気候変動の対策として進められる「カーボンリサイクル」
つくられる製品と課題

気候変動の大きな要因がカーボン(二酸化炭素、CO2)であると考えられていることは、老若男女、多くの人が知るところでしょう。

この点では、カーボンはあまり存在してほしくないものという印象があります。そこで、カーボンを資源化しようする動きがあります。カーボンを資源化し新たな製品などへ変えていくリサイクルが、「カーボンリサイクル」です。

カーボンリサイクルが実現し普及していけば、CO2排出を抑えられるとともに、さまざまな製品をつくることが可能。環境を守れて、持続可能な社会構築につながるものです。

この記事では、カーボンリサイクルとは、どのような製品がつくれるのかなどを取り上げます。

【展示会情報】

リサイクル テック ジャパン -リサイクルの革新技術・エコシステム構築展-

<東京展>会期:2025年11月12日(水)~14日(金)会場:幕張メッセ      

<大阪展>会期:2026年5月13日(水)~15日(金)会場:インテックス大阪


カーボンリサイクルとは?CO2を再利用しても大丈夫!?

出典:資源エネルギー庁のウェブサイトより引用

カーボンリサイクルとは、気候変動の原因とされる温室効果ガスの一つ、CO2を分離・回収。そして、回収したCO2を製品にするなど、何らかの方法で再利用することです。

しかし、ここで疑問が浮かぶかもしれません。カーボンを再利用して地球環境に悪影響を及ぼさないのか、という疑問です。

カーボンリサイクルを行うことで、環境に害はありません。そればかりか、むしろ大気中のCO2の削減につながります。本来、大気に排出されるはずだったCO2を、製品などに固定化するからです。

上で示した画像は、資源エネルギー庁が制作したカーボンリサイクルの流れを表す図です。

右側を見ると、CO2が製品になり大気に排出されないことがわかるのではないでしょうか。

反対に左側は燃料となり、こちらはCO2が大気に排出されます。しかし、石油など地中に眠っていたCO2を排出するのではなく、もともと大気中に存在したCO2を回収・排出するので、全体としてはカーボンニュートラルが実現していると見なされます。

この取り組みを続けていけば、大気中のCO2削減が期待できます。


カーボンリサイクルのプロセス

ここでは、カーボンリサイクルの詳細を見てみましょう。カーボンリサイクルは、大きく2つの段階に分けられます。この記事では、工場などから排出されるCO2を分離・回収し、カーボンリサイクルを行うプロセスを中心に取り上げます。

なお、工場のような濃度の高いCO2を回収するのではなく、無作為に回収した空気からCO2を分離・貯留するケースもあります。直接空気回収、直接大気回収(DAC)と呼ばれるものです。

CO2の分離・回収

工場などから排出される気体にはCO2の他、酸素(O)や窒素(N)などさまざまな種類の気体分子が存在します。そのため、まずCO2だけを分離する工程が必要です。

CO2の分離で多用されるのが、アミンという化学物質にCO2を吸着させる方法です。CO2を吸着したアミンは、加熱をするとCO2だけを分離できます。これを回収します。

回収したCO2は、液化。その後、再利用のプロセスへ進みます。一方、CO2を分離したアミンは、再び回収の工程に利用可能です。

アミンの他、金属有機構造体やアルカリを使った方法もあります。

回収したCO2の利用|4つの分野別に紹介

このように回収したCO2はどのように利用されるのでしょうか。4つの分野に分けて取り上げます。

化学品など

CO2をアルコールと反応させることで、プラスチックの一種であるポリカーボネートをつくれます。また、ポリカーボネートからつくられるものにウレタンがあります。以上は、CDをはじめとした光ディスクやスーツケース、スポンジなどの材料です。
また、同じくアルコールや水素などを利用して、CO2からオレフィンという物質が生産できます。オレフィンもプラスチックの一種で、ビニール袋などの材料です。
他、ドライアイスはCO2を固体化したものですので、回収したものからつくれます。

