リチウムイオン電池のリサイクルについて
4つの方法と統計・課題
携帯電話・スマートフォンやそれらに電源を供給するモバイルバッテリー、さらに電気自動車(EV)といった製品には、リチウムイオン電池が使われています。繰り返し充放電をしても劣化するスピードが遅く、充電に必要な時間は比較的短く済むため、私たちの日常生活や持続可能な社会構築に不可欠な製品です。
リチウムはレアメタルの一種であり、できる限りリサイクルをしたいところ。それにもかかわらず、リチウムイオン電池のリサイクル率は低い数字にとどまっています。
リチウムイオン電池のリサイクルはどのように行われるのか、そしてどのような課題がありリサイクルが進んでいないのか、見ていきましょう。
リチウムイオン電池とは
優れた充電池として幅広く使われている
リチウムイオン電池という言葉が使われる際、一般的には「リチウムイオン二次電池」を指します。
リチウムイオン二次電池は、正極(+極、カソード)がリチウム化合物でつくられた電池で、充放電が可能です。充放電時は、電池にある電解液の中をリチウムイオンが移動します。充電の際は正極側から負極側へ、放電の際は負極側から正極側への移動となります。
リチウムイオン二次電池がさまざまな場面で使われているのは、小型化が可能、充電にかかる時間が比較的短い(急速充電性)、寿命も長い、というメリットによるものです。
なお、リチウムイオン二次電池があるということは、リチウムイオン一次電池も存在します。リチウムイオン一次電池は、使い切りタイプの電池です。
リチウムイオン電池の廃棄・回収方法と注意点
寿命が長いリチウムイオン電池ですが、時間が経てばあまり充電ができなくなるなど使用に耐えられなくなります。そうなったとき、どう捨てればよいか分からない、という声があります。
実際、X(旧Twitter)で検索してみると「リチウムイオン電池。捨て方がよくわからない」「取り出したリチウムイオン電池、どう処分すればいいやら」といった投稿が見られました。
こうした人々の疑問やリチウムイオン電池を原因とした火災が発生していることを受けて、東京都は「リチウムイオン電池 混ぜて捨てちゃダメ!」プロジェクトを行っています。
このプロジェクトで紹介されている内容を参考に、リチウムイオン電池の廃棄、回収の方法と注意点を見ていきましょう。
小型充電式電池(モバイルバッテリーなど)
スマートフォンに充電するためのモバイルバッテリーなど小型充電式電池は、一般社団法人JBRCの協力店や協力自治体が回収しています。協力店は電気製品販売店などです。
事業者が廃棄する場合は、JBRCに「排出者登録」をした上で、JBRCに回収してもらいます。
JBRCは、小型充電式電池メーカーやその輸入業者、小型充電式電池を使う製品のメーカーによる、リサイクルを行う団体です。
携帯電話・スマートフォン
携帯電話やスマートフォンの本体と電池は、モバイル・リサイクル・ネットワーク(MRN)が回収しています。直接、回収の窓口となるのは、モバイル機器の販売店です。携帯キャリアのブランド名を冠した「◯◯ショップ」で回収してもらえます。
MRNは、一般社団法人電気通信事業者協会の中での、通信事業者による端末をリサイクルするための取り組みです。リチウムイオン電池の他、金や銀などといった希少価値のある素材のリサイクルを行っています。
小型家電
コンパクトカメラやポータブルゲーム機など、リチウムイオン電池を使う小型家電は多々存在します。こうした小型家電の回収は、一般社団法人小型家電リサイクル協会が回収事業の主体となり、市町村、小売店、認定事業者が直接的な回収を行っています。
市町村での回収は、公共施設に設けられたボックスやステーション、イベントで行われるものです。小売店での回収は、店頭や宅配便での受け付けや、製品の配達時の引き取りで回収しています。認定事業者とは、小型家電リサイクル法による政府の認定を受けた事業者のことです。宅配便や回収拠点での回収を行っています。
小型家電リサイクル協会自体も、小型家電リサイクル法による政府の認定を受けた事業者です。認定事業者やリサイクルのための機械メーカーなどが会員となっています。
注意点
回収方法の紹介の最後に、回収時の注意点3つを取り上げます。
JBRCのモバイルバッテリーなどの回収は、会員企業の製品や輸入品でなければ引き取ってもらえません。もし回収してもらえない製品の場合は、自治体や輸入業者に相談しましょう。
小型家電リサイクル協会は、無許可事業者を利用しないよう呼びかけています。
また、回収に出さず、リチウムイオン電池を分解するなどは絶対にしてはいけません。先ほども少し触れたように、リチウムイオン電池を原因とした火災が発生しています。つまり、リチウムイオン電池を分解などしている最中に、発火してしまう可能性があるということです。
リチウムイオン電池のリサイクル方法4つ
続いて、回収した後のリサイクル方法も見てみましょう。リチウムイオン電池のリサイクルで代表的なものには、これから取り上げる4つがあります。
機械式リサイクル
4つのリチウムイオン電池をリサイクルする方法の中でも、最も単純なものとなるのが、機械式リサイクルです。
放電済みの電池を粉砕し、それを金属・非金属などに選別。そこで出た素材をリサイクルする方法です。
