライシングとは、CO2を一定の範囲内で排出できる権利である「排出権」の取引を指します。成長志向型カーボンプライシングでは、従来のカーボンプライシングに加え、GX移行債を原資とした資金の先行投資での排出抑制、化石燃料賦課金によるCO2排出抑制に取り組みます。資金の効果的な確保と投資、そしてカーボンニュートラルという成果を狙うものです。

GXリーグ

GXリーグは、日本のCO2排出量の4割を占める企業679社(発足時)が参画する連合体であり、またGXを進めていくため、参画企業が行政や学界と協働も行う場です。

ウェブサイトには、参画企業の取り組み事例が書かれています。一例を挙げると、川崎重工業株式会社は工場のCO2排出量削減を進めるとともに、水素事業によって自社だけでなく社会全体の脱炭素化に貢献。一方、エネルギーをつくる側である電源開発株式会社は、経年化石炭火力の稼動抑制・廃止やCO2排出抑制に資するバイオマス混焼の拡大を掲げます。


消費者と関係するGXの取り組み

政府、経済界だけでなく、消費者と関連するGXの取り組みも取り上げます。ここでは2つ、紹介します。

再エネ賦課金

電気料金の明細を見ると、「再エネ賦課金」という項目が目に留まることがあります。

再エネ賦課金、正式名称「再生可能エネルギー発電促進賦課金」は、再生可能エネルギーを普及させていくための制度。国が電力会社に対し、再エネ由来の電気を一定期間・一定量、購入することを義務付けます。そのための費用を、利用者全体で負担するための仕組みです。

とはいえ、再エネ賦課金を電力会社が徴収しても、そのまま使えるわけではありません。一度、国が指定する機関に納付してから、実際に電力会社が買い取った費用の一部を交付するからです。

GX志向型住宅補助金

GX志向型住宅補助金は、条件を満たした環境性能の高い新築住宅に160万円/戸の補助金を拠出するものです。

条件は、断熱性能が高いこと、規定の一次エネルギー消費量の削減率を達成していること、高度エネルギーマネジメントシステムを導入していることが挙げられます。


GXに関する世界の動向

前述の通り、GXは日本から発信された言葉であり、世界的にはあまり通用しません。

しかし、日本におけるGXの取り組みは、世界でも同様に行われています。前述のIPCCの報告や、第21回国連気候変動枠組み条約(COP21)で掲げられた産業革命以前の平均気温からの上昇を2度未満に抑えるという目標は、各国が共有しているからです。

世界の地域別に、取り組みを見ていきましょう。米国は、これまで資金面での支援を中心に取り組みが進められていましたが、2025年にトランプ政権が発足。トランプ大統領は就任直後、気候変動抑制の国際的な枠組みであるパリ協定から離脱する大統領令に署名しました。よって、今後の米政府の動向は不透明な状況です。一方、排出されたCO2を回収するなどを行うスタートアップは数多く登場しており、民間での投資は活発となっています。

欧州連合(EU)は「グリーンニューディール」と呼ばれる政策を進めます。日本のGX関連政策とも似ており、クリーンエネルギーなどへの投資によって、カーボンニュートラルとともに雇用や持続可能な経済の構築も目指すものです。

2060年 までのカーボンニュートラルを目指す中国は、その他の国々と同様、エネルギーの転換、リサイクルの推進を進めます。とりわけ目立つのが、電気自動車(EV)の普及策でしょう。補助金を中心とした需要喚起により、中国のEV普及率は2割超 と世界で最も高くなっています。


GXに関するソリューションの事例と最新情報を入手する方法

GXの推進では、政府から民間への投資、あるいは、投資を呼び込むための施策が打ち出されています。これらは、GXに生かせる技術を持つ企業にとって、大きな後押しといえるでしょう。

もっとも、技術や資金があっても市場動向、ニーズなどを理解していないと、うまくいかないケースもあります。そこでGXに関連した実際に行われているビジネスの事例と、GXの最新動向が分かるカンファレンスを取り上げます。

グリーンイノベーションコンパス(電通総研)

株式会社電通総研が展開するサービス「グリーンイノベーションコンパス」は、企業がGXに取り組む際のプロセスをコンサルティングするものです。GXは、経営企画やサステナビリティ関連の部門から声が挙がることがありますが、そうしたセクションが取り組みで困った際はもちろん、製造、開発といった現場の課題も拾い上げ、最適なプロセスを提案します。

GXの最新動向が分かるカンファレンス

この記事で見てきたGXの現状から、企業のサステナブルな社会への貢献、そして企業のビジネスがサステナブルな社会をつくることもできると実感できたのではないでしょうか。

こうした中で2025年、サステナブル社会を構築するためのソリューションを周知する展示会「リサイクルテック ジャパン」が開催されるのです。

主に製造業向けを中心としたリサイクルなど環境を守るためのソリューションが紹介される一方、カンファレンスが開かれ有識者から最新情報を聴ける機会も設けられています。

環境省 環境再生・資源循環局 総務課 循環型社会推進室長 兼 リサイクル推進室長の近藤亮太氏が登壇する「リサイクルテックジャパン 基調講演①」(RCL-K1)、経済産業省 GXグループ 資源循環経済課 国際資源循環管理官の田中将吾氏が登壇する「リサイクルテックジャパン 基調講演②」(RCL-K2)と、GXの仕組みづくりを担う行政の担当者が、政府の最新動向を説明。

また、企業がどのようにGXやサステナブルな取り組みをしているかを紹介するものとして、住友化学株式会社 エッセンシャル&グリーンマテリアルズ研究所 環境負荷低減技術開発グループの森康彦グループマネージャーによる「リサイクルテックジャパン カンファレンス③」(RCL-3)もあります。

リサイクルテック ジャパンは5月の大阪の他、11月には東京でも開催。展示やカンファレンスから、自社の取り組みに生かせる情報も入手できるでしょう。


まとめ|日本で、世界で進むGX

気候変動の進行を止めるため、カーボンニュートラルの達成が求められます。そして、カーボンニュートラルを実現するため、CO2を出さないエネルギーへ転換するGXが進められています。

GXは、政府、企業、消費者がGX推進法に盛り込まれた制度を利用しながら推進するものです。また、海外ではGXという言葉があまり使われないものの、それと同様の取り組みが行われています。GXは、日本全体、世界全体で歩調を合わせて進めなければ、カーボンニュートラルと気候変動の抑止という最終的な目的を達成できないからです。

視点を個々の企業に移すと、まず自社内のDXを進めることが求められます。それとともに、GXにも応用できそうな技術やノウハウが、社会に提供されることも求められるでしょう。

もし、この記事を読んで、ご自身の会社がGXに貢献できるかもと感じたら、ぜひ記事の中でも紹介したリサイクルテック ジャパンにお越しください。カンファレンスはもちろん、展示や出展社から新たなヒントを得られるはずです。

【展示会情報】

リサイクル テック ジャパン -リサイクルの革新技術・エコシステム構築展-

<東京展>会期:2025年11月12日(水)~14日(金)会場:幕張メッセ      

<大阪展>会期:2026年5月13日(水)~15日(金)会場:インテックス大阪


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