燃料

回収したCO2を水素と化学反応させて、燃料をつくることも可能です。前出のオレフィンから燃料をつくる場合もあります。こうした燃料には、近年、注目を集める持続可能な航空燃料(SAF)も含まれます。
なお、水素をつくる際、いまだ主流となっているのがCO2を排出してしまう方法。そのため、再生可能エネルギーを利用しつつ、効率よく水素を生産する技術の開発が進められています。

鉱物

CO2から、鉱物やそれと関連する材料をつくることも可能です。カルシウムやマグネシウムと化学反応させ、コンクリートやセメント、炭酸塩がつくれます。

EORなど貯留

ここまで、回収したCO2からできる製品を取り上げてきました。一方で、回収したCO2をそのまま地中に貯留させるケースもあります。
原油を回収する際、CO2に圧力をかけて油田へ注入すると、回収効率が上がります。原油は「石油」と呼ばれるように、石の中に小さな塊として存在しているため、自然な噴出やポンプによる回収では、どうしても取り出せない油が出てきてしまいます。しかし、CO2を圧入することで、より多くの原油が回収できるのです。
このとき、工場などから回収したCO2を使い、そのまま地中へ貯留する方法があります。以上は、原油増進回収と呼ばれる方法で、英略語でEORとも呼ばれます。また、原油の回収を目的としなくても、CO2を地中深くに貯留させるケースもあります。いずれも、CO2を地中に固定し、大気中に排出しない方法です。


カーボンリサイクル技術ロードマップとは?

カーボンリサイクルは、カーボンニュートラル実現のため求められているのとともに、CO2の資源としての活用も想定した概念です。日本政府も、カーボンリサイクルが広がっていくことを目指しています。

そのために、2019年、「カーボンリサイクル技術ロードマップ」という行程表を策定しました。フェーズ1〜3の3段階に分け、それぞれの時期でカーボンリサイクルの技術に関する具体的な目標が明記されています。

フェーズ1、2、3がいつなのか、何が行われようとしているのか、見ていきましょう。

フェーズ1(現状)

カーボンリサイクル技術ロードマップのフェーズ1は、現状の段階となります。フェーズ2に向けて、カーボンリサイクル技術の研究、開発、実証を行います。

フェーズ2(2030年頃〜)

フェーズ2の具体的な時期は、2030年頃を想定しています。

この時期は、技術面で水素が不要であったり高付加価値であったりするプロダクトを、市場に投入し普及を目指します。具体的には、ポリカーボネートやバイオジェット燃料、コンクリート製品などです。

また、フェーズ3へ向けた汎用品の製造技術に関して、重点的な研究開発を行うことを想定しています。

フェーズ3(2040年以降)

2040年以降を想定するフェース3では、フェーズ2の研究開発で重点が置かれた汎用品の普及が始まることを、もくろみの一つとしています。具体的には、オレフィンやメタンガスなどです。

また、フェーズ2から普及している製品の消費拡大を目指します。


カーボンリサイクルについて他に覚えておきたいキーワード

日本国内でのカーボンリサイクルを知るにあたって、カーボンリサイクル技術ロードマップは押さえておきたいポイントとなります。
それとともに、さらに2つのキーワードを紹介します。こちらも、大切なキーワードです。

カーボンリサイクル3Cイニシアティブ

カーボンリサイクル3Cイニシアティブは、カーボンリサイクル技術ロードマップを基としてイノベーションを加速するための、産学官による取り組みです。3つの取り組みは、すべてCから始まる言葉です。相互交流の促進(Caravan)、実証研究拠点の整備(Center of Research)、国際共同研究の推進(Collaboration)となります。

カーボンリサイクル実証研究拠点

カーボンリサイクル3Cイニシアティブが掲げるイノベーションを起こすため、研究拠点が2022年、開設されました。それが、カーボンリサイクル実証研究拠点です。

拠点は広島県の大崎上島にあり、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)を中心に、企業や大学などが研究を進めます。


