循環型社会の意味、そして取り組みについて|最新データと情報を収集する方法も紹介
限りある資源を有効活用するため、企業で、ご家庭で、無駄を出さない取り組みをする人もいるでしょう。
このように資源を大切に使う、再利用する、などが定着した社会を「循環型社会」と呼びます。循環型社会の構築へ向け、個人、行政、そして企業が、それぞれの立場で取り組みを行っています。関連する法律の下、「3R」を定着させ、資源を循環させるものです。
循環型社会をつくるのに活用可能な技術を持つ企業にとっては、ビジネスチャンスにもなり得ます。そのためには、法律やデータなどを押さえておいたほうがよいでしょう。
この記事では、以上のような循環型社会の意味や循環型社会で知っておきたいポイントを取り上げます。
循環型社会とは正確にどんな意味?
ほか、2つの重要なキーワード
「循環型社会」という単語に、リサイクルや自然環境を大切にすることを連想する人もいるかもしれません。正確には、どのような意味になるのでしょうか。
ここでは、循環型社会の正確な意味とともに、関連する2つのキーワードを取り上げます。
循環型社会
循環型社会を辞書で引くと、次のような意味が書かれています。
「天然資源の消費を抑制し、環境負荷の低減を図る社会。大量生産・大量消費・大量廃棄を前提とした社会に代わるものとして提示された概念。廃棄物の発生を抑制し、排出された廃棄物はできる限り資源として利用し、利用できないものは適正に処分することによって実現される」(『大辞泉』)
2つ目の文に書かれている「大量生産・大量消費・大量廃棄を前提とした社会」とは、これまで私たちが築き、暮らしてきた社会といえるでしょう。多くの資源や製品をつくり、使い、そして捨ててしまっていたことは、資源の浪費と環境汚染につながりました。
そこから脱却し、自然環境を守りつつ人々の生活に無理が生じない持続可能な社会をつくることが、循環型社会の概念となります。
さらに補足すると、天然資源は無限に存在するわけではありません。石油 も天然ガス も、あと50年前後で枯渇するといわれます。
新しい資源が見つからなかった場合の推計値であるものの、逆にいえば新しい資源が見つかっても使う量が著しく増えれば枯渇する時期はさらに早まる可能性もあるということです。
これは決してあり得ない話ではありません。かつて経済的に豊かだったとはいえない国が発展し、資源の消費が増えることは十分に考えられます。中国がこれまでの先進国と経済面で肩を並べたことで、エネルギー消費が増えた事実 があるからです。
以上のような課題や経緯から、循環型社会の構築が求められているのです。
3R
続いて、循環型社会と関連する2つのキーワードを見ていきましょう。
1つ目は、「3R」です。
3Rとは、循環型社会を構築するため必要となる3つの行動・取り組みのことです。いずれも「R」から始まるので、3Rと呼ばれます。具体的には、以下の通りです。
- リデュース(Reduce)…廃棄物(ごみ)の発生を抑える
- リユース(Reuse)…ものを繰り返し使う、再利用する
- リサイクル(Recycle)…使い終わったものを再資源化する
2つの別のRから始まる言葉を3Rに加えて、「5R」とすることもあります。上記以外の2つを見てみましょう。
- リフューズ(Refuse)…ごみになるものを断る
- リペア(Repair)…壊れたものも修理して使う
3Rおよび5Rは、ごみを減らして利用や再利用を促す取り組みです。
循環型社会形成推進基本法
循環型社会形成推進基本法は、2000年に公布、2001年 に施行した、循環型社会を形成するためにつくられた法律です。
この法律がつくられた平成前半期は、ごみが増える状況にありました。一般廃棄物(家庭から排出されるごみ)の排出量は昭和末期に4000万トン台であったのに対し、平成に入ると5000万トン台で推移 するようになったのです。
これに伴い、廃棄物処理施設が不足し、さらに不法投棄も問題となりました。解決のため、廃棄物の発生を抑制し、資源としての活用を図り、処理を適正化する目的で、循環型社会形成推進基本法が成立したという経緯です。
循環型社会形成推進基本法の第2条には、以下の文言が書かれています。
「この法律において『循環型社会』とは、製品等が廃棄物等となることが抑制され、並びに製品等が循環資源となった場合においてはこれについて適正に循環的な利用が行われることが促進され、及び循環的な利用が行われない循環資源については適正な処分(中略)が確保され、もって天然資源の消費を抑制し、環境への負荷ができる限り低減される社会をいう」
おおむね、先ほど取り上げた辞書の意味と同じだといえるでしょう。
循環型社会を知るために押さえておきたい4つのデータ
循環型社会形成推進基本法の制定時は、廃棄物やその再利用に関して大きな課題が存在していたことに触れました。では、現状はどうなっているのでしょうか。データを見てみましょう。
廃棄物排出量
先ほどの繰り返しになりますが、平成期前半の一般廃棄物排出量は、5000万トン台で推移していました。
環境省が発表した最新のデータとなる2022年の数字を見ると、一般廃棄物排出量は4034万トンです。これまで最も排出量が多かった2000年 と比べると、25パーセント程度減っています。