単純な方法であるためコストを抑えられますが、純度の高い素材の回収は難しくなります。
ダイレクトリサイクル
ダイレクトリサイクルは、リチウムイオン電池を分解してリサイクルする方法です。機械式リサイクルに近い方法ですが、粉砕せずに分解することで、できるだけ電池の構成物を生かします。
放電済みの電池を分解し、正極材を取り出し。それを修復して再利用します。
ダイレクトリサイクルの多くは研究開発の段階にあり、今のところ事業として実用化した例は少なくなっています。
湿式リサイクル(製錬)
湿式リサイクル・湿式精錬は、溶液を使ってリチウムイオン電池の素材を選別する方法です。
放電済みの電池を粉砕し、それを溶液に浸します。すると、金属成分が抽出されます。さらに、ろ過、精製して再び金属材料として利用する方法です。
純度の高い金属を得られるリサイクル方法であるものの、廃液処理が必要です。
乾式リサイクル(製錬)
乾式リサイクルは、熱を使って金属を抽出するリサイクル方法です。
放電済みのリチウムイオン電池を粉砕した上で、炉で焼きます。すると、金属成分がガス化し、それを凝縮させて、回収、精製し金属をリサイクルする方法です。
短時間で大量の素材を回収できるものの、有害物質を排出してしまうおそれがあります。
リチウムイオン電池のリサイクル率と課題
リチウムイオン電池のリサイクル率は、世界全体で5%程度と非常に低くなっています。量産が始まったのが1990年代と他の電池より歴史が浅く、リサイクルの方法が確立していないなどの理由があります。
リサイクル率を高めていくには、いくつかの課題を解決する必要があり、特に低コストでリサイクルできる方法を確立することが求められそうです。リチウムイオン電池は、発火の可能性があるため、場所の確保やリサイクルにかかる時間でさまざまなコストがかかってしまうためです。
リチウムイオン電池のリサイクルに関するソリューション
課題がありながらも、リチウムイオン電池やその素材をリサイクルする、リサイクルを支える製品などを提供している企業が存在します。リサイクルテックジャパン、高機能素材Week 出展社の中から具体的な製品を見てみましょう。
DOWAエコシステム 株式会社|リチウムイオンバッテリーのリサイクル技術
DOWAグループでは、秋田県と岡山県にリチウムイオンバッテリー(以下、LIB)のリサイクル施設を保有しています。リサイクル施設は大型のLIBを放電及び解体せずにそのまま焼成炉へ投入して熱処理する事が可能で、熱処理前の放電・解体工程における感電・火災のリスクを排除できることを特徴としています。 熱処理は比較的高い温度を採用しており、外装に用いられるアルミは溶融分離され、回収されます。 資源回収工程では、鉄、銅などを分離した後に破砕・選別を行い、鉄・銅・ブラックマス(レアメタル含有)を回収しています。 また、ブラックマスに含まれるレアメタルを濃縮し、製錬工程を挟むことなく、電池材料を製造するダイレクトリサイクルに関する研究を実施しております。その結果、車載用LIBと同等の性能を有するリサイクル電池材料の製造に成功しました。
2025年11月開催 リサイクルテックジャパンに出展します。詳細はこちら
日本マグネティックス 株式会社|磁石の力でリチウムイオン電池を除去する高磁力マグネットプーリー
日本マグネティックス 株式会社は、磁力選別機の専門メーカーとして、長年培った技術と経験をもとにお客様の課題に最適な提案をしています。高磁力マグネットプーリーは、15000ガウスの高磁力にてリチウムイオン電池などの弱磁性体を吸着、選別いたします。
ベルトコンベアのヘッドプーリーをマグネットプーリーに置き換えることで、磁石に吸着されるものとそうでないものを自動的に選別可能としています。
金属異物対策、リサイクル分別装置、環境改善を目的とした大型天井ファンも展示予定です。
2025年11月開催 リサイクルテックジャパンに出展します。詳細はこちら
フジトク 株式会社|LiBブラックパウダー用分析機 Li,Co,Ni.Mn,Alを検出
フジトク 株式会社は、光をファンクションとして、各業界にお役立ちする事業形態であり、自社工場でのガラス研磨加工を初め、金属、樹脂系の素材対応と共に、特徴ある分析機等の販売を行っています。
いままで、湿式のICP計測でしか検出不可能なLiを乾式で、現場レベルで使用可能です。レーザー分析機は軽元素を得意としており、Liは精度よく分析できます。さらにCo,Ni,Mnも同時に検出可能です。今後需要が高まると予測されるLiBリサイクル分野に最適な分析機です。
まとめ|求められるリチウムイオン電池リサイクルの技術革新
機能性に優れたリチウムイオン電池は、業界団体などによる回収が行われ、主に4つの方法でリサイクルが行われています。もっとも、世界的にはリチウムイオン電池のリサイクル率は低い状態にあり、向上のためにはさらなる技術革新が求められます。
リチウムイオン電池やその他のリサイクルに関する技術は、リサイクルテック ジャパンでも間近に見ることができます。ぜひ、お越しください。
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