カーボンリサイクルに取り組むメリット3つ

ここまでの内容から、カーボンリサイクルがどのようなものであるか、ご理解いただけたのではないでしょうか。あらためて、カーボンリサイクルに取り組み意義、メリットを3つ、取り上げます。

カーボンニュートラルへの寄与、気候変動の抑制

カーボンリサイクルに取り組む理由や意味に該当し、最大の成果ともなり得るのが、カーボンニュートラルへの寄与と、その先にある気候変動の抑制です。
現在、猛暑をはじめとした気候変動が起きている大きな要因は、CO2を中心とした温室効果ガスであると考えられています。そこで、実質的なCO2排出量をゼロとするカーボンニュートラルの実現が求められています。カーボンニュートラル実現の手段の一つとして、カーボンリサイクルが挙げられます。

CO2を資源化し安定供給も可能

気候変動の点においては、好ましい物質とはいえないCO2。しかし、カーボンリサイクルでは、CO2をそのようなネガティブなものとしてだけでなく、「資源」という前向きなとらえ方をしていることが特徴です。

大気中のCO2の割合は0.04パーセントと、決して高いわけではありません。しかし、気象庁 など世界の観測期間は、CO2濃度が年々高まっていることを発表しています。

減らすことが求められているCO2ですので、資源としては安定供給も見込めます。

広い分野で活用できる

カーボンリサイクルから生まれる製品は、先ほど取り上げたように建築・土木資材、日用品、燃料と分野が多岐にわたります。幅広く活用されれば、カーボンニュートラル実現へ向けた大きな力ともなります。


カーボンリサイクルの抱える課題

メリットとは反対に、カーボンリサイクルには乗り越えなければならない課題も存在します。こちらも、3つを取り上げます。

CO2フリー水素が必要

前述したように、カーボンリサイクルで使われる水素は現状、CO2を排出してつくられています。よって、今のままではカーボンリサイクルができても、結果的に別のところでCO2を生み出してしまい、本末転倒の状態となっています。

解決には、生産時にCO2を排出しないCO2フリー水素が必要です。このための研究開発が進められています。

製造プロセスでのCO2削減

水素以外にも、CO2を排出してしまう要素があります。

製品をつくる際は多くの場合、電気などのエネルギーを使います。もちろん、カーボンリサイクル製品も同じです。

そこで、製造プロセスでは再生可能エネルギーの活用が必要となります。とりわけ日本における再生可能エネルギーの活用では、安定供給が難しい点が懸念されています。これを解決する発電方法や、蓄電による安定供給などが必要となりそうです。

コスト面の課題

カーボンリサイクルでつくられた製品は、コスト面で従来品に劣るというデメリットがあります。製品の値段が高くなってしまうことで、消費に結びつかない懸念があるのです。

これを解決するには、ニーズを増やし製造単価を下げる、技術面での低コスト化が求められます。先ほどのカーボンリサイクル技術ロードマップでも、コスト低下がフェーズ2、フェーズ3での目標の一つとなっています。


まとめ カーボンリサイクルで求められる課題解決のための技術

カーボンリサイクルは、気候変動の要因とされるCO2を資源として利用する、カーボンニュートラル実現のための手段です。一方で、課題も存在します。

課題があるということは、そのためのソリューションが求められているということ。自社の技術がカーボンリサイクルに資するとお考えならば、ぜひリサイクルテック ジャパンへの来場や出展をご検討ください。アピールになる他、シナジーを得られる他社も見つかることがあるでしょう。

【展示会情報】

リサイクル テック ジャパン -リサイクルの革新技術・エコシステム構築展-

<東京展>会期:2025年11月12日(水)~14日(金)会場:幕張メッセ      

<大阪展>会期:2026年5月13日(水)~15日(金)会場:インテックス大阪


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