企業など事業所から排出される産業廃棄物も見てみましょう。
一般廃棄物と同様、2022年の産業廃棄物排出量は3億7400万トンでした。過去、最も排出量が多かった1996年 (現在と同じ算出方法を用いた場合の数値)が4億2600万トンであったため、こちらはおよそ1割程度しか減っていません。
リサイクル率
一般廃棄物のリサイクル率は、最新の2022年の統計で19.6パーセントでした。循環型社会形成推進基本法公布の時期は、リサイクル率が10パーセント台前半でしたので、リサイクルが前進しているように見えます。
しかし、2010年代は20パーセント台で推移していた時期もあるため、再び向上することが求められます。
一方、産業廃棄物の2022年のリサイクル率は、54.2パーセントです。循環型社会形成推進基本法公布の時期は、40パーセント台で推移していました。
廃棄物最終処理施設の残余年数
廃棄物最終処理施設の残余年数とは、廃棄物の最終処分場があと何年使えるかを表す数字です。残余年数が小さいほど、切迫した状況になっていることを示します。
2022年の一般廃棄物における廃棄物最終処理施設の残余年数は、23.4年です。循環型社会形成推進基本法の公布より前となる1990年代は、残余年数が10年を切る状況が珍しくありませんでした。ある程度、状況が改善しているといえるでしょう。
産業廃棄物の最終処理施設残余年数は、2023年4月で20.0年 です。こちらも循環型社会形成推進基本法の公布前は3年台で推移していたため、状況の改善が見られます。
不法投棄件数
かつて多くの不法投棄があったことも、循環型社会形成推進基本法がつくられた理由です。
2022年度、新たに判明した不法投棄は134件です。ピークの1998年は、1197件 でした。美しい自然を守るため、不法投棄はゼロであることが求められますが、大きな改善が見られているのもたしかです。
なお、重量で表す不法投棄量は2022年、4万9000トンでした。1995年の44万4000トンと比べ、大きく減っています。
循環型社会を築くため企業・行政ができること
企業は社会を構成する一員ということもあり、循環型社会を構築する役割が求められています。また、廃棄物処理を業務とする行政は、企業や個人が排出するごみの削減を先導することも、役割の一つです。
企業や行政が循環型社会をつくるために取り組んでいることの事例を、紹介します。
企業(事業者)ができること
先ほど、3Rについて触れましたが当然、企業にも取り組みが求められます。三菱ケミカルグループ株式会社はENEOS株式会社と共同で、プラスチックのケミカルリサイクルを行っています。プラスチックを原料レベルの油にし、新たなプラスチックの原料とするものです。
製造業が循環型社会構築に貢献するためには、環境に優しい材料の活用が求められます。もちろん、リサイクルした材料もこれに含まれます。しかし、ユーザーに対しては、以前と同等の製品を提供しなければなりません。
そこで株式会社三井化学分析センターは、リサイクル品の組成や物性などをリサーチする事業を展開。さまざまなメーカーが社会的責任を果たすのに、貢献します。
行政(自治体)ができること
行政の取り組みについて、ごみ排出量、リサイクル率で成果を挙げている、2つの自治体の事例を紹介します。
1つ目の自治体は、2022年の統計でごみ排出量が最も少ない長野県川上村です。1人・1日あたりのごみ排出量は全国平均で880グラムであるのに対し、川上村は283.3グラムと半分以上少ない数字となっています。
川上村でごみを出す際は、指定のごみ袋に出した人の名前を書かなければなりません。書いていないごみは、回収されないのです。
また、生ごみの回収をしていないのも、川上村の特徴。コンポストで堆肥化させるか、ごみとして出す必要があるならば生ごみ処理機で乾燥させなければなりません。水分を含む生ごみは、重量のあるものです。川上村の取り組みは、ごみを軽くし処理しやすくするための工夫となります。
もう1つの自治体は、鹿児島県大崎町。リサイクル率84パーセントを誇る、日本一、リサイクルが盛んな町です。
大崎町がリサイクル率向上に取り組んだきっかけを知るには、1990年にさかのぼらなければなりません。同年、近隣自治体とともに埋立処分場を稼働させたものの、出されるごみの量が想定を超え、残余年数もすぐに逼迫した状態となってしまいました。
新たに焼却炉や埋立処分場をつくるのは、運営費や住民の持つイメージから困難であったため、リサイクルによって既存の埋立処分場の延命を図ることになったのです。
そして大崎町では、住民、企業、行政の3者が協力しながら、リサイクル率の向上を図りました。それぞれの役割は、以下の通りです。
住民…容器の洗浄をし素材ごとの分別を徹底。ごみ袋には自分の名前を記入
企業…企業がごみを回収。また、売却するための再資源化を行う
行政…制度設計や研修会を実施
川上村も大崎町も、人口が10万人に満たない自治体であるため、大きな都市よりは暮らす人々の意識を合わせやすかった側面はあるでしょう。しかし、具体的な取り組みは、他の自治体や住民、企業が学べる点もありそうです。
世界で行われる循環型社会のための取り組み
循環型社会の構築は、世界の人々みなで進められるものです。日本だけでなく、世界でどのような取り組みが行われているか、見てみましょう。
ここでは、「国連環境計画」「バーゼル条約」「欧州グリーンディール」の3つを取り上げます。
1970年代、大気汚染や水質汚濁などといった環境破壊の発生が、世界的に認識されるようになりました。日本においては、1950〜1960年代にかけて四大公害病が発生しているので、同じようなタイミングで世界も同様の問題に気付かされたといえるでしょう。
こうした状況を改善するため、国際的な合意の下、1972年に設立されたのが国連環境計画です。「計画」という名前ですが、環境問題に対して各国が協力しながら改善に取り組む国際組織です。
こうした国連環境計画が1989年に策定し、各国の批准によって1992年に発効したのが、バーゼル条約です。
バーゼル条約ができる前は、欧州諸国からの有害な廃棄物がアフリカで放置され、環境を破壊する事態が起こっていました。つまり、日本で循環型社会形成推進基本法ができる前にあった状況が、グローバルに起こっていたのです。
これを防ぐため、バーゼル条約では有害な廃棄物が国境を超える際のルールや手続きなどが定められています。
最後に取り上げる欧州グリーンディールは、温室効果ガスの排出実質ゼロを目指しつつ、それに関わる産業に投資し、環境保全と雇用や持続可能な経済との両立を目指す欧州連合(EU)の政策です。2019年に策定されました。
循環型社会に関する補助金
循環型社会を構築につながる事業を生み出せれば、企業の社会への貢献、そしてビジネスとしての利益という、2つの成果を得られます。では、そうした取り組みをする企業への支援として、行政からの補助金はないのでしょうか。
探したところ、「循環型社会」が名称に入っている補助金は、愛知県の「2024年度愛知県循環型社会形成推進事業費補助金」のみが見つかりました。リサイクル関連の設備を導入や循環型のビジネスを検討する際に必要となる費用などを補助するものです。
この補助金は、混合廃棄物のリサイクルや工場の設備導入といった22件に拠出されています。
もっとも、「循環型社会」と銘打たなくても、リサイクルやリユース、環境保全と関連した事業への補助金を、政府や自治体が設けるケースがあります。自社のコアコンピタンス(強み)がどのように循環型社会に貢献できるかを考えた上で、コンセプトが近い補助金を探してみてはいかがでしょうか。
循環型社会に関する最新情報を知る方法
ビジネスとして循環型社会を考えるには、どのような課題があるのか、すでに参入している企業はどう取り組んでいるのか、などといった情報の収集も不可欠です。それができる方法は、あるのでしょうか。
2025年5月14日(水)〜16日(金)、インテックス大阪で「リサイクルテック ジャパン」が開催。ここでは、カンファレンスも開かれ、有識者によるリサイクル、循環型社会に関する最新情報が直に聴けるものとなっています。
具体的なカンファレンスの例を、いくつか見てみましょう。
「リサイクルテックジャパン 基調講演①」(RCL-K1)では、環境省 環境再生・資源循環局 総務課 循環型社会推進室長 兼 リサイクル推進室長の近藤亮太氏が登壇。「循環経済の移行に向けた施策の最新の動向について」をテーマに講演する、まさに循環型社会と関連する内容です。
また、「リサイクルテックジャパン 基調講演②」(RCL-K2)では経済産業省 GXグループ 資源循環経済課 国際資源循環管理官の田中将吾氏が登壇し、「成長志向型の資源自律経済の確立に向けた取組について」を講演。「リサイクルテックジャパン カンファレンス③」(RCL-3)では、住友化学株式会社 エッセンシャル&グリーンマテリアルズ研究所 環境負荷低減技術開発グループの森康彦グループマネージャーが、「住友化学における炭素資源循環の取組み」について語ります。
なお、リサイクルテック ジャパンは11月に東京でも開催予定です。
まとめ|着々と進められる循環型社会の構築
この日本における循環型社会の構築では、循環型社会形成推進基本法により方向性が打ち出され、3Rをはじめとした取り組みが行われています。そして、企業には循環型社会を築くためのソリューションを生み出すという大切な役割が存在します。
日本だけでなく、世界の動きも基本的に同じです。循環型社会は地球規模で足並みを揃えなければ実現不可能であるため、ここでも各国政府が議論を交わす国際組織、それらの国で暮らす国民の取り組み、そして企業による今の社会を循環型社会へと前進させる仕組みづくりや製品づくりがあります。
リサイクルテック ジャパンでは、紹介したカンファレンスだけでなく、循環型社会に資する展示が行われます。社会的要請が強い分野ということもあり、技術やサービスの提供ができる企業は、ぜひリサイクルテック ジャパンのへ出展をご検討ください。
【出展社募集中】まずは無料で資料請求ください!
☑ 出展案内パンフレット
☑ 出展費用のお見積
☑ 出展スペース空き状況
☑ 出展決定企業 社名入り